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2020年

【対談】道内物流大手ロジネットジャパン「ツートップ」に聞く“次の一手”

木村輝美 ロジネットジャパン会長
橋本潤美 ロジネットジャパン社長

 札幌に本社を置き、全国展開をするロジネットジャパンに2020年4月、新社長が誕生した。札幌通運と中央通運の経営統合をまとめあげ、躍進を指揮してきた木村輝美氏は会長に就いた。代表権を有するツートップを直撃した。

木村輝美会長 ©財界さっぽろ

道内と本州の売上比率は3:7に

 札幌証券取引所上場の物流大手・ロジネットジャパン(LNJ)は、2005年10月設立。札幌通運(以下、札通)と東京の中央通運の経営統合が皮切りだ。その後、M&Aも駆使してネットワーク網を全国に拡大。設立15年周年の今年、初めて社長交代がおこなわれた。

 新社長の橋本潤美氏は小樽商科大学卒。47歳。今回、専務から昇格した。

 以下、橋本氏を後継指名した木村輝美会長との“師弟タッグ”へのインタビュー。

   ◇    ◇    

 ――橋本社長にうかがいます。いつ木村会長から指名のお話が。

 橋本 発表の直前です。ただ、役員に就任して以来、木村から「今後、しっかり会社を支える気持ちと覚悟を持って取り組んでください」と折に触れて言われており、そうした覚悟を持ってきました。「もし巡り合わせで社長に就く機会を与えられた時、私に務まるのか」と自問自答をしながら、毎日の仕事に取り組んできました。

 ――家族にはいつ報告を。

 橋本 取締役会で発表になってから家族に報告をしました。話を聞いた主人は、大変驚いていましたが、「頑張りなさい」と励まされました。

 ――40代の女性が上場企業の社長に就くのは国内では珍しいと思います。

 木村 私は札通で人事部長も経験しましたが、当時から性別に関係なく職員を評価してきました。働く上で関係ありませんから。トップについても男女関係なく、考えていました。

 橋本 当社の社員の採用状況を見ても例年、男女が半々。現在、管理部門では役職者の約60%が女性です。

 ――橋本社長は1996年札通入社です。木村会長が覚えている当時の印象は。

 木村 入社して半年ぐらいの頃だと思いますが、新入社員と幹部が懇談をする機会がありました。その時、橋本が「将来『札通には橋本がいる』と思われるように頑張りたい」と決意表明していたことが、強く印象に残っています。

 ――橋本社長は新人時代、どのような部署に。

 橋本 最初はトラック輸送の現場で働きました。

 木村 (札幌市白石区の)流通団地にある支店です。何年いたのかな?

 橋本 4年ほどです。総務部署でしたので、担当セクションの費用コントロール、お取引先ごとの実績をまとめたりしていました。当時は木村がトラック部門の責任者で、積極的に女性の力を現場でも生かす方針でした。私自身、お取引先への提案・企画の立案作業にもたずさわりました。

 ――木村会長は以前から橋本さんを社長候補として考えていたのですか。

 木村 橋本と同じ世代の優秀な人材はたくさんおり、それぞれの分野で大いに力を発揮しています。

 ただ、私はかねて社長の条件として5つ考えていました。1 心身共に健康である 2 時代の変化に対応できる人材である 3 決断力がある 4 社員を大切にする 5 数字に強く長期的視点に立って経営ができる――というものです。

 ――その条件に橋本社長がマッチしていた。

 木村 変化の激しい今の時代、トップはすばやく適切な判断を下さなければなりません。それには現場の実情を知り、なおかつ特定の分野だけではなく総合力がないと。大局的な見地から判断ができなければ、トップは務まらないでしょう。

 ――木村会長にうかがいたい。札通の社長を経てLNJの発足時から15年間、ずっと社長を務めてきました。振り返ってみると……

 木村 まず中央通運との経営統合があり、その後も青山本店の買収などがあり……感覚的には、短かった15年ですね。

 ――なぜ中央通運との経営統合を。

 木村 人口減少で道内経済の縮小が予想され、本州での事業拡大が必須だと感じていました。一方、中央通運も関東で安定経営をしていたものの、さらなる拡大を目指していました。

 両社とも商圏拡大という課題が一致しており、そのためには輸送ネットワーク網の充実、営業力の強化が必要でした。

 札通にとっては本州でのネットワークの充実、中央通運にとっては上場企業としての信頼や営業力の強化などのシナジー効果が期待できました。両社の経営統合でLNJの設立に至りました。

 設立当初、私は道内と本州の売上比率を4:6にする目標を掲げました。2012年に大阪の青山本店の買収をおこない、さらに四国、九州と営業エリアを広げ、現在の売上比率は3:7に近づいています。もちろん、道内の売上高を維持しつつです。 

 橋本 東名阪エリアにはまだまだ事業拡大の余地があり、チャンスをしっかりつかんでいきたい。

©財界さっぽろ

給与水準をアップ、労働時間を短縮

 ――お二人の役割分担は。

 木村 私は中・長期的な戦略と、今後も視野に入れているM&Aを主に担当し、橋本には短期・中期の経営計画の推進を期待しています。とくに企画、総務、人事といった分野に力を注いでほしいと伝えています。

 ――橋本社長に抱負をうかがいます。

 橋本 就任の挨拶では、一人ひとりが今まで以上に力を発揮して責任を持って働く環境を構築すること、客観的な数字・指標で結果を明確にすることなどを話しました。

 まずは来年度が最終年度になる現中期経営計画の目標を達成します。新型コロナの影響で経営環境が大きく変わりましたが、しっかり取り組んでいきたい。

 ――新型コロナの話が出ました。緊急事態宣言中は外出を控える方が多く、ECが伸びたと聞いています。御社はEC大手の仕事も任されています。

 木村 EC事業は引き続き順調です。一方で経済活動の停滞で輸送量が落ちた分野もあり、今期のこれまではトータルで微減といった感じです。 

 物流は、日常生活を維持をするための重要な社会インフラです。私たちは4月上旬、緊急事態宣言が発令した後も生活必需品を滞りなく運び続けることを、グループ内で再確認しました。

 時差出勤や在宅勤務、従業員の検温の徹底などの社内外の感染防止策を徹底し、今後も物流インフラの維持に努めていきます。

 ――20年3月期決算も増収増益で売上高・利益ともに過去最高を達成しました。伸びてきた理由は。

 木村 設立から15年が経ち、LNJの知名度は文字通り全国区になりました。確実に業績を伸ばしており、その実績、仕事ぶりが評価を受け、大口の取引も増えています。

 そのような中で、EC事業やトラックとJR貨物を組み合わせたR&Rなどの分野が伸びてきました。

 私は常にスピード感を意識しており、新たな仕事をする場合でも経営の決断は早い。お取引先のニーズに合わせてスピーディーに輸送体制を構築しています。

 ――現在、トラックは何台ぐらいあるのですか。

 橋本 全体で常に約2000台を確保しています。グループは主力4社(札通、LNJ東日本、LNJ西日本、LNJ九州)も含めて19社で構成しており、この4社以外の各グループ会社が最前線の輸送実務を担っています。

 グループとして北海道から九州まで全国の輸送ネットワーク網を持ち、機動力が高い点もお取引先から選ばれている理由だと思います。既存のお取引先から任される仕事のボリューム、担当エリアが着実に増えています。

 ――ヒト・モノ・カネとよく言われますが、人材確保が各業界で課題になっています。

 木村 当グループは以前から「人」への積極的な投資を経営方針として掲げ、実践しています。とりわけ直近3年間は強化し、例えば平均給与は同業大手を上回る水準になりました。

 同時に労働環境の改善も推進して1年に20分ずつ労働時間を短くし、3年間で1時間の所定内労働時間の短縮を実現しました。

 人材投資、やりがいをもって働ける職場づくりは今後、企業にとってますます重要性を増していくでしょう。

©財界さっぽろ

帯畜大と連携協定、農業に貢献する

 ――労働時間を短縮しつつ、業績を向上させたということは、業務の効率化を進めたわけですね。

 木村 そうです。3年前に事務改善推進部を立ち上げ、業務の省略化、IT化を進めています。

 例えば、ドライバーが集荷、配達する際に端末に入力するデータが、最終的には企業全体の業績にまで反映できるシステム化に取り組んでいるところです。

 橋本 このシステム化を始め、目下、実施している業務改善は来年度以降、生産性向上に大きく寄与すると考えています。

 ――2月にLNJ九州を設立しました。狙いは。

 木村 九州エリアは10トントラックで運ぶいわゆる単車スタイルが多い。それに対し、当グループの強みは、一度に大量輸送ができるトレーラー輸送もやっている点です。

 トレーラーは約20トン積むことができます。東京で荷物を積んでJR貨物や船で運び、九州に到着後、ヘッドをつけて目的地まで運んでもかまいません。そうするとJRや船で運ぶ最中はドライバーが必要なく、合理的でもあります。

 橋本 近年、九州発着の安定的な輸送需要が増加しており、関東―九州間の航路も増強されています。今後、長距離幹線輸送のニーズの拡大が予想されます。

 ――ところで、2月に帯広畜産大学と産学連携協定を締結されたと聞きました。

 橋本 1年目の今年は大学内の圃場(3ヘクタール)を借り、ご指導をいただきながら、ジャガイモの生産をしているところです。

 北海道発祥の企業として本道農業の発展に貢献するため、産学連携に参画しました。大学の研究成果、そして当グループのノウハウなどの経営資源を融合し、6次化に向けたビジネス構築を目指しています。


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