エフエー 天内 和幸 社長

インバウンド需要が回復し、2025年度は訪日客が4000万人を超えるという見方もある。外国人旅行者をターゲットにしたコンドミニアム型ホテル「シトンガーデン」を札幌市内で展開するエフエー(本社・札幌市)の天内和幸社長に、インバウンドビジネスの現状と今後の展望を聞いた。
多人数対応で一般ホテルと差別化。シトンガーデンが快進撃
――外国人観光客が道内に戻ってきていますね。
天内 中国と新千歳空港の国際線復便の影響もあり、中国人の宿泊者が増えてきたようです。また、韓国や台湾からの訪日客もかなり増えています。世界的に旅行需要が高まる一方で、オーバーツーリズムや海外路線開設の不足など課題も多くあります。宿泊税の導入も決定する中、チャンスを逃さないためにも、行政や関係機関の対応に期待したいですね。
――運営するホテルの稼働率も高まっているようですね。
天内 当社が運営するコンドミニアム型ホテル「シトンガーデン」は、札幌市内に5棟あり、今年(2025年1月から6月末)の稼働は平均77~78%ほどです。宿泊単価はハイシーズンで1泊20万円、それ以外の時期で6~7万円で推移しており、昨年より1割ほど上がっている印象です。
――賃貸マンションを併設する珍しいホテルですね。
天内 単身用の賃貸マンションだと4~5戸分の面積にあたる1フロアをまるごとホテルの1室にした新モデルとして、2019年に1棟目が完成しました。広いリビング・ダイニングを確保できる点が特徴で、3~4家族・グループ、10~15人が〝1室〟に泊まることができます。ベッドルームと浴室、トイレなどの水回りはグループ分用意し、ユーザビリティーを大きく向上させています。
――外国人は大人数で一つの客室に泊まりたいのですか。
天内 中国、韓国、台湾などアジア圏の観光客は、家族や親戚などが一同にそろって寝食をともにするという風習や文化があります。一方で一般的なホテルはダブルやツインルームが主流ですから、それぞれ別々になってしまう。この需要に応えられるのが「シトンガーデン」であり、類似物件はほぼありません。世界で利用される民泊ポータルサイト「Airbnb」(エアビー)で埋もれず高い稼働率を維持できています。
――新たな形態のホテルも計画しているようですね。
天内 賃貸マンションを併設せず、一棟すべてをホテルとするモデルを計画しています。既設のシトンガーデン同様、1フロア1室一泊6万円、7割稼働と過程して月に126万円の売り上げを上げられます。これは賃貸マンション1フロアの約3倍にあたります。建築費の高騰で賃貸マンションの利回りが低下する今、新しい不動産投資の選択肢になり得るポテンシャルを感じています。また、マンションを併設しないことで設計の制約が減り、より理想的な設計が可能となるため、これまでにないクオリティーの新たなシトンガーデンを生み出せると期待しています。
――抜群の収益性ですね。
天内 ただ、マンションに比べ事業費は高くなるため、投資規模の面で1棟購入はハードルが高く、購入できる投資家は限られます。そこで分譲マンションのようにホテルを区分販売することを考えました。購入しやすいことはもちろん、最近は民泊運営が可能な分譲マンションの販売が人気ですから、より収益性を高めた当社の販売モデルは、投資家にとって魅力的な投資対象になると考えます。
1フロアなら2億円以内で販売でき、3~4億円が主流となっている新築賃貸マンションの一棟買いよりも投資額は大きく下がります。ホテル運営にかかる諸経費を差し引いても、利回りは7・2~7・5%ほど確保できます。
――投資家のリスクは。
天内 コロナのようなパンデミックをはじめ、社会情勢の変化や災害による外国人観光客の減少といったリスクはあります。金融機関もこうしたリスクを懸念し、資金調達が難しいという側面もありました。しかし、国策としてインバウンド需要を取り込もうとする中で、民泊、ホテルというハコモノビジネスで収益を伸ばす投資家も多々いるわけですから、優良な〝貸し先〟を探している金融機関にとっても宿泊事業が持つポテンシャルは無視できないでしょう。実際、当社のモデルに対して融資を検討したいと金融機関からの打診も受けています。
――今後の展開は。
天内 まずは、札幌市内中心部で現在計画中の全フロアがホテルの新・シトンガーデンに注力します。これまでの実績を評価いただき、新たなシトンガーデンにも多くの投資家から関心をいただいています。今後数年で複数棟供給するとともに、宿泊費の自動値付けなどAIを用いたシステムの構築など、運営体制も充実させていきます。ソフト・ハードともに整備を進め、「シトンガーデン」というブランドを確立させ、集客力のさらなる向上につなげていきます。将来的には富良野や本州でも挑戦したいですね。