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豊富温泉に長期滞在型宿泊施設アズマシーナが完成

3月10日に完成した長期滞在型宿泊施設「アズマシーナ」

4月1日プレオープン!
尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎の湯治場として全国から湯治客が訪れる豊富町に、新たな長期滞在型宿泊施設「アズマシーナ」が完成した。4月にはプレオープンを控えており、地域活性化の起爆剤として注目されている。

新たな宿泊施設で豊富町を盛り上げる

尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎で苦しむ人々に広く知られる豊富温泉。日本で唯一の石油成分が含まれた温泉として知られ、町営の日帰り温泉施設「豊富温泉ふれあいセンター」は道内で唯一、施設利用料と往復交通費が医療費控除の対象となる厚生労働省の「温泉利用型健康増進施設」に認定されている。

コロナ禍以前は年間7万2000人ほどの利用者がおり、そのうち湯治客は2万5000人ほどに上るが、宿泊施設が少なく、滞在先が不足していた。

そこで新たな宿泊施設の開業に向けて動いたのが賃貸管理の札幌オーナーズ(本社・札幌市)。昨年8月に町内の土地を取得し、建築工事をスタート。3月10日には長期滞在型宿泊施設「アズマシーナ」を完成させた。

森賢一社長は「湯治は週単位、月単位という長期戦。食事付きの温泉ホテルでは滞在費が高額になってしまう。そこで当社の賃貸管理のノウハウを生かせるのではと考えました。キッチンやシャワー室をはじめ、エアコン、テレビ、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機などを完備し、各自で自炊もしていただく賃貸アパートに近い感覚の宿泊施設です」と語る。

総工費は1億円以上となった。

「建築費高騰やロシア・ウクライナ問題などの影響で、当初の予算から4000万円以上もオーバーしてしまいましたが、湯治客の経済的負担軽減につながれば」と森社長は前を向く。

建物は木造2階建ての全10戸。高い断熱性能を誇る「付加断熱工法」を採用したほか、窓はトリプルガラスとなっており、年間熱負荷係数は省エネ法の規準値である1.0を大きく下回る0.60を達成した。また、給湯・暖房の熱源には豊富温泉街からわき出す天然ガスを使用。環境配慮型の宿泊施設として、エネルギーの地産地消にも取り組んでいる。

客室はすべてワンルームタイプ。どれも27~28平米ほどの広さを確保し、最大2人まで宿泊できる。リモートワークやワーケーションのニーズにも対応し、無料Wi‐Fiも完備するほか、来客時の〝目隠し〟として、キッチンには開閉式の扉を設けた。

温泉施設の入浴券を贈呈。ソフト面も強化。

宿泊施設という〝ハコ〟の整備とともに、ソフト面の拡充にも力を入れている。チェックイン・アウトはすべてスマートフォン上で完結でき、宿泊客の利便性を向上。客室の清掃は3日に1度行うほか、歯ブラシやボディーソープ、シャンプーなどアメニティーバイキングも充実させる。食器セットや自炊セット(炊飯器・鍋等)、アイロンやオーブントースターなども無料で貸し出すという。

また、同施設から徒歩1~5分圏内の近隣入浴施設「ニュー温泉閣ホテル」と「川島旅館」、「豊富温泉ふれあいセンター」で利用できる入浴券を宿泊者に贈呈する。なお、贈呈する入浴券の枚数は宿泊日数に応じて異なり、例えば15泊なら1部屋につき6枚、30泊なら12枚となる。

プレオープンは4月1日を予定。地元からも大きな期待が寄せられている。

河田誠一豊富町長は「町営の療養施設には数に限りがあり、毎年5~9月の繁忙期には、周辺の温泉ホテルや旅館もほぼ満室となっていたため、森社長の取り組みは町としても大変助かっています」と話す。

一方、豊富町を含む天塩管内は、風力発電設備の建設が進められているエリアだが、工事関係者の宿泊先も不足しているのが現状だ。

森社長は「湯治利用者はもちろんですが、さまざまなニーズに応えていける宿泊施設にブラッシュアップしていきたい。インバウンドもこれから復活するでしょう。湯治者、外国人観光客、ビジネス利用者などターゲットを広げることで交流人口が増える。そうなれば地域に活力が生まれるはずです。当社はまだ新参者ではありますが、近隣の温泉旅館などと協力しながら、豊富温泉を盛り上げていきたいですね」と意気込む。

最大2人まで宿泊可能
森賢一社長と河田誠一豊富町長
キッチンで自炊することで滞在費を節約
シャワー室を完備。トイレと洗面所も集約
森賢一社長