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田中工業

自社工場ではさまざまな銑鉄鋳物を製造する

マンホールを主力に、今年で70年を迎える銑鉄鋳物専業メーカー

日本の下水道用マンホール鋳鉄蓋の歴史は長い。明治初期のものは木製の格子蓋だったと言われており、現在の鋳鉄製は明治17〜18年の神田下水(東京都千代田区)の鋳鉄製格子形が起源とされている。現在の丸形のものは、明治末期から大正にかけてイギリスを参考にして製造されたと言われている。

北海道屈指の技術力を誇る銑鉄鋳物専業メーカーの「田中工業」は、マンホール鋳鉄蓋製造の道内大手。道内の100を越える市町村で採用され、特に光高速通信用の錠付きマンホール蓋では、90%と圧倒的なシェアを誇っている。2017年には、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」にも選定されており、今年12月には創業70年の節目を迎える黒子企業だ。

同社ではこのほか、水道管部品や農機部品、超高層マンションの建築部材なども製造している。同社製の銑鉄鋳物は国内全域で使用され、メーンの顧客には全国大手企業が名を連ねている。こうした同社の最大の特徴は道内随一とも言われる技術力の高さだ。

3つの自社工場には、鋳造設備で国内トップシェアを誇る新東工業製のACE-5枠付造型機など、最新鋭設備を揃えている。これにより製造期間を他社の約半分に短縮したほか、15年には業界に先駆けて、パソコン上で鋳造品の完成形をシミュレーションできるソフトを導入。金属の凝固状態を予測したシミュレーションを繰り返すことで、製品の性能や品質を向上するとともに、従業員のスキルアップにも繋がっている。顧客の依頼に対して迅速に、かつ最適で高品質な製品供給を可能としたことが支持される大きな要因だ。

さらに、品質管理の高さも特筆に値する。自社工場はJIS規格認定の取得はもちろん、日本下水道協会の下水道用資器材製造工場認定を受けている。これは同協会が下水道資器材の品質の確保と効率的な検査を行う認定制度で、認定工場を持つ企業は道内でも3社のみ。製品の信頼性が公的に認められた証左と言える。

「製品の多様化で販売先も拡大していく」と田中惣一郎社長が話すように、18年からはスマートフォンなどの筐体加工にも使用される型切削加工機の部品製造も開始した。「新分野への参入は市場ニーズをくみ取った結果です。今後は、半導体メーカー向けの部品分野への参入を目指していく」と田中社長は先を見据える。

マンホール鋳鉄蓋製造では「ACE-5」を用いて高い道内シェアを獲得
田中惣一郎社長
小樽市にある第三工場の全景