アスリートインタビュー

北海道日本ハムファイターズ

【特集PLAYBACK―2】“同級生”対談 鶴岡慎也×田中賢介

 2020年12月15日に発売した月刊財界さっぽろ2021年新年特大号では、北海道日本ハムファイターズ特集「テレビ・新聞が報じない栗山ファイターズ長期政権の功罪」を掲載、大きな反響を呼んだ。2021年シーズン開幕を記念し、同特集からインタビュー・対談記事をピックアップ掲載する。今回は鶴岡慎也選手と田中賢介氏による同級生対談をお届けする。なお文中の肩書きなどはすべて掲載時のまま。

   ◇    ◇

 立場は変われど2人の仲は健在だ。同級生コンビによるぶっちゃけ対談。コーチ兼任の鶴岡慎也選手、学校法人理事長を務める田中賢介氏は、お互いの目にどう映っているのか。正捕手不在問題、後輩への叱咤激励も飛び出した。

鶴岡慎也選手 ©財界さっぽろ

はけ口として賢介にラインでメッセージ

 ――田中氏への呼び名は変わりました?

 鶴岡 もちろん「理事長」と呼んでいます。

 田中 勘弁してよ。ほかの選手たちも冗談半分で、「理事長」といじってきます。学校関係者にはそう呼ばれているので、慣れてはきましたけど、まだ違和感がありますね。

 ――鶴岡選手が野球とはまったく異なるフィールドで頑張る田中氏にエールを送るなら?

 鶴岡 う~ん、学校の経営者ですからね。子どもに関することはもちろん、職員の生活のことなどもある。そう考えると、個人事業主の僕が軽はずみにエールなんて送れないですよ。

 田中 何?そのお堅いというか、真面目な回答。逆に腹が立つ(笑)

 ――小学校設立に関して、田中氏から鶴岡選手に相談したりは?

 田中 プライベートなことはお互いにいろいろ相談し合うんですけど、学校の話はあまり。興味ないでしょう?

 鶴岡 ぶっちゃけた話、あまりない!

 二人 (笑)

 鶴岡 学校をつくる。理事長になる。立命館と提携。すごいなぁと思います。でも、詳しくはわからないんだもん。

 ――田中氏は鶴岡選手のいまの立ち場をどう見ていますか?

 田中 選手兼任コーチは難しいと思います。鶴が学校経営のことをわからないのと同じで、僕もコーチ兼任はわからない。本人にはいろいろ葛藤もあると思います。鶴のヤキモキさが伝わってきます。

 鶴岡 そのはけ口として、賢介にラインでメッセージを送っています。なかなか周囲に打ち明けられないので。チーム内では、選手としては年上ですけど、コーチでは年下ですから。

 田中 僕らはプロの世界で、自分の成績を残すために、また年下の選手に負けないようにプレーしてきた。でも、それに加えて、コーチとして年下に指導もしなくちゃならない。そんなに簡単なことじゃないよね。

 でも、2つの役割分の“給料”をもらっていると思うので。寝る間を惜しんでどちらも取り組めということなんでしょうね。

 ――鶴岡選手としてはどちらに比重を置いている?

 鶴岡 よく聞かれるんですけど、どっちもです。両方おろそかにはできない。選手として、自分のことは自分に降りかかってくる。僕にも家族がいますから、その生活も守らないといけない。

 一方で、コーチとしては若いキャッチャーを育てないといけない。実際、成長できるかは彼ら次第ですけど、僕の役割は、その過程で何らかの力添えをすること。こっちもとても大切な仕事です。

 ――現役はいつまで続けたい?

 鶴岡 僕のポリシーとしては、自ら引退を表明するのではなく、球団から「クビ」を言い渡されるまで選手としてプレーしたい。

 僕はドラフト8位のテスト入団でプロになった。しがみつきながら入った世界なので、自分から手放すことはしたくない。来年には考えが変わっているかもしれませんが、いまはそう思っています。

 田中 友だちとしてはとことん選手を続けてほしいと思っています。どんなことがあっても、2023年の新球場開業までは現役でいてもらいたい。

 鶴岡 僕も新球場のグラウンドでプレーしたいという夢が漠然とあります。

 ――20年は正捕手を固定できませんでした。

 鶴岡 自分の中でも、そこに最も時間を割いたシーズンでした。やっぱりキャッチャーがしっかりしていないチームは勝てない。

 20年の日本シリーズではホークスの甲斐拓也選手の活躍が目立ちました。ファイターズの若手キャッチャー陣も、日本シリーズを見ていたと思うので、何かを感じたはずです。

田中賢介氏 ©財界さっぽろ

勝利に導くキャッチャーなら誰でも

 ――期待する若手は?

 鶴岡 個人名は伏せますけど、今季、一番経験させてもらったといえる選手です。もちろん、24、25歳の選手に高いレベルを求めるのは酷だということはわかっています。

 僕も初めて一軍に昇格したのが25歳のときでした。僕は当時、「いい経験をした。将来につなげていきたい」と感じましたけど、いまの若手はそれだけでは済まなくなっている。いまの選手たちは大変だと思います。

 でも、20年シーズンはみんなある程度、経験を積めたはずです。試合中、一瞬でも隙をみせたら、どういう状況になって、自分の立ち場は悪くなり、もちろんチームは負ける。

 試合に出られなくなる怖さも感じたと思う。それをどうやって、今後につなげていくか。そうしたら、おのずと自分のやるべきことは見えてくるはずです。

 誰が、とは言いません。でも、正直に言うと、若手全員に期待しています。チームを勝利に導けるのであれば、誰が試合に出てもいいんですから。

 ――チーム全体の“緩み”を指摘する声があります。

 鶴岡 そこは、SAを務めるフロントの方が。

 田中 肩書きはありますけど、チーム編成にはかかわっていませんけど……でも、そういう厳しい意見があるのは確かだと思います。

 時代とともに、変わっていくことはいいと思いますが、変えてはいけないものもあります。ファイターズ野球の「全力疾走」を1つとっても、いまはなくなりつつあるように感じています。

 一度失ったものをもう一度取り戻すにはかなりの時間がかかります。でも、みんな、その問題に気づいたと思います。そこはこれからの取り組み次第ではないでしょうか。

 鶴岡 確かに、ファイターズ野球の伝統が崩れてしまっていたのかもしれない。その結果がいまの順位なのかもしれません。

 ベテランの僕らにも反省すべきところがある。先輩たちから受け継いだものを後輩たちに引き継げなかった。でも、賢介が言うように、再度、取り組むべき課題かなと感じています。

 ――21年への抱負を。

 鶴岡 2年連続5位という結果に終わり、誰一人、幸せな気持ちになっていない。コーチとしても責任を感じていますし、21年は優勝争いに食い込みたい。

 ホークスの強さは日本シリーズの戦いを見て、国民全員がわかったと思います。そのホークスに立ち向かっていかないと優勝はできません。真っ向から戦えるチームになっていきたいと思います。

 ――鶴岡選手にエールを。

 田中 まず鶴には選手として100試合くらいは出場してほしい。栗山(英樹)監督は「来年は成績を考慮してオーダーを組む」と公言していますから、鶴が成績を残せば起用されるということです。

 今年は打撃面を含めて、試合に出れば、ある程度の結果を残していました。だからこそ、もう一度レギュラーを奪ってもらいたい。

 鶴岡 賢介、そしてファンのみなさんの期待に応えられるように、打者としては開幕からの10打席は命がけでバッターボックスに立ちます。

 田中 そうなんです。ベテランは最初の10打席くらいがとくに大事!


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