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Interview

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道経連会長・近藤龍夫が語った「憂国・憂郷」論掲載号:2013年1月

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近藤龍夫 道経連会長

「このまま手をこまねいていたら、日本も北海道も瓦解する」――道経連会長の近藤龍夫氏は、いまそんな危機感を募らせている。北海道の生き残りを賭けた「北海道フード特区」事業の推進に情熱を傾ける近藤氏に聞いた。

〝域際収支〟は毎年3兆円超の赤字

――日本経済は〝失われた20年〟で、混迷を続け、出口が見えない。とりわけ北海道は厳しい状況が続いています。
近藤 日本はいま、解決していかなければならない多くの具体的な課題があるのに、何も決まらない。本当に恐ろしいことです。
こんなことだと私はあと5年がヤマだと思いますね。このまま手をこまねいていたら、2020年頃には日本は瓦解するという危機感があります。
――その背景を。
近藤 まず財政状況がひどい。産業が疲弊しきって下向きになっているから税収はどんどん減っている。一方で社会保障費はどんどん増えている。
エネルギー資源のみならず資源の獲得、調達が非常に難しくなってきている。円高の問題もある。
それから食料問題もこれからどんどん顕在化してくる。世界的に食料が不足する中、ほかの国はあれこれ手を打っています。
――例えば。
近藤 韓国だって中国だってすごいですよ。海外に畑をどんどん求めている。韓国はアフリカのマダガスカル島の農地の半分以上を借りているんです。
韓国では「フードポリス計画」というものを打ち出して、東アジア市場における食品ハブとなることを目指しています。

このまま手をこまねいていると、港湾の釜山、空港の仁川に続き、日本の成長の芽がまた韓国に取られてしまいかねない。   食料問題は本当に深刻な問題になってきます。
そんな状況の中で、政治が機能していない。具体的な策が打ち出せていない。
私は、働く人が安心できる社会にしなければだめだと思います。それなのに働く人の不安がどんどん増大している。
――中でも北海道は深刻ですね。
近藤 皆さん意外と気にされていないけれど、北海道の財政状況は47都道府県の中で、もっとも厳しいレベルにあります。
実質公債費比率はいま24%ぐらいですが、これが25%になったら財政健全化団体になって、国のコントロール下におかれる。
よく北海道独立論というのがあります。その意気込みはいいけれど、とんでもない話なんですね。
産業も弱い。北海道の域際収支をみると、移入が約11兆円、移出が約8兆円で、3兆円から3・5兆円の入超となっている。毎年3兆円ぐらいの赤字ということです。当然、累積赤字がどんどん増えていく。
国のGDP(国内総生産)にあたる道のGRPは、10年ぐらい前は名目で21兆円あった。それがいまは18兆円です。下がる一方です。
05年に563万人あった北海道の人口が2040年、には414万人と約150万人減少する見通しです。
こうした急激な人口減少・少子高齢化とともに人口の希薄化が一段と進行し、産業や社会の維持すら困難となる地域が出てくることとなる。大げさに言うと地域社会の崩壊、ひいては北海道の存在すら危うくなることが懸念されます。

どうやって明日の糧を得ていくのか

――そういうことをふまえて道経連では、かねて食クラスター活動を提案されており、その流れで北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区を申請し、11年末に総理大臣により特区指定を受けました。
近藤 そうです。いま道州制だとか地方分権と言われていますが、それは反面では、もう国が地方の面倒を見切れないから、地方は地方でやってくれ、ということでもあるんですね。
道経連では、この先北海道は「どうやって明日の糧を得ていけばいいのか」ということについて、実際に現場を訪問するなど調査、検討を重ねました。
得られた結論は、他地域に比べて優位性があり、将来の発展性が見込まれ、かつわが国の食料自給率向上に貢献できる農業・水産業をベースとした「食の分野」に、少し大げさに言えば、北海道の生き残りを賭けて挑戦すべきというものなんです。 そこで「食クラスター活動の強化」を提唱してきました。
北海道の豊富な食資源を活用した食クラスター活動を盛んにすることにより、広い北海道の各地域の持つ強みを生かす基幹産業である農水産業、食品加工業等の食関連産業について、その高付加価値化を図っていく。
そして道外・海外への販路拡大や、同じく北海道に優位性のある観光産業などと融合を図りながら、北海道ならではの「食の総合産業」の確立を目指すものです。
そういう活動をしている中で、国の特区制度ができたので、これをうまく活用しようということで申請し、指定を受けました。
広い北海道においては、各地域に今はまだ小さくても農水産業や観光産業の発展の素は、本州よりたくさん残されているのですから、これを生かして各地域で官民あげて自立的な産業を作り上げていくべきです。
そして、これを問題意識というよりはむしろ、危機意識として道民全員が認識し、自ら生きる道を各々が切り開いていく必要があります。

雇用を生み税収を増やさなければ…

――フード特区に対する冷めた見方もあるが。
近藤 私も耳にしているが、それならどうしたらいいのか、具体的な代案を出してモノを言ってほしい。
私は、いかにして北海道民の雇用を生んで、税収を増やすかしか頭にない。それが原点で、そのために食クラスター活動がスタートしたんです。
これはもう地道な活動で、急に何か飛躍的な成果が出るというものではない。時間がかかる。それを常に前進を確認しながらやっていこうということです。
さきほども言いましたが、北海道はいま危機的な状況にある。いまでも失業率は国内平均より高いが、このままいくと雇用がどんどんなくなっていく。
フード特区機構もスタートしたが、機構だけでは何もできない。われわれは主役ではなくわき役です。
北海道のおかれた危機的な状況に目覚めて、道民のみなさん、自治体や産地、それぞれの企業さんが、本気になってフード特区機構を上手に利用してほしいと思います。
北海道の農業は、生産高が全国トップで、また本州のような兼業農家主体の農業ではなく、専業農家が主体の大規模な農業経営を展開しており、すでにわが国の食料基地として機能していることは全国的に知られるところです。
したがって現在、国が求めている食料自給率向上など食料安全保障を磐石なものとするためには、北海道の農業を活用することこそ有効ですから、強い農業づくりの政策・制度の制定に当たり、北海道の農業特性を今まで以上に考慮するよう願っています。
また、北海道農業が、今後も日本の食の大きな力になること、および本州農業と多様性、生産性、営農スタイル等いろいろな面で異なるわりに、国における農業政策・制度の議論の場に、北海道の先生方は見当たりません。
中央に向かって北海道農業の実態をPRし、政策・制度の検討の場に参加を求められるよう、さらに努めるべきだと思います。

原発なしにエネルギー確保はできない

――今度の選挙で原発問題が大きな争点となっていますが。
近藤 原子力ゼロを目指すといいますが、日本の今後のエネルギー確保という点では、原子力なしではどう逆立ちしてもやっていけないと私は思っています。
日本はエネルギー資源に乏しい国で、ほとんどが海外からの輸入に頼っている。
原子力を除くと日本のエネルギー自給率はわずか4%しかない。原子力を入れても18%です。
ちなみに主要国の08年のエネルギー自給率をみると、日本が4%で、フランス8%、イタリア15%、ドイツ28%、アメリカ65%、イギリス73%、カナダ144%となっている。
フランスは原子力を入れると51%です。
今後、原子力に関しては、中国、韓国はじめ東南アジアでは原発が林立するとみられています。
このまま日本が原発なしでいったら、他の国に比べてエネルギーコストが高くなって、国際競争力ががた落ちする。産業が成り立たなくなって空洞化する。
企業が成り立たなくなって雇用を失い、失業者だらけになってしまう。
――しかし福島の事故はあまりにも深刻です。
近藤 私も原発の当事者として、福島の事故ではあきらかに反省すべきことはあります。
しかし、日本は科学技術という文明の力を上手に使いながら、科学立国として成り立ってきた。
他の国が日本の3・11を反面教師にしながら原子力を積極的に進めていく中で、日本だけが文明に対する敗北者になっていいのかという思いがあります。  国際競争力を失って失業者だらけになって、国民が気づいたときはもう遅かった、というのではまずいんじゃないかと。
――とはいえ原発の安全性に対する不安感は容易には消えそうもない。泊原発も再稼働の見通しがたっていませんが。
近藤 国内54基の原子力発電所が全て福島第一原子力発電所と同じくらい危険と思われるのは悔しいことです。
泊発電所においては、国の指導のもと、緊急対策、恒久対策を講じつつありますが、規制当局においては、安全性確認を早急に進めていただき、一日も早く再稼動が実現し、道民の生活、産業の維持発展のため、電力安定供給が取り戻されることを期待しています。
――再生可能エネルギーは。
近藤 再生可能エネルギー、自然エネルギーをいままで以上に高めていくことは当然ですが、原子力の意義も認めて、そういうものを取りこんだ形でのベストミックスを考えていくべきだと思います。
――ありがとうございました。

=ききて/干場一之=