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Interview

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自由・公正・連帯の社会へ
粘り強く、したたかに
掲載号:2016年12月

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川本淳 自治労中央執行委員長

都道府県や市町村などの地方自治体職員が結集する自治労(全日本自治団体労働組合)。全国2741単組、約81万人の組合員数を率いる川本淳氏は上川管内中川町役場出身だ。中央執行委員長就任から1年。公共サービスをめぐる現実を聞いた。

北海道から5人目の中央執行委員長

川本淳氏は1981年4月北海道中川町役場入職し2005年9月同役場退職。07年10月自治労北海道本部財政局長、09年10月同書記長、11年9月自治労書記次長、13年9月同書記長を経て15年9月に同中央執行委員長へ就任。54歳。

◇    ◇

――昨年の9月に委員長に就任して1年たちました。

川本 早かったですね。今年は熊本地震で被災した自治体にもよく行きました。最初に行ったのは発生から1カ月後くらいの時。自治体職員もその1カ月は、ほぼ寝ずに仕事をしている状態でした。各首長からも、職員には大変お世話になっている、そろそろ職員を休ませたいとおっしゃるんですが、その首長の目が一番赤かったりする。

行政改革という名目のもと自治体職員は減らされ続けてきました。そうしたツケがこういう非常時にこそ現れます。

――一番必要な時に行政サービスが行き届かない。

川本 そうです。各首長からはこんなことも言われました。熊本地震は激甚災害の指定はされたけれど、東日本大震災のような特別措置法の指定はない。復旧のための事業費は国が9割負担してくれるものの、地元も1割負担しなければなりません。3000人とか4000人の自治体だと1割といえども負担は大きい。被災地には代わる代わる大臣や副大臣、政務官らが来るので、そのたびに国として東日本大震災の時のような対応をしてほしいと要請するが、なしのつぶてだと。自治労からも国に要請してほしいと、各首長から異口同音に言われました。

――地方の声が国に反映されない。

川本 自治労としても要請しています。国も同じ扱いにしたいという感覚はあるように思うんですが、なかなかそうはなっていきません。私たちは全国市長会や全国町村会とも意見交換します。ただ全国知事会だけは政治色が強いので、あまり接点はありません。

――地方にはよく行かれるんですか。

川本 地方本部の大会や全国的な集会などには出ます。もちろん1人では回りきれないので、副委員長3人と書記長、書記次長の計6人で手分けして、極力出席するようにしています。

――北海道には。

川本 自宅は札幌にあるので月に1回程度は帰っています。出身の中川町にはなかなか帰れなかったんですが、今年4月、地元の仲間たちが委員長就任を祝う会みたいなものをやってくれて、久々に故郷の空気を吸ってきました。

――東京暮らしは。

川本 もう5年です。

――自治労の中央執行委員長は北海道から結構な数が出ていますね。

川本 丸山康雄、山田武光、後藤森重、大原義行、そして私。5人になります。

――自治労の設立は1954年(昭和29年)で62年の歴史があるわけですが、川本さんは何代目の委員長になるんですか。

川本 16代目です。

――歴代委員長16人のうち5人が北海道出身。単純計算すれば3分の1は北海道から委員長を輩出している。これはすごい。

川本 そもそも組合員の数が多いというのもありますが、単にそれだけではないと思います。やはり優秀な人材が豊富です。私はさておき(笑)、歴代の北海道出身委員長は、なるべき人がなったと思います。

――いま中央本部には北海道出身の役員は何人いるんですか。

川本 私を入れて5人。組織対策局長、総合政治政策局長、社会保障局長、青年部長が道本部出身です。

――これも多いのでは。

川本 若干多いかなという程度で、地域的にはバランスのとれている執行体制だと思っています。

臨時非常勤職員の組織化が急務

――いま組合員数は。

川本 最新の調査では約81万人。1980年代後半には128万人いたことを考えると激減です。やはり行革による人員削減が大きく影響しています。

――それでも80万人を超える巨大組織です。

川本 官公労の中では日本最大ですが、UAゼンセンは153万人います。単位産業別組合としてはUAゼンセンに次ぐ第2位ということになります。

――自治労の組織率は。

川本 7割前後です。連合を結成した時、全労連(全国労働組合連合会)と分裂したことが大きい。やはり職場に2つの組合があれば「どちらも選べない」という理由で入らない職員も出てきますから。

――そもそも職員自体の数が減っていますしね。

川本 行革で正職員の定数が減り、臨時非常勤や民間委託が増えています。1990年代からわれわれは、民間委託であろうとも同じ公共サービスを担っているところは組織化しようと取り組んできました。しかし、全体的な組織化にまでは至っていません。

もう1つの課題は臨時非常勤職員の組織化です。自治体などで働く臨時非常勤の数は、総務省の最新調査で65万人、自治労の調査で70万人。いずれにせよ65~70万人の臨時非常勤職員がいるということです。そのうち3万5000人しか組織化できていません。

――まだまだ微々たるものですね。

川本 昨年の大会では、第1段階として臨時非常勤職員10万人の組織化を目指すという方針が確認されています。

――臨時非常勤職員の正規化は。

川本 もちろん求めています。東日本大震災で、役所は、役場は何をしてくれるのかという被災者からの声は圧倒的に多かった。非常時に頼るところは、やはり行政になります。自治労としては必要な人数をずっと要求してきた。一時期、そうした要求はかなり厳しいものがありましたが、東日本大震災以降、正規化する動きも増えています。

共生と連帯に基づく持続可能な社会

――現状、各自治体の課題といえば、やはり人口減少でしょうか。

川本 私が委員長就任時に掲げたのは「どこに住んでも公平な住民サービスを受けられる」という地方自治の確立です。故郷・中川町は、ピーク時7000人を超えていた人口も、いまでは1700人程度にまで減りました。でも、いくら人口が減ったといっても、そこに人は暮らしています。水道や電気やガスなど、生活のための最低限の設備が必要なのと同様に、行政の人間も不可欠です。

――政府は地方創生を声高に訴えています。自治労としては、その実態をどのようにとらえていますか。

川本 “バラマキと不毛な競争”でしょうか。本当の意味で地方のためになっていると思えません。とにかく国は各自治体で“創生計画”をつくって出せと。それを受け各自治体は昨年、今年と、地元住民の求めているニーズを十分に把握できていない中、練られた戦略もないまま駆け込みで計画を提出しているような状況だと認識しています。そして、その計画を国が管理する。当然、お金の出し方も一括交付金のようなものではありません。自治体としてみれば、本当に使いたいこととは少しずつ違うといった感じだと思います。

さらには、国は地方交付税の算定に「トップランナー方式」なるものを導入して、一生懸命に行革をした自治体には多く交付税を出すといった方式を昨年からやってきています。しかし、こうしたやり方が、この少子高齢社会の中で本当に有効なのか。われわれからすると、はなはだ疑問です。自分のまちだけが突き抜けるのではなく、周辺自治体も合わせて課題を解決していこうというのが基本だと思います。

――自民党の“1強体制”が続いています。

川本 今夏の参議院選挙では野党共闘が一定の成果をあげましたが、与党は過半数を維持しました。一方で6月におこなわれた沖縄県議選、参院選と同日の投票だった鹿児島県知事選、さらに10月の新潟県知事選では野党が勝利しています。これは国民が必ずしも現政権の政策を信任しているわけではないことを示していると思います。

われわれは協力国会議員との連携のもと「共生と連帯に基づく持続可能な社会」の実現と、地域公共サービスの発展・強化、分権・自治の推進などの政策実現に、あらためて邁進していきたいと思います。

自治労運動の目的は、もちろん組合員の生活水準を向上させ、労働者の権利を守ることです。しかし、豊かで平和な暮らしは、職場での活動だけでは実現できません。地球規模での環境破壊や経済格差、戦争など現代社会は多くの問題を抱えています。自由・公正・連帯の社会は一朝一夕には実現しません。粘り強く、そして、したたかに、これからも運動を展開していきます。

=ききて/鈴木正紀=