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Interview

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金融界に“産業革命”が起きている掲載号:2017年8月

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窪田泰彦 ほけんの窓口グループ会長兼社長

ほけんの窓口グループは、各社の生命保険・損害保険を扱う乗り合い代理店の最大手だ。しかし、目指すのは最大でも最強でもない。お客さまにとって「最優の会社」を経営理念に掲げ、業界の“常識”を覆す。

北洋銀行とのアライアンス店を開設

7月3日朝8時30分、ほけんの窓口グループの窪田泰彦会長兼社長は北洋銀行本店の2階にいた。この日、両社が手を組んだ「ほけんの窓口@北洋銀行」1号店がオープン。その式典に出席するためだった。
 ほけんの窓口は、全国に669店を展開する乗り合い代理店の最大手。業界内では「一人勝ち」をしていると言われる成長企業である。来札した窪田氏に話を聞いた。

――昨年12月、北洋銀行と業務提携を結び、今回、北洋本店2階に新たな拠点を開設しました。

窪田 保険はどなたも必要とされる商品、まさに「目に見えない社会インフラ」です。北洋銀行と提携させていただき、道民のみなさまのお役に立てることを光栄に思うと同時に、その何十倍もの責任を感じています。北洋銀行と一緒に新しいお客さまづくり、店づくりに取り組んでいきたい。

今回のアライアンス店と直営店を合わせ、現在、道内には18店あります。直営の新規出店もいくつか検討していますが、道内では北洋銀行の店舗を中心に展開していくつもりです。

――御社は来店型保険ショップの最大手です。これまでの利用者数は。

窪田 ご来店をいただいたお客さまはこの3年間だけで延べ150万人を超えています。6月末時点の契約者数は80万人、契約件数は170万件で毎年10%前後、増加しています。

今後も店舗に親しみを持っていただき、「相談の品質」を磨き上げる努力を積み重ねることで、お客さまは着実に増えていくと確信をしております。

――保険代理店にはいろいろな業態がありますが、御社は生・損保各社の商品を扱う乗り合いタイプです。特徴を教えてください。

窪田 お客さまにとって「最優の会社」を経営理念として掲げており、全員が「100%お客さまを主役・主人公」として「お客さまの話を聴く」「お客さまのご意向を承る」ことから、仕事を進めています。

当社の特徴を示す代表的な指標を2つ紹介しましょう。35社の保険会社から委託されている商品が208あり、その内96%の商品で販売実績があります。このデータは、お客さまのニーズがいかに多岐にわたっているかの証左でもあります。

もう1点は契約後3年たった継続率が92%を超えていること。業界平均は70%台と言われており、20%も上回っています。契約時、お客さまの負担能力の範囲内で適正に、ご意向に沿った契約が結ばれている結果です。

――なぜ、高い継続率が実現できているのですか。

窪田 保険の売り手側の中には、自分たちの手数料収入が高い商品を恣意的に勧めるところがあります。われわれは、そうした手法を否定しています。徹頭徹尾、お客さま本位。ご相談を受けた時、恣意的な要素は一切、入れません。

――保険会社主導のキャンペーンはしないとか。

窪田 社員を競わせるような社内のキャンペーンも、おこなっていません。3000人を超す社員は全員が正社員で、給料は基本的に固定給です。また、保険会社育ちの経験者は原則的に採用をしないのが、私の方針です。高い販売手数料を目当てにするような、変なクセのついた人は当社には要りません。実際、リーダー層には、元トラックの運転手、元教師など異業種出身の人が少なくない。

――徹底していますね。

窪田 キャンペーンはなし。給料は基本的に固定給。「そんな保険代理店があるのか」と驚かれます。

3つの本質的な変化が起きている

――しかも、業績を伸ばし、業界では「一人勝ち」と言われている。

窪田 具体的な数字はまだ公表できませんが、2017年6月期決算も年初の目標をすべて達成すると思います。

実は1カ月ほど前、世界最大の保険グループのトップがみえられて「ミスター窪田、なぜ『ほけんの窓口』だけが成長を続けているのか」と問われ、私は「事実誤認をしていませんか」と申し上げました。

――事実誤認とは。

窪田 単に、多数の保険商品をそろえたショップを開けば、お客さまが来るわけではありません。現場で、お客さま本位のコンサルティングがしっかりおこなわれているかどうか、です。

当社は医療保険だけでも100ぐらいの商品を扱っていますが、お客さまによって、家族構成もニーズも違います。入院・通院に重きを置いた内容がいいのか、それとも手術に対する万全な金銭的な手当てを求めるのか。あるいは積み立て方式がいいのか、など切り口はいろいろあります。

お客さまのご意向を、多くのラインアップの中から、どう具体的に落とし込んでいくのか。そこで「ライフ・デザイン・システム」(LDS)という比較推奨できるコンサルティングツールを構築しました。業界で当社だけのシステムと自負しております。

――LDSとは。

窪田 お客さまのご意向やライフプランからシミュレーションを提示し、多数の保険の中から複数の候補を表示します。その中からご関心のある商品を選んでいただくと、さらに詳しい内容をわかりやすく、エビデンスを伴った説明をおこなう。このシステマティックなLDSは、人材教育と共に当社の要です。

――以前から「保険業界に大きな3つの変化が起きている」とおっしゃっていいます。

窪田 まず商品革命に伴う流通革命です。ニーズの多様化を受けてさまざまな商品が発売され、乗り合い型代理店が成長する素地にもなりました。

それから消費者の意識・行動の変化がマーケットを、買い手市場に変えました。インターネットの普及もあって、消費者の金融リテラシーは高くなっています。また、個人情報保護法の施行やプライバシー意識の高まりもあり、昔のようにセールスレディーは職場に入れません。防犯上の仕組み・構造から、家にもなかなか入れなくなりました。

3つ目は、超高齢化などの社会の変化により、保険が売る商品から、個々の消費者が自分の事情に合わせて買い求める商品になってきたこと。結婚しない独身が増えていることが社会現象になっていますが、当社でも、とりわけ3・11以降、独身者の来店者、契約者が増えています。

この3つの変化はより加速しており、金融界で“産業革命”が起きている、というぐらいの問題意識を持つべきです。決して後戻りしない、構造的かつ本質的な変化なのです。

その結果、「顧客密着」といったキーワードの概念や有り様を戦略的に変えていかなければならないのではないか、と思っています。

リテール分野の新たなモデルを構築

――戦略的に変えていくとは。

窪田 例えば、住宅でも家電製品でも、ほとんどの商売でアフターフォロー、アフターケアに力を入れ、競っています。ところが、金融商品だけは極端に言えば、売りっぱなしの傾向があります。私は以前から、こうしたやり方はもう通用しないと思っていました。

当社では「3+1」運動を展開しています。目安として3回の保険相談を重ねた上でお客さまになっていただき、さらに保険証券が届いたタイミングで証券を持参してもらいます。そこでもう1度、ご意向と契約内容が合致しているかを再確認していただく。この運動の実施率は65%になりました。さらに徹底をしていきます。

契約者に年1回、誕生月の2カ月前、契約内容を送付し、チェックをしてもらう「安心の輪 定期便」サポートも実施しており、わからない部分があればもちろん、説明をします。お客さまのライフステージは変化していきますが、生涯にわたってパートナーとして、サポートを続けていきます。

――ところで近年、積極的に地方銀行と提携しています。その背景は。

窪田 北洋銀行との提携で21行目になりました。銀行とのアライアンス店はおそらくあと1年で、90近くまで増えると見ています。

私は銀行の首脳陣にこう提案しています。「リテール金融の新しいビジネスモデルを共同で構築しましょう」と。ポイントは3つあります。1つ目は、一人ひとりのお客さまと長期にわたり、友好的な関係を構築すること。2つ目は、お客さまの人生のプラットホームを共有し、お互いのビジネスチャンスを拡大すること。3つ目は、お客さまと長くお付き合いをすることで、お互いに収益の最大化を図ること。

当社のお客さまの80%が20~40代です。これから末永くお付き合いをする層のボリュームがぶ厚いことは、マーケティング的に非常に重要ですし、魅力的です。

加えて、銀行営業の出発点そのものを転換するお手伝いもできる、と考えています。当社の研修に参加した銀行員はみなさん、驚かれます。「商品知識、売るためのテクニックの類いの内容はまったくない。こんな研修は初めて」と。研修で鍛えるのは当社のビジネスモデルの中核、お客さまの意向を「聴く力」です。「目から鱗が落ちた」と感動された銀行員もいました。

――保険の販売チャンネルはいろいろあります。御社のような乗り合い型代理店は今後、どのぐらい伸びていくでしょうか。

窪田 乗り合い型代理店の現状のシェアはまだ、せいぜい7%前後でしょう。ただ、将来的には、ふた桁近いシェアまで伸びていく、と考えています。

=ききて/野口晋一=