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Interview

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北海道のインフラ効果を最大化する掲載号:2017年4月

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太田昭宏 前国土交通大臣・衆議院議員

北海道を100回近く訪れている太田昭宏前国土交通大臣・公明党全国議員団会議議長は、今後も継続して道内のインフラ整備に力を入れていく。道路や鉄路、空路、海路などに対する思いを聞いた。

台風で北海道の歴史が流された

――北海道との縁はかなり深いそうですね。

太田 これまでに北海道は100回近く訪れています。友人が多く、私が27年前に落選したときも、仲間が北海道に呼んでくれました。とにかくいろんな思い出があります。

京都大学相撲部の同級生も十勝地域で牧場を営んでいます。われわれにとって北海道というのは、夢あふれる大地です。

――昨年は台風に襲われた十勝、オホーツクを視察されました。

太田 台風が来る前の初夏にも帯広などに行っていたんです。そこでは日本の食糧基地である北海道の農業がいかにしっかりおこなわれているかということを感じました。

しかし、その十勝やオホーツクなどが連続発生した台風の被災地になり、道路や鉄道が寸断されました。特に私が心を痛めたのは、開拓の歴史の中で改良されてきた表土が流されたことです。

ある意味では、北海道の人たちの血と涙と汗、歴史が流されてしまった。もうこれで農業から離れざるを得ないのかというような脱力感、絶望感が広がっているということを聞き、これではいけないと思いました。

私は昨年10月、11月と東京で、北海道の開拓の歴史を途絶えさせてはいけないと安倍晋三総理にも話しました。国土交通省の北海道局、財務省、農林水産省にも思いを伝えるなど、北海道の公明党衆院議員である稲津久さん、佐藤英道さんと一緒に駆けずりまわりました。

とにかく4月に種まきができるようにすること以外に、希望を与えることはできないと私は思いました。結果的にこの春、被災した農地に肥料や表土を入れるということが、2016年度第3次補正予算に盛り込まれました。17年度中に営農が再開できるのは、被災農地の約8割です。18年度中にはすべての農地で100%種まきができるところまで手を打っていきたい。

この台風被害はおそらく気候の変動も考慮すると、一過性のものではないでしょう。今回、はっきりと違うステージにきているということを受け止め、復旧だけではなく、再度災害防止という新しい概念のもとで予算を組みました。これは画期的なことだと感じています。

また、北海道では真冬の暴風雪対策が喫緊の課題となっています。吹雪や地吹雪による視程障害、ホワイトアウトなどによる重大事故を防止するため、防雪林や防雪柵などのハード面の整備は進めています。

ソフト面では、できるだけ早く情報を的確に伝えることが重要です。避難指示などは首長の決断によりますが、大きな災害になると、とてもじゃないけど1人では背負いきれません。国交省、気象庁、あるいは道庁によるサポートの強化は必須であると考えています。

日本人の鉄道に対する思い入れ

――道内のインフラ整備についての考えをお聞かせください。

太田 私は道路はつながらなければ道路ではないという考え方で、インフラ整備に取り組んでいます。

オホーツク地域に行くと、お産をするにも、病院まで何時間もかかるという話を聞きます。北海道で隣町といってもケタが違う。その距離感というものが、道外の人はわからないんです。

国交大臣時代の15年3月、白糠インターチェンジができ、16年3月には釧路市の阿寒インターチェンジが開通しました。また、民主党政権時代に動かなかった、いわゆる凍結された道路区間も私は〝解凍〟し、少しずつ整備がおこなわれるようになりました。

日本の食糧基地として、物流網の充実、そして観光振興の面でも、高速道路、一般道路の整備はしっかりと進めていきたいと考えています。

――一方で、道内の鉄道は危機を迎えています。

太田 人口の減少などによって、JR北海道の経営環境は厳しくなっています。同社は昨年11月、単独で維持困難な13線区を公表し、持続可能な交通体系の構築を目指し、地域と協議をおこないたいと発表しました。

ここでよく認識しなければならないのは、日本人の鉄道に対する思い入れです。これは道路よりもはるかに高いんです。

鉄道がなくなれば、そこに住む人たちは希望が遮断されたと、ものすごく落胆します。北海道庁と国、そしてJR北海道はよく連携し、そうした気持ちをくんだ話し合いをしていくことが大切です。

鉄道ということで言えば、北海道新幹線があります。昨年3月26日に新函館北斗駅までつながりました。東京から4時間ちょっとかかりますが、大宮からだったら、3時間40分です。空席が目立つなどと言う人もいますが、そうではなく、いままでよりもはるかに乗客が増えたと、このようなプラス思考でいきましょう。

青函の鉄道利用客は16年度の上半期、対前年度77%増です。函館市の観光客も14%増を記録しています。

札幌延伸は2030年度といいますが、私は1年でも2年でも早くできるようにと願っています。札幌駅の問題、そしてトンネル工事で発生した残土をどうするか。私はその問題意識を知事などに申し上げましたが、さまざまな人の努力で確実に整備は前進していると感じています。

――札幌では新幹線開通を見据えた再開発が進んでいます。

太田 私も視察しましたが、札幌市の創成川通りは渋滞が起きやすい状況になっています。やはり、創成川通りを活用した札幌都心と札樽道を結ぶ都心アクセス道路、いわゆるアンビシャスロードの建設は必要だと感じています。

――北海道の観光産業の現状をどのように見ていますか。

太田 観光客を呼ぶためには「見るもの、食べもの、買いもの」、この3つをそろえることが大事です。雄大な自然など、見るものは北海道にはたくさんあります。そして食べものにはパワーがある。

買いものということで言えば、銘菓や工芸品など、バラエティー豊かなお土産があります。北海道には3つの〝もの〟が本当にそろっています。

13年に訪日外国人観光客は1000万人を突破し、14年に1341万人、15年に1974万人、16年には2403万9000人になりました。増加のけん引力はやはり北海道であり、沖縄です。

北海道新幹線ができて、空港民営化で空路もさらに充実することが期待されています。胆振管内白老町にはアイヌ文化を世界に発信する新たな施設が20年に誕生します。

それからクルーズ船の寄港も増加している。北海道のみなさまは、今後も自信を持って観光産業の振興をおこない、海外だけではなく、国内の観光客も大事にした施策を打っていくべきでしょう。

インフラのストック効果を発揮

――クルーズ船にも触れられましたが、かねてから港湾の整備にも力を入れるべきと主張されています。

太田 釧路港は国際バルク戦略港湾に指定されています。あそこは北米から穀物飼料を大量輸入する拠点の役割を担っています。現在深さ約14㍍の岸壁を新設していますが、それができるとさらに大きな貨物船が入ってこられるようになり、輸送費は現在の4割削減されます。そうすると飼料は安くなり、道内の酪農家にとっては、大きなコスト削減につながります。

北極海航路が動き始めており、昨年6月にはパナマ運河が拡張されました。世界の物流を大きく変えるこの2カ所にもっとも近い日本の地域が北海道です。

苫小牧港、石狩湾新港などが果たす役割は今後、国にとっても非常に大事になってきます。世界とつながる道内の港湾の整備は日本の成長のために必須です。

――ご自身は今後、どのような取り組みを進めたいと考えていますか。

太田 守りの強靱さをいかにして築いていくかが大事な課題だと思い、ずっと取り組んできました。国の予算も半分は防災と減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化に当てていきます。

もう一つは、インフラのストック効果を最大限発揮できるような取り組みを進めていきます。どういうことかというと、インフラを整備することで、災害リスクの低下や生活の快適性の向上といった効果が生まれます。また、移動時間の短縮、貨物輸送量の増加、輸送料金の軽減、観光需要の創出などといった生産性の向上も図れる。

このように、整備された道路や港などが機能することで継続的に中長期にわたって得られるのがストック効果です。人口減少をいますぐに止めることは難しい。しかし、交流人口を増やすことはインフラの整備によって果たすことができます。それ自体が経済成長につながる。

これからは、ストック効果をよく考えたインフラ整備に取り組んでいきたいと考えています。

北海道では人間が通らないようなところに道路をつくるのかと言われていましたよね。それもつい最近まで。しかし、食糧基地としての物流の確保が重要視され、そこに観光という追い風が吹いている。胸を張って道路なら道路をつくっていくということで、北海道の体温が上がっていくようなことになればいいと思っています。熱気ですね。

ぜひ北海道にインフラのストック効果を発揮するモデルをつくっていきたいと考えています。

=ききて/松田尚也=