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Interview

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苫小牧に国際リゾート構想
IRとの相乗効果を出していきたい
掲載号:2017年2月

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森章 森トラスト会長

指折りの資産家でもある森章氏が、苫小牧市郊外に国際リゾート拠点を計画している。日本初の法人会員制倶楽部「ラフォーレ倶楽部」を手がけ、不動産分野で新たなモデルを切り開いてきた卓見の実業家が思い描く絵とは。

300万坪の森林の中に高級ホテル

――苫小牧市郊外の植苗地区に広い土地を個人で取得されました。現段階でどのような開発の構想、イメージを持っていますか。

 約300万坪の森林で、そのうちの4%、約12万坪の敷地で開発許可を得ています。

北海道は広大な景観に加え、良質な雪、食、きれいな空気など、魅力的な観光資源が豊富で、世界中から注目が高まっています。
中でも苫小牧は新千歳空港に近く、港湾も整備されているため、空路・海路の交通の便を確保できるポジションです。世界の富裕層が求める観光拠点に必要な要素を多く備えていることに着目し、その受け皿となる開発を計画しています。

ターゲットとする利用者のニーズや求めるものから企画を起こしていますので、ホテルやコンドミニアムを備えるだけでなく、医療、予防医学、健康、美容などのニーズを満たせる施設を集約し、周辺観光の拠点機能だけでなく、この施設で受けられるサービスを目的としていただけることを目指しています。

いわば、大型の国際リゾート村のイメージでしょうか。

――建設に着手するのはいつですか。

 実は最近、最初に施設を建てようと考えた場所の土中から、縄文時代の遺跡が見つかりました。ある意味、私と縄文人の意見は一致していたということですね(笑)

もともと全てを一気に開発する考えはなく、段階的な開発を予定していましたので、施設を順次、建設をしていきます。

最初は高級ホテルの建設をおこない、その後、コンドミニアム的な施設という順番を考えています。ホテル内には健康・美容の施設も設ける予定です。

それから別棟で、苫小牧市内の大病院と連携した、外国人向け医療ツーリズムのためのクリニックを併設したい。

一方で、苫小牧市のIR(統合型リゾート)候補地の1つとして、私が取得した森林の近くが浮上してきました。

――そうですね。同じ植苗地区が候補地の1つとして上がっています。

 まだIR推進法が成立したばかりですから、実際に施設が日本にできるまで、場合によっては5年から10年、時間がかかるかもしれません。

そうしたものではありますが、このIRの動向も注視しつつ、苫小牧に建設されるならば、相乗効果を出せるようにプロジェクトを進めていきたい。

分譲型のデベロッパーは土地を取得したらすぐに開発して売却するビジネスですので短いスパンで考えます。しかし、私たちは保有型のデベロッパーですから、もともと開発に対する考え方のスパンが長い。苫小牧の案件も、じっくり進めていきます。

――道内では、苫小牧市以外にも釧路市や留寿都村がIR誘致に力を入れています。

 苫小牧は空路・海路に交通の利があります。海路については、大型客船が停泊することも可能です。今後、日露の経済交流が盛んになっていった場合、あるいは北極海航路が本格化した場合の拠点として、潜在的な成長性があると考えています。

空路については新千歳空港に近い利点に加え、プライベートジェットを駐機できる機能を確保できれば、観光地としての成長を強力に後押しすると思います。

中国や米国の富裕層の多くは、プライベートジェットでの移動が日常的です。そうした層をいかに呼び込むかが、まさにIR施設、特にカジノの成功の鍵を握っているからです。

例えばシンガポールのカジノでは、カジノの顧客用にジェット機を大量にチャーターし、中でもハイエンドの顧客の飛行機代、宿泊代も無料にして、カジノで遊んでもらうところがあるそうです。いずれのカジノでもVIP層の顧客をいかにつかんでいるかが、カジノの実力で、成否を分けるのです。

――カジノによるギャンブル依存症を懸念する声もあります。

 もともと日本にはパチンコや競馬、競輪など、世界の中から見ると、大衆的な賭け事が多い文化です。いまさら、カジノだけでそうした議論をするのは筋違いで、今現在も、対策が必要なのです。

ただ、違うとすれば、カジノの場合は富裕層が依存症になり、多重債務者になる危険性があるという点でしょう。

取得した札幌中心部の土地は今後…

――苫小牧のプロジェクトでは、世界の富裕層向けの高級ホテルを建設するということですが、すでに念頭に置いているブランドはありますか。

 現在、ホテル2棟(計330室)の建設許可を得ています。ブランドは、アジア系にするか、欧米系にするか、という検討も含めて交渉を進めています。

――現在は、森会長の個人会社がプロジェクトを主導している形です。いずれ森トラストに移行するのですか。

 開発許可範囲内の全てを建設をした場合、建築費の高騰もあり、投資総額は2000億円規模になることが想定されます。もちろん、分譲も含めて投資回収をしながら開発を進めることになりますが、全体としての開発規模が大きいということです。

さらに医療ツーリズムなどの事業も含めると、事業領域も広くなります。そうした中で、森トラスト自身も事業領域の拡大を志向していますので、関与する可能性はあるでしょう。

――森トラストとしては昨年7月、農林中央金庫札幌支店の土地・建物を取得されました。どのような開発を計画されていますか。

 札幌の案件は、現社長(伊達美和子氏)の判断で取得したもので、開発内容は鋭意検討を進めているところです。札幌中心部という立地で、比較的大きな敷地、容積率もある程度あるならば、まずホテル、商業、住宅などの複合施設を検討することからスタートすると思います。

建築費が高騰している中、オフィス機能のみのビルで採算が合うのは、東京の一部だけになっています。札幌はオフィス需要が弱いので、一般的には複合化しないと難しいからです。

――国内の大きなプロジェクトの中には、2020年の東京オリンピックをメドに動いているものが多い状況です。札幌の案件も20年が完成予定となる可能性はありますか。

 当社としては急いではいません。保有型のデベロッパーであり、地域と息の長いお付き合いをする事業ですから、地域の将来像を見据え、じっくり企画していくのが基本だと考えています。東京オリンピックを意識してどうこうということはありません。

私自身も、あれこれ開発プランを考えること自体が好きですので、気がついたら着手までに10年ぐらいたっていたこともあります(笑)

――以前から「札幌には超高級ホテルがない」という声があります。超高級ホテルを誘致される可能性は。

 それも札幌の将来像などを見据えながら、検討を進めているところだと思います。

地域と結婚する意識でホテル経営

――苫小牧と札幌の案件は森会長と森トラストにとって初めての道内案件になるのでは。

 私はかねてから、いわゆる道州制における中核都市での大型複合開発に関心を寄せていました。札幌も当然、検討をしておりましたが、これまではご縁がありませんでした。

一方、ホテル・リゾート事業という面で言いますと、積雪地域のリゾート経営は、採算を確保するのが難しい。春と秋が、どうしても落ち込んでしまうからです。

そういう意味では苫小牧にIRが出来るのは、ポジティブに働くと思います。通年のにぎわいの仕掛けがあることになりますから。

――奈良、沖縄など地方で新たなホテル計画が動いているそうですね。

 もともと私が、ホテル&リゾート事業を創業したこともあり、地方のリゾート地におけるホテル開発・経営・運営のノウハウを蓄積しています。一方、森トラストの主力事業である都心部の大型複合開発では、外資系高級ホテル誘致を先駆的におこなってきました。

奈良も沖縄も国際級ホテルを計画し、特に奈良はマリオットグループの最高級ブランドである「JWマリオット」を誘致しています。いわば、これまでやってきた事業ノウハウや経営資源を融合し、時代に合った事業を展開しているところです。

森トラストの事業は「社会に貢献する事業である」ことを志しており、今の日本の課題からすると、それは「国際化」であり、「地方創生」に貢献すること。その2つを重視しています。

地方でのホテルの経済効果を見ると、ホテルは従業員を雇い、地元の食材を使い、外からお客さまを呼び込み、そのお客さまは地元に経済効果をもたらします。

地域とともに私たちの事業があるわけですから、私たちは「地域と結婚する」意識で経営をしています。

――北海道の将来性について、どのように見ていますか。

 日露関係が活発化すれば、北海道は対露関係の拠点として地理的優位性があります。食も魅力です。日進月歩で技術が進化する中、広大な農地を持つ北海道は潜在力が高いでしょう。

観光面でも世界の人たちは、北海道の持つ観光資源や魅力に注目しており、一つのブランドを形成しつつあります。これまでの日本の観光産業の常識にとらわれず、世界の旅行市場やトレンドを理解することで、さらなるインバウンドの獲得が狙える、成長性があると見ています。

=ききて/野口晋一=