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Interview

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空港民営化にどう挑むのか
直撃インタビュー
掲載号:2017年10月

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住吉哲治 北海道空港会長

国内外の有力企業が注目する道内7空港の一括民営化。新千歳空港のターミナルビルを運営してきた北海道空港が、運営権取得に名乗りを上げている。道内勢のキーマンと目される住吉哲治会長に話を聞いた。

商業部門を強化してきた狙いと役割

――2010年12月、国交省が「空港運営のあり方に関する検討会」を設置しました。民営化の動きはこの頃から始まったというのが私の認識ですが、いつ頃から着目していましたか。

住吉 同じ年の5月に「国土交通省成長戦略」が発表され、空港の上下一体化、民営化の検討が盛り込まれています。私自身はその前から、遅かれ早かれ、民営化の時代が来ると確信していました。先行していた海外の事例も知っていましたから。12年7月には専任スタッフを配置し、研究、情報収集などをさせていました。

――13年7月に民活空港運営法が施行され、仙台空港が昨年、第1号に。福岡、高松などでも実現に向けて動いています。

住吉 民営化の趣旨は簡単に言うと、上下一体化して上(ターミナルビル)の利益を下(滑走路)に還元し、着陸料などを下げて航空機の利用を促進する、というもの。ある意味、当社は以前から、同じ趣旨の取り組みを実践してきました。

――どういうことですか。

住吉 ずっと旅客ターミナルビルにおける商業部門を強化してきました。その上で商業部門で得た利益をもとに、航空会社の利用料金を実質的に下げてきました。それは最終的には、エンドユーザー(消費者)の負担軽減につながります。 

商業部門を強化したのは1981年。第3ターミナルビルに新たな商業ゾーンを作ることにしました。空港ビルに大きな商業ゾーンを導入したのは、おそらく日本初だったでしょう。振り返ると、この時が当社にとって最大の転換点でした。

商業部門の役割は、利益を生み出すためだけではありません。現在の形にリニューアルをするとき、職員に号令をかけました。北海道のショールームにすると。

その結果、多くの道内企業に出店をしていただき、ここでの成功を足ががりに本州に進出した企業は少なくありません。道内企業が新千歳空港で羽を得て、そして大きくはばたいてゆく。商業部門は、そういう役割も果たしています。

――ターミナルビルには飲食店や小売店だけでなく、ホテルや温泉施設まであります。

住吉 地元の人も数多く、ご利用をいただいております。温泉につかってくつろぐのもいいですし、ご飯やショッピングを楽しんでもいい。1日中、ビルで過ごせます。

お子さんが楽しめるアミューズメント施設もあります。先日、イギリスの空港関係者が来訪されて「この飛行場は子どもに優しい。こんな飛行場は世界に例がない」とおっしゃっていました。

――ホテルの新設計画もあるそうですね。

住吉 180室規模で2年後の完成を目指しています。イメージとしては外国の方に喜んでいただけるホテルです。

――7月の分社化で現在、新設子会社の「新千歳空港ターミナルビルディング」が、空港ビルを運営しています。狙いを教えてください。

住吉 グループでさまざまな事業をおこなっており、全体の従業員数は約1600人になります。今回、民営化に備えて一定の整理をする必要があると考えました。分社化によって本体事業、具体的には旅客ターミナル、貨物ターミナルなどの部分を切り出しました。

この部分は将来、空港の運営権を取得した企業体に売却する流れになります。

ただ、空港運営に50年以上たずさわってきたわけですから、培ったノウハウは当社に残っています。また、道産子企業として地元の事情に精通しています。培ったノウハウをムダにするのではなく、本道活性化に活用するため、運営権の取得に名乗りを上げようと考えました。

――北海道空港への道、札幌市、千歳市などの自治体の出資はどうなりますか。 

住吉 マーケットサウンディング(国が民間企業に対して実施している投資意向調査)において、公表された基本スキーム案に、自治体出資は引き揚げてもらうことが、公募に参加する条件として書かれています。

各自治体と協議をしており、年末までに出資を引き揚げてもらい、対価を支払うことになるでしょう。

――ところで民営化のスキームでは駐車場の部分はどうなるのですか。

住吉 建てつけとしては、いったん国が吸収し、運営権取得者が対価として支払う資産になります。つまり空港の運営権を取得した企業体が、新オーナーになります。事業主体が同じになることで、新たなサービスや改良がされるでしょう。

年内に企業体の枠組みを固めたい

――グループでさまざまな事業をおこなっているという話がありました。縁起の悪い話で失礼かもしれませんが、運営権を取得できなかった場合、グループはどうするのですか。

住吉 基本的に今まで通り、グループ全体で経営をしていきます。関係会社だけでざっと300億円の売上げ規模があり、十分にやっていけると考えています。

私はいま77歳。50年近く、奉公してきました。運営権の取得に向け、最後のお勤めという気持ちで臨みます。

――道内7空港の一括民営化への各企業の関心は高い。どのような企業と手を組みたいと考えていますか。

住吉 具体的な企業名は申し上げられませんが、当社にも国内外のいろいろな企業が訪れています。

書生論に聞こえるかもしれませんが、地域の活性化のために、という信念を腹の中に持っていること。これが重要と考えています。

運営権の期間は30年、最大で35年です。長い間一緒に、全力で仕事に取り組む相手とチームを作りたい。5年間でこれだけ儲ける、といったファンド的な発想を持つ企業は、できれば遠慮したい。

――長く一緒に、ですか。まるで夫婦みたいですね。

住吉 そういうことでしょうね。民営化の対象となる空港・地域はそれぞれ特性があり、得手不得手があります。一括民営化を家族に例えると、学業が優秀な子もいれば、勉強はできないけれどスポーツが得意な子もいるようなもの。たとえ成績の悪い子がいても家族として一緒に頑張っていく。そんな気持ちを持てる企業とタッグを組みたい。

期待したい点を付け加えるなら、視野の広い相手を望みます。北海道は日本のいち地方ですが、やはり世界スタンダードの考え方が必要だと思っています。

――すでに接触された企業の中に、夫婦になれる、家族になれると思った相手はいましたか。

住吉 ええ。交通アクセスについてしっかりしたお考えを持っている企業、あるいは商業施設について定見をお持ちの企業とか…ただし、組む相手が決定しているわけではありません。

――いつまでに企業体の枠組みを固めますか。

住吉 年内には固めたいと思っています。

――7空港の一括民営化は、単独空港の場合と違い、戦略的な幅が広がると思います。ご見解は。

住吉 微妙な質問ですね(笑)。考えを明かすと、手の内を明かすことにもなるので……。一般的には、ネットワークの維持、あるいはインバウンドを増やして地方に送り込むとか、そうしたことが戦略的という意味に含まれるのではないでしょうか。

――民営化イコール“バラ色の未来”ではないと思います。

住吉 大切なのは連携プレーでしょう。空港運営会社が積極的に地元経済の発展に取り組むのは当然のことですが、すべてゲタを預けられても……。地元の人としっかりタッグを組むことが重要です。

=ききて/野口晋一=