アスリートインタビュー

北海道日本ハムファイターズ

【特集PLAYBACK―1】清宮育成、投手起用、就任10年目…栗山英樹監督がすべてに答える

 2020年12月15日に発売した月刊財界さっぽろ2021年新年特大号では、北海道日本ハムファイターズ特集「テレビ・新聞が報じない栗山ファイターズ長期政権の功罪」を掲載、大きな反響を呼んだ。2021年シーズン開幕を記念し、同特集からインタビュー・対談記事をピックアップ掲載する。初日の今回は栗山英樹監督に本誌記者が率直な“疑問”をぶつけた直撃インタビューをお届けする。なお文中の肩書きなどはすべて掲載時のまま。

   ◇    ◇

 球団最長10年目の指揮を執ることになった栗山英樹監督を直撃した。ファンが“ヤキモキ”する清宮幸太郎選手の育成方針、ショートスターター、オープナーなどの投手起用――ファンの愛ある“批判”から2021年シーズンに向けた決意まで、栗山監督がすべてに答えた。

二軍では簡単に打ってしまうから

 ――2020年の日本シリーズはホークスの4連勝で終わりました。ペナントレースでもホークスは強かった。

 栗山 もともと監督に就任したときからホークスしかみていないと言っても過言ではありません。ホークスを倒せば優勝できる。そう思っています。20年は思っていた通り、さらに強くなっている印象でした。

 ただ、大きなターゲットがあるからこそやりがいもある。なんとか知恵を絞って戦っていきます。

 ――ホークスとの差はどこにある?

 栗山 1番は戦力層の差だと思います。ずっと同じ戦力で戦うならば、勝つことは難しい。でも、実際に試合をするのは野手9人とピッチャーです。1試合1試合に集中すれば、勝てる方法はあると思っています。

 ――期待された清宮幸太郎選手は殻を破ることはできませんでした。

 栗山 本当に悔しかったです。どこかのきっかけで大きく変わると信じて起用していたので。

 ――打てない清宮選手の一軍帯同を疑問視する声もありました。

 栗山 確かに、二軍でベースからやり直すという育成方法もあるかもしれません。でも、清宮は二軍の試合では簡単に打ってしまう。それでは大きな変化は遂げられないと考えていました。一軍で苦しみまくるほうが覚醒への近道だと僕は思いました。

 20年シーズンはとくに自分の課題がわかったはずです。打てないこと、守備のミス、自分がチームに迷惑をかけているということも含めて。ご飯を食べられないくらい落ち込んだと思います。そこまで追い込みました。

 あとは、課題やこのつらい経験をどうするかは彼次第。これを生かしてくれると僕は信じています。

 ――21年シーズンは覚醒しますか。

 栗山 北海道のみなさんが喜んでくれる、王(貞治)さんのようなホームランバッターになってくれるシーズンになると信じています。打つ能力は間違いなくある。毎年30本以上のホームランを打ちます。そうなってくれないと困る。

 ――20年は「ショートスターター」「オープナー」を取り入れましたが、終盤はあまり機能していなかったように見えました。

 栗山 もともと先発投手の枚数が足りなかったため、19年から取り入れた戦法でした。20年シーズンの終盤は駒がそろっていたので、あまり用いなかったということだけです。

 本当であれば、先発が普通に投げて勝つほうがいい。でも、必ず谷間で先発投手がいなくなるときがきます。首脳陣の次の手として、ショートスターターやオープナーを持っているかどうかが重要だと思っています。

 そして選手たちにこの戦法の考え方を植えつけたかった。それはなんとなくできたかなと感じています。まだまだ形にはなっていないですけど、いつか取り組んできた意義が発揮できるときがくるはずです。

 ――投手起用で意識していることは?

 栗山 「ピッチャーだけは壊さない」と決めてやっています。あとは勝つために起用するだけです。

©財界さっぽろ

責任の取り方はチームの立て直し

 ――21年は自身就任10年目のシーズンとなります。球団史上最長、しかも連続10年も初となります。

 栗山 1年、1年が必死です。在任の長さを感じられないくらいです。

 9年間での1番の思い出はやっぱり日本一になったこと。勝ちきれば、みんながこんなに喜んでくれるんだと。もう一度、勝ちきって、また北海道のみなさんと喜びたい。そう感じる9年間です。

 ――近年のチーム低迷から、SNS上では退任論やマンネリを指摘する声があります。

 栗山 監督という職務は成績に応じて責任を取らないといけないこともあるけど、チームをきちんと立て直さないといけない責任もあります。

 監督就任から強く思っていたことがあります。「ダメにして終わってはいけない」ということです。

 でも、実際に監督をやってみると、「負けたら責任をとって辞めないといけない」と思うんですよ。申し訳ないから。

 僕に能力があるとは決して思っていません。でも、僕がいまのチームにやるべきことが残っている。そうであれば、最後までやり尽くしたい。

 もし、僕の初年度からいまのようにSNSが普及していれば、当時から「辞めろ」と言われていると思います。そのときよりは批判的な声は少ないのではないかと感じています。

 ――批判的な意見を目にすると胸が痛む?

 栗山 どうでもよかったら、「辞めろ」とは言われないでしょう。批判されるということはまだファイターズの野球を見てくれている証拠。チームのために考えてくれているんだと認識しています。

 ――21年に向けて、「情は捨てる」と発言しました。

 栗山 情とは、もともと厳しさも含めた愛情を意味します。これまで一人ひとりの選手に愛情を持って接してきたつもりです。

 愛情を込めて、もっと厳しくしたほうが伸びるだろうという選手に対して「苦しいだろうな」という感情を消すだけ。その選手のためになることはすべてやり切る。根本を変える、ということではありません。

 ――抱負を。

 栗山 この仕事はとにかく結果がすべて。いい結果を残さないといけないということだけです。

 コロナの影響もあり、20年はファンのみなさんの力がどれほど大きいか、再認識しました。とにかく道民のみなさんに喜んでもらえるようにしっかりやります。


→Webでの購入はコチラ
→デジタル版の購入はコチラ

(くりやま・ひでき)1961年東京都生まれ。創価高校、東京学芸大学を経て83年オフにヤクルトスワローズにドラフト外で入団。プロ2年目からメニエール病を患いながらも外野手として一時期はレギュラー出場を果たすなど、通算7年で494試合出場、336安打・7本塁打・67打点を記録し90年限りで引退。翌91年から野球解説者、スポーツキャスターとして活躍するかたわら、2004年から白鴎大学で教授として教鞭を執るなど多方面で活躍し、11年から北海道日本ハムファイターズ監督に就任。20年までの9シーズンでリーグ優勝2回(日本一1回)、Aクラス入り5回を記録している。空知管内栗山町在住で同町観光大使も長く務めている。