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ウェルネット/宮澤 一洋社長

(みやざわ・かずひろ)1960年長野県生まれ。明治大学卒業後、水道・ガスメーター等製造の「東洋計器」(長野県)を経て96年に「一高たかはし」(札幌市)入社。新規事業開発担当として子会社「ウェルネット」(同)へ移り取締役就任。2009年から現職。

創業の地〝北海道〟に拠点を戻し地域に貢献。ビジネスの可能性を広げる

ネット決済代行サービスのパイオニア「ウェルネット」。札幌で創業後、東京に本社を置いていたが、2021年6月から札幌に本社を戻した。22年9月には、札幌証券取引所に重複上場している。札幌移転の理由や北海道の優位性、今後のビジョンについて宮澤一洋社長に聞いた。

コンビニ決済サービスのパイオニア

――「決済代行サービス」で成長してきました。

宮澤 弊社はもともと、札幌にあった燃料販売の「一高たかはし(現・いちたかガスワン)」の子会社です。新規事業開発が専門で、親会社向けにコンビニ決済を汎用化するためのアプリケーションサービスを開発したことがすべての始まりです。現在は、航空、バス、鉄道などの交通系の決済サービスで高いシェアをいただいております。

――ぺーパーレス化やキャッシュレス化が追い風となっています。

宮澤 コロナ禍以降、非対面・非接触サービスも増加する中で、ペーパーレス化やキャッシュレス化の普及が加速していますが、弊社は以前から、事業者やコンシューマ双方のDX化を支援するクラウドサービスを提供しています。

スマホで各種支払いができる「支払秘書」やバスの検索から予約、購入、乗車まで全てを1つのアプリでサポートする「バスもり!」といった自社開発のスマホアプリの導入が増えており、主力商材になりつつあります。クラウド化は決済業界に革命的な変化をもたらしています。

――交通業界でもDXが進んでいます。

宮澤 ICカード以外でもDX化が進んでおり、QRコード認証システムの導入を推進しています。

昨年は関西を中心に岡山県、静岡県を含めた61の鉄道・バス事業者で構成される「スルッとKANSAI協議会」から「QRコードを活用したデジタル乗車券」のシステムパートナーとして選定され、共同開発をしています。

切符などのICカード化されていない乗車券をQRコードで発行し、スマホで購入して、チケットレスで乗車できるサービスです。2024年春の開始を予定しています。

北海道からIT業界を牽引。地域貢献も

――東京から札幌に本社を戻した理由は。

宮澤 いくつかありますが、IT企業は、東京に本社がなくても勝負ができるので、北海道という土地は最適でした。現在は売り上げの95%が道外です。

採用においても「地元を離れたくない」「Uターンで北海道に戻りたい」「北海道で暮らしたい」と考える人は一定数おり、人材の確保にもつなげやすい。移転のタイミングで新社屋を建設し、働きたいと思ってもらえる環境も整備しました。

もちろん、市場としても北海道は魅力的です。札幌のような都市がある一方で、過疎化が進む地方のDX化は遅れています。クラウド型の時代はどこでも変わらないサービスを提供できるので、資金や人材が限られている地方のIT化を一気に推進することができる。いわば有望なマーケットでもあるんです。

――昨年9月には札幌証券取引所に重複上場されました。

宮澤 北海道で創業した企業として、多方面で地元に貢献したいと考えていました。道内経済の活性化に寄与していくと同時に、知名度を上げて、道内の株主も増やしていきたいという思いから、札証に上場しました。

――北海道を拠点にビジネスを展開する優位性についてお聞かせ下さい。

宮澤 道民はフレンドリーで、クリエイティブな発想を持つ方が多いので、新たなサービスを生み出す土壌としては良い環境だと思います。我々のビジネスモデルのほとんどが札幌にいた時に構想したものです。

――地域貢献も積極的に行っています。

宮澤 経済的理由で修学継続が困難な若者に向けた「ウェルネット奨学金」を設立しています。道内の工業高等学校に通う学生を対象とした奨学金で、返済の必要がない給付型です。

22年度までの累計で768人に対して約8600万円を支給してきました。支援を受けた学生からは多数の感謝の手紙をいただき、我々のモチベーションアップにもつながっています。昨年は一般社団法人全国高等専門学校連合会からも感謝状を頂戴しました。

成績による給付制限もありません。学校の成績が良くなくても、社会で活躍している人はたくさんいますし、私自身も優秀な学生ではありませんでした。未来を担う若者への投資は、継続していきます。

――今後のビジョンについて教えてください。

宮澤 生意気な表現かもしれませんが、夢は「北海道を代表する企業」になることです。地域密着型のプラットフォームを提供し、北海道の暮らしに貢献していきます。

就職を機に北海道を出る若い人は少なくないですが、今後も世の中を動かすイノベーションを起こし、面白いことをしている道内のIT企業として若い人たちに向けてアピールしていきたいです。