財界さっぽろ 2024年4月号のさわり

財界さっぽろ 2024年4月号

鈴木(直道)知事が「誘致した」と言ったから……ラピダス稼働に向けて“お邪魔虫”の道庁

 稼働前から道内経済界にさまざまな影響をもたらしている国策半導体企業・ラピダス(千歳市)。鈴木直道知事は誘致について、昨年の北海道知事選挙では道内各地で「私が誘致した!」と連呼し大きな実績と強調、再選に向けた原動力の1つともなっていた。だがその後は、ラピダスに大量の水や電力が必要となるなど難問が噴出。すると公の場ではラピダスについてどんどん言及が少なくなるなど、あからさまにトーンダウンしてきたのはよく知られているところだ。

左から東哲郎ラピダス会長、小池淳義社長、鈴木直道知事、横田隆一千歳市長 ©財界さっぽろ

 もともと時間のない中で工場建設が急ぎ進められている中、同社や誘致先の千歳市は日々さまざまな調整をしており、判断にとかく時間がかかる道庁は「お邪魔虫」との話が飛び出している。さりとて、知事が誘致したと言った以上、担当部局は知事と違って塩対応もできず……周辺関係者から漏れ伝わるそうした内情をまとめた。

知事公館で陳謝 鈴木直道知事が観光予算額半減で炎上!

 今年2月末の北海道議会第1回定例会。次年度の予算を決める議会の重要な初日代表質問が丸1日開催されずに終わり、記録に残る中では初めて延会となった。その原因となったのが、今年度の最終補正予算に追加された、1億5500万円の観光関連事業だった。

鈴木直道知事 ©財界さっぽろ

 初日最初の代表質問に立つ予定だった第1会派・自民党がこの予算について「説明がない」と紛糾、理事者との調整がつかなかったのだという。今年度の最終補正予算は先議、つまりあまり時間がない中で急ぎ議論し決議するもの。さして緊急とも思えない観光関連予算をなぜ先議して通す必要があるのか――自民側の主張はもっともだが、道、そして鈴木直道知事としてはどうしても先に予算を通し、観光業界に“お詫び”の姿勢を示す必要があった。なぜなら次年度の観光予算が、観光業界などとの“約束”に反して半減していたからだ。いったい何があったのかを詳報する。

特集・話題の新顔

 北海道内に最近初上陸したばかりの企業や飲食店、ちまたで最近話題となっている言葉など“新顔”を紹介する特集。

 今年、流通関係者に衝撃を与えたイトーヨーカドーの道内全店撤退。札幌市内の屯田店と琴似店の2店については「ロピア」ブランドで急成長しているディスカウントスーパー大手「OICグループ」が承継すると発表された。道内初上陸となる同グループには、流通大国・北海道の関係者も戦々恐々。すでに水面下で飛び交うディープな噂をまとめた。


閉館するイトーヨーカドー琴似店 ©財界さっぽろ

 昨年来よく聞くようになった言葉の1つが「グリーントランスフォーメーション(GX)」。化石燃料から再生可能エネルギーへと移行する社会的な取り組みのことで、札幌市と北海道は昨年6月に関係省庁や金融機関を巻き込み、コンソーシアムを立ち上げるなど本腰を入れている。目下の目標は年内にも指定される「金融・資産運用特区」の適用。その旗振りをしているのが、参院議員の長谷川岳氏だ。市政に強い影響力を持つという長谷川氏の大号令で、日本だけで官民合わせ150兆円と言われるGX関連投資のうち、40兆円ほどを札幌・北海道に呼び込む狙いがある。


左写真左から経産省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長の井上博雄氏、知事の鈴木直道氏、札幌市長の秋元克広氏、金融庁総合政策局長の栗田照久氏、環境省総合環境政策統括官の上田康治氏(すべて2023年6月当時の肩書き)、右写真は参院議員の長谷川岳氏 ©財界さっぽろ

 このほか北海道リート、日本郵船、猿田彦珈琲など、多彩なジャンルの「新顔」が登場する。

市は解体指導するが…札幌・東雁来に違法建築ライブハウス

ライブハウス「LUA RELVA(ルアレルバ)」 ©財界さっぽろ

 札幌市東区郊外の東雁来町にあるライブハウス「LUA RELVA(ルアレルバ)」は2023年1月に開業。灰色の倉庫のような2階建ての建物には、小さめの看板が掲げられている。実はこの建物、市街化調整区域内にある違法建築物。当然、建築確認申請を出していないままに建設されたものだ。オーナーは隣接地で電気設備関連の会社を営むA氏。音楽が趣味で、アマチュアバンドのドラマーとしても活動するA氏は、コロナ禍で札幌市内のライブハウスがいくつも閉店する現状を見て、自社の敷地内にライブハウスの建設を思い立ったという。市はすでに建物の違法性を確認しており、取り壊しの要請を出しているが、一方で保健所は飲食店としての営業許可を出しているのだという。どういうことなのか。

5人で生乳6万トン超 メガファーム経営者座談会 なぜ酪農は危機なのか、どうして北海道は大変なのか

左から札幌エージェント代表の土居祐介氏、希望農場代表の佐々木大輔氏、ドリームヒル代表の小椋幸男氏、Jリード代表の井下英透氏、Kalm角山代表兼CEOの川口谷仁氏 ©財界さっぽろ

 コロナ禍で飲用向け牛乳の需要が急激に減退、その分を乳製品向けに仕向けたことに始まる、乳製品在庫超過と生乳の生産抑制。一昨年にはロシアのウクライナ侵攻に端を発する飼料、資材高騰も酪農家を直撃し、酪農家は今、かつてない規模と速度で減少している。20年前に10,000戸以上いた道内酪農家はこの3月末で離農する農家を合わせると、4,500戸を切るという。

 生産抑制が離農を加速したのは、主に都府県で酪農家が漸減し続け、慢性的なバター不足が起き始めていたことから、増産の余地が大きい北海道内で国を挙げて生産規模拡大の取り組みが行われ、その結果が出始めたタイミングだったからだ。先行して投資をしてきた年間生産量1,000トン超の「メガファーム」経営者が今、もっとも苦しんでいる。従業員の雇用、広大な草地を含む国土保全、さらには関連業者を含めた地域の維持。酪農大国北海道の基幹産業はまさに危機に瀕しているが、では実際のところ何がどう苦しく、どうして危機なのか。

 北海道を代表するメガファーム経営者ら5人に、本誌がこれまで報じ続けてきた生乳生産、業界を取り巻くさまざまな問題点を改めて問うとともに、持続可能、次代につなぐ生乳生産のあり方について語ってもらった。

 さらに当社ニュースサイト「財さつJP」では、誌面では割愛した、生乳業界・サプライチェーンを取り巻く問題の深層議論を大幅に追加。「20,000字座談会」として前後編に渡り掲載している。