企業は学生のどこを見ているのか、マニュアル本は読んだ方がいいのか――就活の疑問について学生の人気が高い道内企業の人事担当者による座談会を行った。人事は普段どんなことを考えて採用活動を行っているのか。匿名だからこそ話せる“ホンネ”に迫った。
――昨年、一昨年と比べて採用環境は一変しました。
A うちは例年、景気のいい悪いに関係なく新卒採用をしている。採用を抑える企業もあるので、 優秀な学生を採れるチャンスととらえている。
B 不景気なときほど、優秀な人材が中小にも目を向けてくれる。昨年までとは採用数には変化が なくても「質」という面では注目していきたいですね。就職が厳しくなることで考えられるのは、学 生が迎合ぎみになる可能性。「御社が一番です」という雰囲気で内定を取りに来る動きが絶対出ると 思うが、「ほんとにうちでやりたいの?」と聞きたい。内定をとりたいだけの学生には“冷や水をぶ っかける”ような対応もしないといけないな、と楽しみにしています。
C 昨年の倍率は60〜70倍くらいだった。どれくらい応募がくるかというのは読めないですが 、昨年より前年比でプレエントリーの数は増えているのが意外でした。
D 人ごとみたいに聞こえるかもしれないけど、「今年はどうなるんだろう」という感じ。学生さ んも不安かもしれないですが私たちもわからない。
――学生の行動で目に付くのはどんなことですか。
B 最近驚くのが、会社入ってきてもiPodをつけたままな人。あいさつすると急いで外す。そ ういうのはすごく見てますよ。入り方と出方も結構見ます。出口の表情とかも。
D やる気ってそういうところで見えると思うんですよ。目の前でため息をつく人がいるけど、「 どういう意味なのかなー?」と思ってしまう。でも、学生にはため息をついているつもりは多分ない んですね、自然というか。
C 自然に人を不快にさせる…
一同(笑)
A うちの場合、面接に来た学生は受付を通って部屋に案内されるんですが、受付から「こんな学 生が来て、こんな態度だった」という情報がバンバンあがってくる。
D どんな本を見ても「そこから見られているんだよ」って書いてあるんですけどね。テーブルの 上にバッグをドンと置かれたりすると驚く。
C 採用担当としては“素”のところの情報が欲しいので、社内でもいろんな人に聞いたりします 。
B お茶を出す女の子に「どうだった?ありがとうって言ってた?」とたまにヒアリングをする。
D 面接を受けに来てトイレに行く学生がいるけど「なんで着いてすぐトイレ?」と思ってしまう 。向かいのコンビニでタバコ吸っている人もよく見ますね。吸うこと自体はだめじゃないけど、ガマ ンできなかったのかなと。
C 説明会でガムをかんでいる。
B おそらく悪いと思っていないんでしょうね。
C エントリーシートでひどいのもいっぱいある。アドレス、連絡先が間違っている。誤字脱字や 余白だらけなのもだめですね。
B 「どうすればエントリーシートに通るんですか」と質問されることがあるが、聞くこと自体が そもそも間違っている。結論から書く、要点をしぼる、というテクニカルな部分は教えることができ るけど、結局、そこの会社に入りたいという思いがあるか、ないかが大事。読み返せば気付く間違い をしたり、はんこを押してなかったり。
D うちのエントリーシートは鉛筆もペンも両方可で、「間違えそうだったら鉛筆でいいよ、それ で落ちたりすることはないから」と言っているんです。でも、ボールペンで書きたいという思いがあ るらしく鉛筆で下書きしてからペンでなぞって書く人がいる。消しゴムで消したときにインクが伸び た跡があるものも…
B ななめにならないように定規で線を引いているものもある。
――そういう努力はムダですか?
D 私が学生のときはまず1枚はだめにしてもいいから見本をつくって、それにならって書いた。 間違えたら泣きながら破く。それが普通だと思っていたから「なんでこんな下書きをするんだろう」 と思う。
B シミがついていたり、油がはねてたり。タバコ吸いながら書いてんだろうなというニオイがす るものも。
D 封筒開けた瞬間にわかりますよね。
B 別にそれが採否に関係する訳ではないですが、“志望度”が見えちゃうんでもったいない。本 気で入りたいと思ってないから読み返してこないのかな、とと思いますね。
C マスコミ系はバンカラというか、「中身で勝負だ」みたいな人がいて殴り書きっぽいのがある んですが、やっぱり読んでもらうということを考えたら読みやすく丁寧に、というのが誠意。
D いかにも自分で切ったようないびつな写真が張ってあるときもありますよね。女子で、東京の 有名な写真館で撮ったような写真もある。
B ななめの角度から撮ったやつとか。
D マスコミやアパレル系ならいいと思うけど、それ以外の企業には普通のでいい。やけにサイズ が大きい写真を張ってくる人がいるけど、よく見える子とよく見えない子ではっきり分かれますね。
――逆にどういう学生がポイントが高いですか。
B あいさつと、そこから見えてくる素直さ。
D 右手と右足が一緒に出たからといって、緊張しているんだなと思うだけで、それで落ちること はない。少しくらいおかしくても最終面接の前に指摘してあげればいい。
B 女子学生で、多分走ってきたんだろうなという感じの髪の毛がボサボサな人がいる。それでダメということではないけど、そういうところに余裕があってほしい。
D 男子の髪の襟足の長さは気になりますね。刈り上げてこいとは言わないが、選考が進んで上に 通すほど違和感が大きくなる。最終面接まで行って自分も残したいと思ったら、「もう少し切った方 がいい」って言ったことはあります。
B 自分は通してもいいけど、多分、部長は通らないだろうなという視点は入っちゃうときはあり ます。帰るときにコートを着ようとするから「出てから着た方がいいよ」と。忠告できることはする 。
A だんだん選考が進んでくるとこっちも情が入ってくるので、くだらないことでいいものをもっ ている学生さんに落ちて欲しくない。最終面接で「あの髪はなんだ」「服装はなんだ」とケチがつく ぐらいなら、こちらから教えてあげます。
D カッコイイと思って胸にペンを挿す学生がいるんですけど、「違うから。しまって」と教えて あげる。
B 最終面接の前に、自分が意図的にお茶を出しに行く。「第一声が小さかったらそれだけでバツ だから。気をつけて」と応援する。受かったらうれしいし、そういう関係を築けたら内定辞退もそう そう出ないでしょう。
――印象に残る学生は。
C 試験に来る子は9割以上、礼儀正しい。だから、そうじゃない子みたいのは目立っちゃう。「 なんて名前だ?」となる。
D 女の子が説明会会場でつるんで動くのはわかるんですよ。男の子が3、4人であちこち回って いる子たちがいて笑えましたね。
B カップルのときもありますね。
C ありますね。
B 一方がブースに来ると、もう片方も「じゃあ付き合うよ」と大体一緒に座る。「いいよ、来な くても」と内心思いますけど。(笑)
D 友だちでも恋人でも会場に来るまでは一緒でもいいんだけど、着いたら別々に行動というのが あるべき姿。それから、目立つ子は企業用の控室でうわさになって「また、ナントカちゃん来たよ」 とあだ名までつけられたりすることもあります。
A 説明会に何回も来てくれる学生さんは印象に残る。「また同じ話するから別な会社を見ておい で」と言うんですけど、熱意に感じることもある。選考が進んでいって、どっちか選ぶという段階に なると、大体印象に残っている方の学生を残します。
B 合同説明会の帰り際とかに「今日はありがとうございました」と会釈して帰るとか、片付けを しているときに「少しお話してもいいですか」と言ってくれたりすると、うれしいですよね。接触回 数が多い方がいい。
――やる気は感じるが内心困る、ということは。
C 名刺をつくっている学生がいるけど、もらっても困るというのが正直な感想。マニュアル本を 読むと本州の方では主流になっているみたいですが、もらうとこちらも渡さないといけない感じにな るので…
D 名刺をランダムにまきたくないというのがあるので、もらうだけもらって「いただけませんか 」と言われたら渡すようにしている。でも、向こうから「この人くれないんだ、ケチだな」と思われ るのがしゃくかも。
B 個人的にはもらうとうれしい。学生用フォルダをつくって入れている。後になって、社員にな った子の名刺が出てきて「ああ、もらってたんだ」なんて驚きがあったりして。(笑)最大限に活用 はできてないんですが、覚えてくださいという気持ちは伝わってくるかな。
C 空気を読むことも大事。順番で質問を受けるときに、後ろに10人くらい並んでいるのに1人 で10分くらいしゃべっている。周りへの配慮が必要。
――道内でも内定取り消しの動きが出ています。
A いまにもつぶれそうな会社でも、ネームバリューのせいで人気があったりする。学生さんに企 業がどういう状態にあるかに気付けといってもなかなか難しいが、実態を知らない。企業研究ができ ていないんだなと感じる。
B 少なくとも業界全体がどうかというのはわかるわけですから、それをなんで就職課が言わない んだろうと思う。例えば、「教育業界は少子化で大変なんでしょ」とよく言われるんですが、こんな 世の中だからこそ子どもに投資しなきゃという親の心理があって、実は不況に強いんです。
――企業と学生のミスマッチを防ぐには。
B 就職サイトに載っている情報はしょせん、私たち企業がお金を払っている「広告」。そういう 視点があった方がいいと思う。そこに書いてあることに心酔しきっていると、入ってからギャップに 苦しむ。
C 首都圏のセミナーに行くと、手取りが何万円みたいな、お金の話を前面に出している会社があ る。「露骨だな」と思うんですが、しばらく見ていたらそんなに学生が寄っていなかった。
B 給料高すぎると、逆に学生が「仕事が大変なんじゃないか」と引いてしまうこともありますね 。
――北大は商社人気がすごいらしいですね。
D 不景気で一番被害を受けていないのが商社ということらしいですが、大丈夫な業界なんてない んだけどな。
C 国公立大と私立大で就活に対する温度差がある。国公立はほったらかし。学生も誘導されるわ けではなく合間を見て来る。私立はおぜん立てして「みなさん、いいですか〜」「ハ〜イ」みたいな。
A 私大の学生の方が個性がないような気がする。大学が就職率を上げようとテクニックを教える のでみんな同じになってしまう。
――マニュアル本は参考にすべきですか。
C 基本的なマナーを参考にする程度ならいいけど、たくさん読んじゃうとマズイ。そこにガッツ リはまっちゃうと何を信じていいかわからなくなる。そこに行けば行くほど個性がなくなる。この子 のいいところはどこに行っちゃうんだろうと思いますね。
D 結論としては、いい人にとってはいいということもあるんけど、悪い人にとってはもっとダメ になる。
B 先輩が使った売り込み方をマネする学生がいるが、オリジナルならいいんですけど、二番せん じなら逆にマイナス。靴下はこういうの、カバンはリュックじゃだめよ、というような最低ラインの 知識をつめることは悪いとは思わない。なるほどと思う部分もある。でもあれに傾倒してしまうのは どうかと思う。コンサルタントも不況をいいことに危機感をあおっている。テクニックよりも自分が 何をやりたいかをきっちり探してほしいですね。
――ありがとうございました。
(構成・安藤由)