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【緊急提言】蛍光管製造禁止!絶対的不足で停電に

またもや環境省の暴挙

 昨年11月3日のスイスジュネーブでの水俣水銀条約締約国会議で2025年コンパクト蛍光灯の製造禁止、2027年直管蛍光管の製造禁止が決議されました。スウェーデンの過激な活動家たちの地球温暖化村のヒステリー的暴走かと思っていましたが、本件の所管課は環境省水銀対策課でした。日本の地球温暖化対策のほうは、国民生活に支障をきたさないペースで実効を上げていくという緩い方針で、現に2050年カーボンニュートラルというのも、その頃には生きている関係者はいないのではないかというほどのペース配分です。

 これに比べると、水銀規制のためにあと2年で何百万のコンパクト蛍光灯をLED照明に替えて、残り2年で世界中の蛍光管を製造禁止にしてしまうなどとは暴挙、愚挙以外の何物でもありません。何故ならば日本中の蛍光灯がそれまでにLED化出来ないと、最後の蛍光管が切れた時点でその建物は停電(不点灯)になるのです。ブラックアウトを経験した北海道にとっては記憶に染みついた恐ろしい事態です。建物の中で一本や2本の蛍光管が切れていてもお愛想ですが、地下街すべての照明に寿命が来て、その時にLEDの供給が間に合わないのは深刻な事態です。ちなみに札幌のチカホの照明は全てがコンパクト蛍光灯です。あと2年で全数交換する必要があります。「ゼロカーボン北海道」を高らかに謳う北海道庁の本庁舎も道が持つ1万2千という膨大な施設も大半はまだ蛍光管のままです。「脱炭素先行都市」の札幌市でさえまだLED化していない施設が900も残っていると聞いています。旭川も函館も釧路も苫小牧も室蘭も北見も帯広も全道の市町村があと4年ですべての庁舎、学校、病院、文化施設、運動施設、街路灯をLED化しなくてはなりません。開発局も道路、トンネル、橋、港湾、空港のすべての照明を寿命が来る前に交換しなくてはなりません。ナトリウム灯は2023年9月にすでに受注受付を終了し2024年4月からは配送を終了します。もう球を在庫して凌ぐこともできないのです。

 政府と日本中の自治体が目標としているカーボンニュートラル実行計画の2030年完全LED化ですら夢物語だったものが、何の議論もなく、突然3年前倒しになりました。何の対策も取らないままに強制的に蛍光管を製造禁止にしてしまったのです。

 あと4年の間に北海道中のすべての民間施設と公共施設、街路灯、防犯灯を交換しなくてはなりません。そのときに北海道までLED資材が回ってくるのか、人手不足の北海道で膨大な工事が終了できるのか、今すぐ考えるべき危機的状況です。

絶対的にモノが足りない

 そもそも一体どれだけの照明器具が日本にあるのか環境省にも経産省にも検討した痕跡はありません。1780都道府県・市町村の公共施設と街路灯と政府の何十万もの国有施設と港湾、空港などの照明を全てLED化してしまわなければなりません。総延長130万kmの道路にどれだけの街路灯があるのか誰も数えたことはありません。民間企業3百万社の560万事業所でもまだLED化が終わってない事務所、工場、商店が一斉にLED化に走りだします。

 環境省水銀対策課は、事前に経産省と照明工業会に了解を取ったと言っていましたが、当事者の日本照明工業会は何を考えていたのか。あと4年でこの膨大な照明資材の供給ができるはずがありません。だれも総量を把握していないのですから、生産計画の立つはずがないのです。

半導体が足りなくて車が2年待ちになる、咳止め薬が足りなくて病院に行列ができる、マスクが足りない、アルコールが足りない、ワクチンが足りないとサプライチェーン問題であれほど大騒ぎしている国で、次はLED照明が足りないという大問題が発生します。

 繰り返します。資材の供給が間に合わないと蛍光管が切れた時点で照明が調達されるまでの間は長期停電(不点灯)するのです。

絶対的にヒトが足りない

 北海道の電気工事業界は絶対的な人手不足です。特に今年は熱中症対策としての全道で学校へのクーラー設置の仕事が殺到して上期は他の仕事に手をつける暇はないとの観測です。これであのラピダスが躯体工事に入ると全道の電気工事士が動員されるのではないかと想像します。

 絶対的人手不足の中で期限を切られてしまったのです。

 来年4月1日からは働き方改革で建設業にも土日、時間外業務の制限が始まります。今までは営業時間中は避けて、夜間や土日に工事していたものが平日の真っ昼間にお客さんのいるところで工事せざるをえなくなります。商店や学校や病院などどうすれば良いのでしょう。

絶対的に資格者が足りない

 さらに、昨年規制強化された大気汚染防止法によりアスベストを含んだ天井材の工事は極めて困難になっています。2006年以前の建物を回収する場合には、必ずその建材にアスベストが含まれているかどうかを資格を持った人間が検査して、アスベストが含まれている場合は法律が定める厳重な健康保全対策を行わなくてはなりません。そうは言っても、そもそも地方の電気工事業界にはアスベスト工事資格者がいません。工事資格者がいるのはゼネコン級の大きな工事会社で、天井板を削る照明工事も壁に穴を開けるクーラー取り付け工事も費用や工期が倍になってしまっています。

官僚の脳みそも足りない?

 政府の環境行動計画で地球温暖化村が立てた無謀な計画であった「2030年を目標年度としていた完全LED化」を、環境省の水銀対策村が後先考えずに強制的に3年間前倒ししてしまいました。政府目標を議会も通さずに、社会経済の重大な影響も考えずに、国際会議で通してしまったことの責任は誰が取るのでしょう。

 今回の決議の罪が重いのは水俣水銀条約締約国147カ国すべてがあと4年でLED化しなくてはならないという国際競争を作ってしまったことです。ただでさえ半導体不足が社会経済に深刻な影響を与えているのに、さらに世界中で発光ダイオードや部品資材の取り合いになります。輸入品の価格高騰は避けられません。本来の経産省の経済戦略であれば、日本国内の生産能力を十分に高めておいて、輸出に回せるだけのストックを蓄えてから国際会議に持ち出せば日本の輸出戦略として大きな得点になったのですが、水銀を減らすという自分が所管する使命だけのために何も考えずに突っ走ったとしか言いようがありません。事前の検討もなしに自分の首をしめてしまった国際的な愚かな失策で、社会経済に混乱をもたらす行政災害です。

 それを解決するために必要な総労働時間を厚生労働省が働き方改革で激減させてしまいました。さらに同じ環境省の大気汚染防止局がアスベスト規制を強化して費用面からも、資格者数からも改修工事を困難なものにしてしまいました。霞ヶ関に絶対的に不足しているのが、官僚の頭脳と判断力ではないでしょうか。

 照明のLED化については、民間であれば、銀行に借金してでもすぐに発注して、工場や商店、事務所の工事を始めれば良いのですが、自治体や公共機関にしてみると、今年度議会で来年度の予算化が間に合ったとしても、2024年から27年までの4年間で膨大な施設の作業を終わらせないとなりません。総量もわからず、見積もりもできないままどのように計画を立て予算化できるのでしょうか。

 絶対的な資材不足と、絶対的な人手不足と解決困難なアスベスト規制という重たいコールタールの海の中で、膨大な施設の数え切れない照明をLED化するという困難な仕事をしなくてはなりません。今までは電気料金高騰対策であり、カーボンニュートラル対策という温い平和な時代の問題であったものが、絶対的な資材不足の中での停電(不点灯)を防ぐための危機管理対策に変わってしまったのです。

 今回「緊急提言」としているのは なんとしても経営会議と臨時議会ででも問題提起して、今すぐに実行計画を立てていただきたいということです。全国が一斉に動き出します。全世界が資源争奪戦争になります。まずは自分の会社と自分の自治体を守ってください。北海道はただでも物流や人材に大きなハンディキャップがあります。危機意識を持って決断してください。知恵を使って1日でも早く一歩でも先に走り始めてください。

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筆者紹介 株式会社あかりみらい代表取締役 越智 文雄
1980年北大法学部卒業。北海道電力、電気事業連合会、北海道洞爺湖サミット道民会議事務局次長などを歴任。電力業界で初代の危機管理担当室長の経験から自治体・企業へのアドバイザーとして活躍。環境・エネルギー問題の専門家。札幌なにかができる経済人ネットワーク主宰。