優れた開発技術で業界初の針がないインジェクターを開発
人手をかけていた作業を機械がおこなうシーンは増えている。ASCe(アスク)は人手不足時代のニーズに応え、オーダーメードの省力装置、自動機器を設計から製作まで一貫して手がけてきた。自動車業界をはじめ、医療分野や食品業界など、あらゆるクライアントの要望を形に変えている。
そんな同社の自社開発商品が、業界初の針がない調味液注入機「ニードルレスインジェクター」だ。
インジェクターは針などを用いて調味液を食材へ直接注入する機械。漬け込み工程の時間を短縮することができるが、針が折れることで異物混入などのリスクもあった。
同商品は高圧で調味液を噴出することで無針注入を実現。異物混入リスクの解決はもちろん、食材に直接触れないため衛生面でも優れている。
さらに、従来では難しいとされていた骨付き食材などへのインジェクションも可能で、噴出圧力を調整することで果物などの柔らかい食材にも対応することができる。
2015年に特許を取得し、17年12月には札幌商工会議所主催の「ものづくりスペシャリスト表彰」知的財産部門で最優秀賞を獲得。用途の幅広さが注目を集め、国内外での販売拡大が期待されている。
「開発のきっかけはクライアントの〝インジェクターの針が頻繁に曲がったり折れたりして交換作業が大変〟という一言だった。現場で機械を見て、針が無くても同様の作業を実現できると感じた」と後藤亮太社長は振り返る。
現在は自動車・医療分野の機械開発が大きな割合を占めており、食品業界の割合は多くないが、ニードルレスインジェクターの販売をきっかけに同業界への進出を加速させる予定だ。
また、現在注力しているのが協働ロボットシステムの開発だ。これまでの開発技術を生かして、介護サービスや接客などの対人作業を安全におこなう「人に寄り添うロボット」の開発に向けて計画を進めている。
「自動車や食品、医療業界などあらゆる分野の機械を手がけてきた。これからもオーダーメードのものづくりを追究し、総合装置メーカーを目指す」と後藤社長。