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膀胱がんの再発率を減少 光線力学診断(PDD)
取材日:2018年4月

写真大 PDD(左列)では通常光の内視鏡画像に比べ、がん細胞に蓄積された光感受性物質が赤く光っているのがわかる

写真 「PDDによって再発の減少につながる可能性は大きい」と語る清水崇医師 写真 経験豊富な泌尿器科専門医がそろう坂泌尿器科病院

【「体内診断用医薬品」国内製造販売承認後、日本初】  再発率の高い膀胱がんに対する新しい診断方法「光線力学診断」(PDD)が昨年12月に保険適用となった。再発リスクを抑え、患者のQOL向上に役立つというこの新診断方法を全国で最初に導入した坂泌尿器科病院(札幌市北区)の清水崇医師に話を聞いた。

【発光させてがん細胞の取り残しを抑制】

 腎臓でつくられ、腎盂と尿管を通ってきた尿を溜めておく膀胱。この膀胱に発生する膀胱がんは、高齢の男性に多いのが特徴だ。しかも同時多発や転移の可能性もあり、注意が必要ながんの1つだ。

 こうした特徴を持つ膀胱がんに対して、新たな診断方法が咋年末に保険適用となった。この最新の診断方法は「光線力学診断」(PDD)といい、5―アミノレブリン酸という薬剤を服用した3時間後に、蛍光内視鏡を用いて、がんなどの病変を蛍光発光させて観察する。

 このPDDを全国で初めて導入した坂泌尿器科病院の清水崇医師は「PDDの特徴は、術中に光を当てることで病変が発光して見えやすくなることです。見つけにくい上皮内がんや1、2ミリの小さながんも発光するため、手術時の取り残しを減らせる可能性が期待できます。実際に、肉眼では切除できているように見えていたが、患部に発光しているがん細胞を確認したことがあります。また、腫瘍と正常粘膜の境界がしっかり確認するのでがん細胞の切除には非常に有効です」とその優れた特性を解説する。

 膀胱がんの膀胱内再発率は30~70%といわれており、再発性の高いがんだ。進行すれば多臓器に転移することがあり、同時多発のケースでは小さくて見つけづらく、手術で取り残している場合もある。そのためPDDによって確実にがん細胞を取り切ることができれば、再発率は大きく減少する。

【すべてでPDDを実施しスタンダードに】

 膀胱がんの約9割は尿路上皮がんである。健康診断などで血尿が認められると、膀胱がんが見つかることが多い。

 ただし、血尿があっても必ずしも膀胱がんとは限らない。膀胱炎に伴う血尿や、尿管結石による血尿ということもある。そのため、尿検査の後、腎臓や膀胱のエコー検査、CT検査をおこなうのが一般的。ただし、初期の小さな膀胱がんはエコーやCT検査では見逃してしまう可能性があり、確定診断として膀胱鏡検査、さらに尿細胞診や膀胱MRI検査といった補足的な検査をおこなうケースもある。

 また膀胱がんの治療は通常、検査も兼ねた経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR―Bt)をおこなう。TUR―Btは、尿道から内視鏡を挿入し、電気メスで粘膜表面のがんを切除する方法で、表面のがんであればこれだけで治療が可能だ。

 一方、浸潤が進んだがんの場合は、膀胱の全摘出が検討される。その場合、従来は開腹手術が一般的だったが、最近は腹腔鏡が用いられるようになっている。同院でも昨年9月から腹腔鏡による膀胱全摘出術をおこない、低侵襲化が図られている。

 ただし、膀胱を全摘出すると、膀胱以外で尿を溜めておく場所が必要となるため尿路変向をおこなう。この尿路変向術は、回腸導管造設術や自排尿型新膀胱造設術などがある。

 例えば回腸導管造設術は、小腸の一部を切除してそこに尿路を再建し、へその横に尿の排出口をつくる方法。一方の自排尿型新膀胱造設術は、小腸を使ってお腹の中に膀胱の代わりとなる袋を作り、そこに尿を溜める方法だ。

 このように膀胱を全摘出したとしても日常生活はある程度送れるようになる。ただし、やはり全摘出となる前に確実に診断をし、的確にがん細胞を取り切るに越したことはない。そういう意味でも、膀胱がん患者にとって、あるいは今後膀胱がんになり得るすべての人にとってPDDが確立されたことは明るい光だ。

 同院では、適応のある患者のすべてでPDDを実施。多くの症例数を重ねることで今後のスタンダード治療として患者のメリットにつなげていく考えだ。

 清水医師は「同じ患者さんでも表面に隆起したがんと上皮内がんが混在しているケースや、人によっては50個以上の腫瘍が同時多発していることもあります。PDDを導入することによってがん細胞を確実に切除できれば、再発の減少につながる可能性は大きい」と大きな期待を寄せている。

 なお同院は、前立腺がんに対する定位放射線治療装置ノバリスを道内初導入するなど豊富な実績を誇る泌尿器科専門医院。尿路結石に対する経尿道的尿路結石除去術では全国3位、前立腺肥大症に対する経尿道的レーザー前立腺切除術等では全国2位を誇っている。

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