リベラルアーツを学び、地域のリーダーとなる人材に
――貴学の使命は。
鈴木 地域共創学群にふさわしい地域に役立つ人材の育成です。地域で役立つ人材はどの世界でも役立ちます。本学ではどこでも通用する知識が学べます。
――目指しているような人材は出ていますか。
鈴木 例えば、高砂酒造の岩崎純一さんは若手社員によるプロジェクトチームのリーダーとして新しい銘柄の日本酒を開発しました。また、出合祐太さんは北海道ベースボールアカデミーの代表理事として富良野でプロ野球選手育成に力を注いでいます。いずれも本学の卒業生で、地域のリーダーとして活躍しています。彼らに代表されるように多くの本学卒業生が地域に役立つ人材として活躍しています。
――リーダーの育成ですね。
鈴木 社会が求めているのは、基本となるさまざまな知識を身につけ、自分で物事を考えられる人間です。専門家ではなくても何かをする際に、どの専門家に頼めば良いかを知っていれば目的は達成できます。大学の4年間のうち2年間は教養教育を学び、残りの2年間で専門を学んで真のスペシャリストになるというのは、時間的に無理がありますので、それを目指す学生には大学院の道があります。
たくさんの専門家がいても目的地を示し、そこまで導いてくれるリーダーがいなければ物事は進みません。例えばハーバードに代表されるアイビーリーグの8大学も4年間で習うのは、リベラルアーツだけで、医者になりたければ卒業後に医学部に進みます。
――ゆえにリベラルアーツ教育に力点を置く。
鈴木 大学卒業後、就職した会社に定年まで勤める終身雇用の時代には、新卒就職が一生の生活の保証に直結していました。しかし、AIの発達により、従来型の専門職の多くはいずれAIに置き換えられる覚悟が必要になりました。
今後はいつ、どこで職を解かれても就職し直せる万能の就業力を身につけておかなければなりません。そのための教育が総合的教養教育、すなわちリベラルアーツ教育です。汎用性のある能力を身につければ、常に社会から求められる存在になります。
リベラルアーツは知の体幹です。体幹の部分を鍛えないと、いくら専門知を身につけても大きくは育ちません。この知の体幹を整えるというのが、大学時代に最も必要なことと考えています。
――4月に現代教養専攻をリベラルアーツ専攻に改組しましたね。
鈴木 リベラルアーツ専攻をすべての専攻の母船のようにしていきたいと思います。リベラルアーツ専攻の教育課程は他の12専攻の教育課程を包摂するように設計されており、大学全体の学びを、シームレスに橋渡ししていけるような仕掛けを組み込んでいるのです。
専攻した学生はあらゆる専門科目を組み合わせて学ぶことで、専門ごとに特有の分析手法・思考法に触れながら、超域的な思考の枠組みを培うことができます。
歴史を踏まえると学問の源流はリベラルアーツにあり、そこから
様々な学問が発生しています。ですからリベラルアーツという川の流れに棹さしながら、多様な支流である専攻も視野に収めつつ、入学から就職までの道程を航行していくのが理想と言えるでしょう。
――課題は。
鈴木 教職員と学生の意識です。学生は受け身ではなく、自ら学びに対して積極的になり、能動的に学ぶような意識を持ってもらいたい。一方の教職員もこれまで以上に積極的に学生に関わっていく必要があります。目指すのは教える側と学ぶ側の濃密な師弟関係の構築です。
教育は商売とは違います。金銭を支払いその対価に応じたモノやサービスを受ける行為ではありません。信頼・尊敬・慈愛に貫徹された師弟関係に立脚した行為です。大学でいろいろな教職員と会い、自分の手本になる人を見つける。教員でも職員でも構いません。その人の真似をしたり、その言動を参考にしながら学ぶ姿勢、生きる姿勢を身につけていってほしい。
信頼と親密さにあふれた師弟関係の中で互いに励起し合い、学ぶたびに変貌と成長を遂げ、大人として成熟し、社会へ巣立ってもらいたい。
教職員に対してはにこやかに挨拶するよう呼びかけています。教職員が率先して挨拶をすれば、それに呼応して学生も挨拶をするようになります。そんな明るいキャンパスを目指しています。
――コミュニケーション能力も磨かれますね。
鈴木 本来コミュニケーション能力とは、相手のことをわかってあげようとする心のことです。相手が的外れなことを言っていたとしても、想像力を働かせて相手の気持ちを理解し、互いの意思疎通を図る。これがコミュニケーション能力です。相手が何を言いたいかというのを考えられる人間であるべきです。
――志願者数は。
鈴木 2018年問題により、18歳人口が減少した中で、本学の志願者は昨年より増えていますし、偏差値も向上しています。
中には、第1志望ではない不本意入学の学生もいます。こうした学生に「想像してたよりもいい大学だった」と感じてもらい、周囲に伝えてもらう。そして、その声がやがては「良い大学」に変わっていく。こうした声が口コミで広がっていけば、将来的には志願者数も増えるはずです、
――短大については。
鈴木 文部科学省に申請中ですが、新学科として「こども文化学科」を19年4月に開設予定です。認可されれば幼稚園教諭二種と保育士の免許が取れるようになります。