「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

JTならではのブランドでかけがえのない”ひととき”を掲載号:2014年8月

photo

小泉光臣 日本たばこ産業社長

 日本専売公社が民営化され「JT」となって来年で30年。主力のたばこ事業は、いまやグローバルメーカーとして、国内のみならず世界中をフィールドに展開している。一方で喫煙者の数は減少傾向にある。小泉光臣社長に今後の戦略を聞いた。

世界第1位を目指そうじゃないか

――小泉さんは民営化4年前の1981年に、前身の日本専売公社に就職されているんですね。
小泉 85年にJTに衣替えするんですが、私が大学を卒業するころ、ちょうど専売公社を民営化すべきという議論が新聞紙上などをにぎわせていました。もちろん、政府も検討に入っている。就職を考える際、そういったダイナミックに変わっていくであろう組織に入ったら面白そうだなと思いました。ワクワク感がある。志望の動機は非常に単純でした。
――愛煙家とお聞きしています。1日にどれくらい吸われますか。
小泉 40本くらいでしょうか。仕事柄、いろいろな銘柄のたばこを吸いますが、プライベートで吸うのは20歳のときから「セブンスター」一筋です。
――やめようと思ったことは。
小泉 まったくありません(笑)
――現在、JTのたばこの銘柄は何種類くらい。
小泉 日本だけで114銘柄です。多いと思われるかもしれませんが、たとえばメビウスだけでも31種類あります。
――全部吸われた。
小泉 発売のゴーサインが出る直前くらいには必ず吸います。
――民営化して来年で30年になるんですね。まさにJTとともに歩まれてきた。
小泉 いろんなことがあったので、短かった気がしますね。
――確かにこの間、医療や飲料、加工食品などと事業を広げてこられましたが、やはり特筆すべきは小泉さんが主体的にかかわられていた海外のたばこ会社の大型M&Aだと思います。
i2小泉 私が全部やったわけではありませんが、プロジェクトの一員だったことは確かです。大きなものといえば2つ。99年にアメリカの「RJRI」という会社の海外部門を9400億円で買収しました。もう1つは2007年にイギリスの「ギャラハー」という会社。負債も含め2兆2500億円で買収しました。これ以降も中型の買収は年に1つずつくらいやっています。エジプトの水パイプの会社、スーダンのたばこ会社、ベルギーの手巻きたばこの会社等々。
――先日もイギリスの電子たばこ会社「ザンデラ」の買収を発表されたばかりですね。
小泉 たまたま弊社の場合は2つの大型買収でそれぞれを伸ばせました。各方面から、JTは大型買収にチャレンジして結果を出している、その秘訣は何かとよく聞かれることがあります。無理に理由をつければあれかな、これかなということはありますが、普遍化して導き出せるものはないと思っています。時代、業界、商品など条件は千差万別。毎回考えて、悩んでいくしかないというのが、正直な私の気持ちです。
私が言うのも口幅ったいですが、ともするとM&Aそのものが目的化するようなところもあります。重要なのはM&Aをして何をするかです。M&Aは財産を買うことです。商標、流通網、工場設備など、すべて財産。そして、最大の財産はそこに働く人です。これらの財産をどう有効に増やしていくか。M&Aはゴールではなく、そこからがスタートだということです。私自身、M&Aのたびに、そのことに強く意を払っています。
――そうした海外の展開も含めて、JTグループ総体の売上高は2兆3000億円を超えています。そして、海外たばこ事業がその約半分を占めています。
小泉 現在、JTは世界第3位のたばこメーカーです。日本を含め100を超える国籍の人々が、120カ国以上の国と地域で、約5万人が働いています。「世界ナンバーワンを目指そうじゃないか」と社員にもよく言っています。
――ライバルというと。
小泉 ラークやマールボロを売っているアメリカの「フィリップモリス」とケントやラッキーストライクを販売するイギリスの「BAT」(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)です。
――1位を目指す戦略は。
小泉 私の頭の中には2つあります。1つは地理的な拡大。まだ3位のメーカーです。進出していない国がありますし、あるいは進出していてもシェアの低い国もある。そうした地理的拡大の余地はまだまだあります。そこへもっと進出します。これが地理的拡大。
もう1つは、プロダクト領域そのものを拡大することです。たばこといえば普通シガレットを思い浮かべます。でも歴史を紐解くと、シガレットの歴史は130年くらい。もっとさかのぼればパイプとか葉巻とか、世界中にはさまざまなたばこの楽しみ方があります。将来、世界で安定的・継続的に成長していこうとするなら、シガレット以外のプロダクトも拡大していかなければならないと考えています。
世界一になるにはいろんなやり方があります。輸出ベースで伸ばす方法もあれば、海外に自前の工場を建てる方法もあるでしょう。もっとも有力な方法はM&Aです。エジプトやスーダンの会社を買収したのはアフリカへの地理的拡大のためです。プロダクト領域の拡大で買収したのが、ヨーロッパで著名なベルギーの会社。今回のザンデラ社もその一環です。

たばこの歴史や文化は人類の英知

――禁煙の流れが強まっている中で、国内のたばこ事業の現状は。
小泉 ここ10年くらい年率2・3%程度の割合で市場規模が縮小しています。この傾向は今後とも続いていくでしょう。そういう中で2013年度は製品販売数量を増やしました。15期ぶりの増加です。
――その要因は。
小泉 昨年2月に「マイルドセブン」を世界戦略の一環として「メビウス」というブランドに切り替えました。世界戦略の一環といいながら旧マイルドセブンの一番売れている市場は日本です。その事実を踏まえた上で世界同一ブランドにしていくのは、日本のマーケットだけをとると大変リスキーな選択でした。それでも「世界戦略の一環として自分たちも心を1つにしてやるんだ」という意識を、セールスマンだけでなく、その他のスタッフも全員が持って業務に取り組んでくれた。結果として、ブランド名を変えたことで日本マーケットそのものが活性化して、シェアを広げることができました。もちろん、北海道も対前年を上回っています。
――市場規模が縮小する中でライバルメーカーのシェアを奪ったと。
小泉 そうです。市場規模の縮小は、経営者として目をそらしてはいけないリスクだと認識しています。
――日本は喫煙者に厳しい世の中になりつつある。どう共存していきますか。
小泉 私どもの基本的なスタンスは、たばこを吸う人と吸わない人が協調ある共存社会をつくることです。喫煙者だけ肩身が狭いとか、非喫煙者だけ迷惑を被るということは、絶対あってはなりません。吸う人、吸わない人、選択肢が多くあって、その中でみずから選べるという社会が好ましいと思います。成熟した大人の社会というのはそういうものなのではないでしょうか。たばこはその一例で、すべてがマルかバツかという社会は息苦しい。
――とくに共存に向けて取り組まれていることは。
小泉 ハード面では、喫煙ブースや灰皿の設置など広い意味での喫煙場所に関して、弊社でできることはお手伝いしています。ソフト面では分煙コンサル。オフィスビル、飲食店、ショッピングモールなどに喫煙ルームをつくりたいが、どこにどのような設備をつくればいいのかという相談を受けています。すでにコンサルの実績は全国で1万件くらいあります。  また、社内には研究室もあります。たとえば、どこでたばこを吸うと煙がどう流れていくかとか、どこに換気扇を設けると効果的だとか、照明の温度と床の温度がどれくらい違うと上昇気流が発生し、その際、煙はどう流れるかというような研究もしています。
――私はたばこを吸いませんが、そんな私でも喫煙は文化の一面もあって、一概に排除していいものとは思えません。
小泉 コロンブスがアメリカ大陸を発見したのが1492年。その後、先住民が吸っていた、たばこがヨーロッパに伝来して500年以上たちます。その間に先人たちが喫煙文化を育んできたという事実は重いと思います。たばこは香りや味を楽しんだり、場合によってはリラックスをするために、逆に集中感を高めるために吸うこともある。人類の英知で培ってきた文化を、ネガティブなところだけを強調して、たばこの歴史や文化を一様に否定してしまうのはいかがなものかと正直、思います。
産業として考えても重要です。世界中で葉たばこをつくっている第1次産業、メーカーの第2次産業、そして流通の第3次産業と、多くの人が従事しています。私自身もたばこ会社の一員として、誇りを持って仕事をしています。お客さま一人ひとりのかけがえのないひととき、心からくつろげるひとときを提供するために、これからもJTならではのブランドをお届けしたいと思っています。

1000億円を超える道内の売上高

――医療、飲料、食品の各事業は。
小泉 ビジネスの中核がたばこ事業というのは大きく変わりませんが、経営を継続的に成長させるには次世代の利益基盤に資するような事業を育てていくのも私の大きな使命です。
医薬事業はすでに20年ほどの歴史があります。13年度には、世界の中でもファーストインクラスといわれる新薬の承認を4つ得ました。新薬を含め開発には莫大な資金と時間がかかります。ここにきてようやくそれが花開いてきている。非常に楽しみなステージに入ってきていると手応えを感じているところです。
飲料事業は「ルーツ」というコーヒーと「桃の天然水」の2つしかありません。次の中核となるブランドをつくっていきます。
食品事業は、旧加ト吉の「テーブルマーク」という子会社が黒字基調になりました。小麦などは輸入に頼っていますから円安の影響は厳しかったのですが、それでも黒字にできた。今後はもっと高利益率にしていきたいと思います。赤平市には工場もあります。
――結構、北海道との関係が深そうですね。
小泉 深いと思います。北海道のたばこの売り上げは優に1000億円を超えます。約1万店のお得意さまもいらっしゃいますし、北海道支店にもたばこ事業だけで約200人の社員がいます。ものすごく重要なマーケットです。札幌・大谷地には、たばこの物流基地があり、全国各店からのファクス注文は、大谷地で受けています。
先の赤平市の工場では、道産のジャガイモ、カボチャを使ってコロッケをつくり、道外に出荷。「サンジェルマン」というベーカリーショップも道内に65店舗くらい展開しています。
弊社は企業スポーツとして男女のバレーボールチームを持っています。その夏合宿は毎年、芦別市でおこなっています。積丹での森林保全活動の取り組みを含め、市民のみなさんのボランティアで支えていただき、本当に心より感謝しています。

=ききて/鈴木正紀=