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Interview

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金融機関と連携し経営指導を強化掲載号:2012年2月

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吉澤慶信 北海道信用金庫保証協会会長

 景気の波をもろに受けやすく、財務基盤が脆弱な中小企業にとり、信用保証協会は資金繰りの面で欠くことのできない存在だ。リーマンショック後の緊急保証制度が終了した後、新たな対応で中小企業支援に奮闘している。

経済が急激に後退したとき、北海道信用保証協会は積極的に保証の付与を実施。保証債務残高は過去最高を記録し、1兆円を突破した。現在は保証承諾自体は減少傾向にあるが、一方で企業に代わって借金を金融機関に支払う代位弁済が増加中だ。血を流しながらも中小企業の支援 に取り組んでいると言っていいだろう。
今後の中小企業金融の動向などについて昨年暮れ、道信用保証協会の吉澤慶信会長に聞いた。
――2011年について保証実績などから総括すると、どのような年だったとお考えになりますか。
吉澤 結論から申し上げると、総じて厳しい1年だったという認識です。11月末現在の集計結果をもとに 項目別で見ますと、保証承諾については、2年5カ月続いた緊急保証制度(08年秋の世界的な金融危機を受けてスタートした中小企業への運転資金融資を促す 時限的な措置)が11年3月末で終わり、4月以降は保証の申し込み、承諾が前年をかなり下回るペースで推移しています。前年比15%マイナスです。
その結果、緊急保証制度がスタートしてから増えた保証債務残高は、09年2月からずっと1兆円の大台を維持してきましたが、9月に割り込みました。11月末で約9840億円、前年比で6%減です。昨年度末時点と比べると500億円減少しました。
――代位弁済については。
吉澤 逆に代位弁済は増加傾向にあります。10年度は、金融機関に返済条件の緩和を促す中小企業金融円滑化法が施行された効果により、低い水準でした。しかし、11年度に入ってから増加に転じています。11月末時点で前年比14%増の192億円です。
――今年度も金融円滑化法が延長されたにもかかわらず、代位弁済額が増えているということですが、なぜでしょうか。
吉澤 代位弁済額の増加はある程度、予想はしていました。十数年前、銀行の貸し渋り、貸し剥がしが問題 視されたときに実施された〝マル特〟(中小企業金融安定化特別保証制度)のときも、制度終了後にその反動で代位弁済が増加しました。今回、緊急保証制度が 終了し、同様の現象が起きると考えていたからです。
――金融円滑化法の効果が薄れてきているのではないかという見方もあります。
吉澤 金融円滑化法にもとづく返済条件の緩和案件は依然として多い。現在も毎月600件を超える案件を了承しています。条件変更を了承した債務残高は11月末時点で約702億円。11年度中の条件変更承諾額は現在のところ約470億円で、前年比で10%強の伸びです。
そもそも金融円滑化法がスタートした10年度は、09年度比で2倍というハイペースで条件変更の了承額が膨れ上がりました。ですから、今年度は緩やかなペースと言えますが、金融円滑化法施行前と比べると、非常に増えていると言っていいでしょう。
そうしたことから考えますと、金融円滑化法の効果は依然として大きいといえるでしょう。中小企業を取り巻く経営環境はご存じのように大変厳しい。返済緩和でしのいでいこうとする企業経営者は多い。

本道経済にとって明るい材料もある

――12月27日、金融庁が金融円滑化法を1年間再延長する方針を固め、発表しました。再延長については異論もありましたし、正直なところ驚きました。金融界では問題を先送りしただけで、隠れ不良債権が増えるだけという声もあります。率直な感想を。
吉澤 実はその前日、全国信用保証協会連合会の本部に動きを確認し、金融円滑化法について金融庁が翌日、記者発表をすると聞いていました。ただ、再延長するかどうかについては記者発表の直前まで確信は持てませんでした。
いろいろなご意見はあるのでしょうが、制度がなくなって『明日から約定通り返済をしてくれ』と言われても困るところは多いでしょう。中小企業を支える立場としては再延長は有効な措置だと思いますよ。返済条件の緩和で、少しでも多くの中小企業に立ち直ってもらいたい。
――再延長を受けて、今後の中小企業向け金融はどうなると思いますか。
吉澤 金融機関にとって中小企業への融資はなかなか大変だと思います。北海道の景気は長い間、低迷しています。そこに東日本大震災があり、経済全体が重苦しい雰囲気になっています。なかなか企業のマインドが温まらない。
中小企業の資金需要が低く、特に前向きな事業資金のニーズは極めて少ない。結果的に、数少ない優良な貸し先をめぐって低金利競争が起きています。
金利が低いことは借り手にとってはいいことですが、根本的な問題として、日本経済が好転する材料はなかなか見当たりません。
また、今後、道内経済に大きな影響を与えるTPP問題などもあります。金融円滑化法が再延長されても、道内の中小企業は、昨年のような厳しい金融事情になると思っています。
――金融円滑化法は、いわば延命措置です。再延長しても経済が回復しないと、中小企業の復活は望めません。
吉澤 そ うですね。具体的に申しますと、当協会が条件変更を承諾した案件の約40%は、1年以内返済をストップするというものです。しかし、その間に、各企業の業 況が回復しないと、返済を再開するメドが立ちません。すでに2度目の返済条件の緩和を金融機関にしてもらっている中小企業も増えてきているという認識で す。
ただ、暗い話ばかりではありませんよ。北海道新幹線の札幌延伸について認可着工が決まりました。道経連や道、札幌市、帯広市、函館市、江別市が国に提案していた「フード・ コンプレックス国際戦略総合特区」も認められました。
本道経済にとって久々の明るい材料といっていいでしょう。こうしたビッグプロジェクトが北海道の経済活性化につながっていけばと期待しています。

大震災で急増した宿泊業者の扱い

――今年度を振り返るとき、東日本大震災は避けて通れない話題です。道内経済にも大きなダメージを与えました。どのような対応をとられたのですか。また、震災関連の保証の推移は。

吉澤 大震災直後に特別相談窓口を本部、各支店に設けました。4、5月ぐらいは相当数の相談が寄せられましたが、夏以降は落ち着きましたね。
震災関連の保証は大きく3つあります。道内で言えば釧路や函館が津波の被害を受けましたが、こうした直接被害については災害関係保証制度があります。主に 被災企業の事業再建を狙いにしたものです。これは震災直後は大変多くの利用がありましたが、現在はひと段落しており、実績としては72件5億5000万円 です。
風評被害を含め、間接的な被害を受けた企業については国が東日本大震災復興緊急保証を設けました。特に北海道では観光関連産業が大きなダメージを受けまし たね。実績としてはこれまでに264件、64億8000万円を扱いました。ただ、全国の数字は1兆5000億円。全国比でみると、0・4%。そんなに大き くはない。
もう1つは、従来からあるセーフティーネット制度。こちらも活用されています。この3本トータルで、震災を要因とした保証実績は1245件、190億5000万円です。
――業種によって特徴はありますか。
吉澤 やはり数字に表れてくるのは先ほども申し上げた観光関連産業ですね。海外からも含め、道内への観光客が激減しました。今は持ち直す動きにあるものの、完全な回復にはいたっていない状況と聞いています。
ホテルなど宿泊業は保証の承諾が前年の2倍弱。代位弁済額でいうと前年の3倍にもなりました。影響が大変大きかったことが数字からも把握できます。
――他の業種では。
吉澤 大震災とは直接関係はないのですが、当協会の場合、もともと建設、卸、小売の3業種でかなり高いウェートを占めています。3業種を合わせると承諾と残高ベースでともに約60%、代位弁済では約70%にもなります。
この3業種の中で、保証残高と代位弁済を比べると、建設と小売については保証残高より代位弁済の方が高い。ということは、建設と小売はかなり経営環境が厳しいと推測できます。

6月から導入したモニタリング制度

――金融機関が日銀成長ファンドなどを活用し、病院や農業分野への融資に注力していますが…
吉澤 医 療分野については実績の推移を見る限り、特別な動きはありませんね。それから農業分野はそもそも信用保証協会の取扱対象にはなっていません。しかし、農業 分野への融資保証ができないのか、中央の方で検討している動きが以前からあります。農業分野は農林水産省の所管ですから、そこと協議、連携しながら可能性 を模索していると聞いています。
――セーフティーネット保証へのモニタリング制度を導入されました。これはどういったものなのですか。
吉澤 セー フティーネット保証の対象となっている中小企業に対し、金融機関と保証協会の連携をさらに密にし、継続的な経営支援の仕組みを構築していこうという狙いが あります。6月以降、セーフティーネット保証を利用した中小企業を対象に金融機関が企業を訪問したうえで、業況報告書をまとめます。信用保証協会はその報 告を受け、一緒に支援をします。
モニタリング期間は上半期、下半期ごとで、半期終了後2カ月以内に金融機関から保証協会に報告を提出していただきます。保証を受けた次の半期からモニタリ ング対象期間になりますが、初回の報告書の提出は今年4月以降となっており、まだ最初の報告書も出ていません。各社の業況報告を受けた上で、金融機関、商 工会議所などの関係機関と連携・協議しながら、必要に応じた支援を検討していきます。
――どんな経営支援メニューを想定しているのですか。
吉澤 返済条件の緩和措置などの金融面の支援だけではありません。一歩踏み込んだ経営指導などが考えられます。数年前から当協会でも中小企業診断士の資格を保有する職員を意識的に増やしております。金融面と経営指導という両面で、中小企業をサポートしていくということです。

=ききて/野口晋一=