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Interview

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成功の秘訣は着眼の中にストーリーができていること掲載号:2009年5月

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三村 孝子 NTT―ATエムタック代表取締役社長

(みむら・たかこ)1946年7月26日、空知管内長沼町出身。69年小樽商科大学卒業後、技術者としてNEC子会社などでソフト開発に従事。70年結婚。73年から10年間は専業主婦。82年からアルバイトでソフト開発業務を再開。84年エムタック設立。92年家屋評価システム販売開始。2008年300自治体ユーザー達成。NTT?ATに株式譲渡
男性経営者が圧倒的に多いIT業界にあって、10年間の主婦業の後、ある特定分野において全国シェア25%を占める企業へと育てた女性がいる。北海道・長沼町出身の三村孝子氏だ。鋭い着眼で、受注開発から自主開発へ転換。その成功の軌跡を聞いた。

先端技術は10年単位でガラリと変わる

――三村さんは小樽商大出身ですが、当時同大には女子学生自体が少なかったのでは。
三村 全学で先輩は2人だけでした。私の同期が7人。次の年が10人くらいと、徐々に大学が華やかになり出しました。そう考えると私が入学した1965年が女子学生の増えたスタートの年だと思います。
――卒業後は。
三村 卒業の翌年、結婚をして東京に出ました。4年くらい東京でソフト開発の仕事をしていましたが、妊娠を機に仕事は辞めました。
――その後は専業主婦を。
三村 10年間主婦業をしていて、その間にもう1人子供を授かりました。下の子が小学3年になったころ、当時は技術者の足りない時代でしたから、アルバイトでもと2、3から声をかけられて、また仕事に復帰しました。82年です。
――その2年後には会社を立ち上げていますね。
三村 夫もIT関係の仕事で、当時は同業他社に就職しにくい時代でした。企業秘密が漏えいしたら困ると か、そんな理由です。それで夫もやりにくいだろうなと。じゃあ自分でやってみようと84年12月に「エムタック」を設立したんです。いまにして振り返る と、いったん主婦におさまった人間が創業するんですから、ずいぶんと冒険をしたものだと思います。
――ご主人のこと以外にも、三村さんを突き動かしたものがあるのではないですか。
三村 当時、国立大学に入る女性が少なかったから、何となく義務感を背負ったのかもしれないし、女性が家庭を持っての再就職がむずかしい時代だったというのも理由かもしれません。
――立ち上げは何人で。
三村 5人でした。しばらくして10人。今は25人近くで、1つの業務ソフトに20人くらいの規模がベスト環境だと思います。
――創業時の苦労は。
三村 創業から5年間はソフトの受注開発でした。でも不安定な受注、知識・技術力が蓄積されない、企画営業ができないなど、このままでは成長は無理。そこで自主開発製品を持つことの試行錯誤をはじめました。
――そこで行き着いたのが家屋評価システム。
三村 早々にそういうシステムにめぐり合ったんです。当時、家屋評価システムはオフコン、EWSなどの 中・大型機で計算していたんですが、これをパソコンで展開すれば優位に立てると判断しました。実際、ウィンドウズベースのパソコンの普及が急速に進んだ時 期でもありました。その波にうまく乗れた。
――先見の明があった。
三村 先見があったかどうかは、まあそうかなとは感じていましたけど(笑)。IT技術は5~10年単位 でガラリと変わるのが特徴です。この分野は必ずしも先発者有利とはいえず、むしろ後発者有利という現象があると考えています。例えばグーグル。96年設立 のヤフーが先発ですが、その2年後に設立されたグーグルのほうが世界を制覇してしまった。
その時々に大きな波があって、今この波なら近い将来はこうなる。市場がどういうものを求めているのか。また数年試行錯誤をやっていれば、おのずと次の道 が見え隠れする。タイミングごとに良い発想ができるには、自分の着眼の中にきちんとストーリーができていないと成功はないのかもしれませんね。

シェア25%を占める家屋評価システム

――具体的にはどういうシステムなんですか。
三村 新しく建物が建ったときに使用する。総務省から出ている点数に基づき、その建物の評価を行い、課税の基本額を出すという部分がメーンとなるシステム。大変お堅い内容ですよ。
――課税ということは、ユーザーは自治体。
三村 そうです。自治体という小規模市場を攻めれば、大手は主力となる経営資源を投入してまで攻めてはこない。まさに自治体向け個別業務の製品は中小企業が参加する市場だと思いました。はじめたとき全国に3000自治体ありましたが、合併でいまや1800弱です。
――マーケットシェアとしてはどれくらい。
三村 導入できる自治体は1500を切るくらいです。
――それらの自治体には、家屋評価に関するソフトは導入済みなんですか。
三村 7割は入っていると思います。一方で、大きな自治体でも入っていないところもある。当社のシステムは300自治体を超えて導入されています。
――そうすると25%くらいのシェアを占めている。
三村 そうですね。当社は専業でやっている強みから、早期に40%までもっていきたい。
――開発は三村さんが。
三村 人材確保に関しては、大学講師クラスの中国人技術者の採用を開拓できたので、優秀な少人数での開発体制ができました。いまから15年くらい前の話です。当時は、ほとんどの中国人技術者はアメリカか日本に転出するしかなかったという時代背景があります。
――昨年、NTTグループの技術的中核企業「NTT-AT」の完全子会社になりましたね。
三村 はい。全株を売却しました。IT業界は考え方が過去にとらわれていたら前に進まないし、遅れてし まうこともある。60歳になる前から会社の将来のあり方を考えてきました。お客さまもいるし社員もいる。何がこの両者にとってベストなのか。ありがたいこ とに同業他社からもお話をいただき、諸先輩の方にも相談させていただきました。そしてNTTグループのお世話になることにいたしました。次の世代に柔軟に 移行していき、25年の社長業から身を引きます。引退後は次のテーマを楽しくやっていこうと計画中です。

=ききて/構成鈴木=