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Interview

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北海道の発展に“ゼンリョク”貢献掲載号:2019年11月

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藤井裕 北海道電力社長

今年6月、藤井裕氏は北海道電力社長に就任した。電力自由化という競争環境の中、同社は総合エネルギー企業を目指す。「ゼンリョク宣言 ほくでん」というスローガンに込めた思いとは。今後の経営戦略を藤井氏に聞いた。

入社の夏“陸の孤島”で決死の作業

藤井裕氏は1956年生まれ。宇都宮大学卒業後、1981年4月に北海道電力に入社。99年3月旭川支店電力部送電グループリーダー、03年8月工務部工務企画グループリーダーなどを経て、05年3月釧路統括電力センター所長。

07年6月室蘭支店長、人事労務部長、上席執行役員を務め、15年6月に取締役・常務執行役員に。16年6月取締役副社長・副社長執行役員、18年4月取締役副社長・副社長執行役員・送配電カンパニー社長を経て、19年6月から現職。以下、藤井社長との一問一答。

   ◇    ◇   

――美唄市のご出身です。

藤井 中学までは美唄市内、高校は岩見沢市へ通学しました。実家は野菜や米を作る農家で、私が幼い頃は、農作業用に馬を飼育していました。朝は農作業を手伝い、放課後は寄り道をして友達と「三角ベース」を楽しんでいましたね。

――北電入社の動機を教えてください。

藤井 宇都宮大学では電気科を専攻していました。大学で学んだ電気に関する専門知識を生かしたい。そして故郷の北海道に貢献したい、という思いから、道内での就職を決めました。

――北電入社後は、どのような仕事に携わってきましたか。

藤井 初任地は当時の帯広電力所保修課保修第一係で、発変電の担当でした。主に十勝管内然別川水系の水力発電所の運転管理や、系統運用業務に従事しました。

着任当初は、現場でトランス(変圧器)を見て「これが本物のトランスか」と、そのスケールに驚くなど、戸惑うことが多かったです。

入社した81年の夏は、北海道が記録的豪雨に見舞われ、奈井江発電所が冠水し火災が発生しました。十勝川水系上岩松発電所も発電機のコイルまで水没するなど、甚大な被害がでました。

私が担当していた然別第一発電所では、バケツをひっくり返したような猛烈な雨が降り止まず、みるみる水かさが増えたため、手動で沈砂池のゲートを開けるなど、決死の作業にあたりました。

豪雨により、事務所との連絡手段も寸断され、道路も不通、現場はまさに陸の孤島となりました。非常食はわずかしかなく、不安でいっぱいでしたが、幸い翌日には天候が回復。係長が山を越えて助けに来てくれたときの安堵した思いを、今でも鮮明に覚えています。

まさに「電力の安定供給を体で覚えた」経験であり、「現場の人々の熱い想い」が強烈に胸に刻み込まれた瞬間でした。

また、現在は電気モーターで制御している水力発電所の大半の機器は、当時、油圧で制御していたため、“油漏れ”や“にじみ”の有無を、全身油まみれでチェックしていました。新品の作業服が、たった一日で油まみれになるんです。油の匂いや、機械の音など、まさに五感をフル活用した業務でした。

発電所は、発電した電気を変圧して送電線に流すため、発電に加えて、変電、送電の知識も必要でした。入社間もない自分にとっては覚えることがあまりにも多く「半端な気持ちでは務まらない」と、覚悟を決めた記憶があります。

ZEBで地域貢献活性化に寄与する

――「ゼンリョク宣言 ほくでん」というスローガンを掲げています。

藤井 当社は、総合エネルギー企業としての更なる成長に向けて、新たなスローガン「ゼンリョク宣言 ほくでん」のもと、イメージを一新した広報活動をおこなっています。

このスローガンは、当社が創業以来持ち続けている「北海道の皆さまに明るく、快適な北国の暮らしをご提供し、北海道の将来の発展に全力で貢献したい」という思いを込めたものです。

北海道に縁のある女優の芳根京子さんと俳優の音尾琢真さんをそれぞれ当社社員役とお客さま役として起用しています。テレビCMのほか、札幌の地下街における壁面広告や、札幌ドームでの吊り下げ広告など、さまざまな場所でPRしています。

スローガンや広告に対して、ツイッター上では、「芳根さんがかわいい」「CMを見て癒された」などの声が寄せられているほか、当社主催のイベントでは、「『ゼンリョク宣言 ほくでん』というフレーズが耳に残る」とのご意見もいただいています。私自身も、変わろうとしている「ほくでん」への期待を肌で感じているところです。

――電力業界は小売全面自由化という新たな時代に突入しています。販売活動への取り組みを教えてください。

藤井 引き続き、お客さまに直接お会いさせていただく「対面営業」を中心として、お客さまのご使用状況に応じた料金プランの提案のほか、法人向けの電化提案、省エネ・省CO2に関する診断・調査、オーダーメイドのエネルギーシステム提案に、力を入れて取り組んでいきます。

お客さまへの省エネ提案の1つがZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)コンサルです。ZEBとは快適な室内環境を保ちながら、高断熱化、日射遮蔽、自然エネルギーの利用、高効率設備により、できる限りの省エネルギーに努めた建物です。

太陽光発電などによりエネルギーを創ることで、年間で消費するエネルギー量が大幅に削減される事務所、学校、病院、ホテルなどが該当します。

当社は電力会社ではじめて「ZEBプランナー※」に登録されました。エネルギー使用状況の分析やZEBに必要なシステムのご提案、補助金申請など、設計から竣工後の設備に関する運用改善まで、お客さまのサポートをおこなっています。

これまでのコンサル実績として、道内初のZEB商業施設となる江別蔦屋書店や北海道で初めてのZEB庁舎となる美幌町役場庁舎などがあります。現在も多数の物件についてコンサルを継続しており、お問い合わせをいただいております。

国の施策であるZEBの導入事例は全国で200件程度あるものの、北海道では5件に留まっています。北海道全域でZEBに取り組む意義は大きいと考えており、総合エネルギー企業のトップランナーとして運用面も通したZEBの実現をサポートさせていただきます。

泊再稼働は電力の安定供給に不可欠

――泊発電所の再稼働については。

藤井 エネルギー資源の乏しいわが国では、原子力、石炭、天然ガスや、水力をはじめとした再生可能エネルギーなどのさまざまな電源をバランス良く活用していくことが必要です。国が策定したエネルギー基本計画においては、原子力発電を将来にわたる重要なベースロード電源と位置付けています。

当社においても、原子力は、燃料供給の安定性、長期的な価格安定性を有し、発電時にCO2を排出しないことから、重要な基幹電源として不可欠であると考えています。

さらに火力発電所の経年化が進んでいます。北海道内における電力の安定供給を確保しつつ、競争力のある電源構成を実現して低廉な電気をお届けするために、安全確保を大前提とした泊発電所の早期再稼働が必要と考えています。

――泊発電所の再稼働に向けた審査の状況を教えてください。

藤井 新規制基準の適合性審査については、現在残っている主な課題の中でも「発電所敷地内断層の活動性評価」を最優先課題に位置付けて対応を進めています。これまでの審査会合で、原子力規制委員会から「敷地内断層のうち、1条の断層について、当該断層の開削調査箇所において示されている現有のデータでは、当該断層の活動性を否定できない」旨の指摘を受けました。

新たな追加調査として、開削調査、ボーリング調査、および反射法地震探査の現地での作業、ならびに各種観察および分析を9月末までに実施しました。現在は、追加調査結果の取りまとめを行っており、当初の予定通り10月下旬に結果を説明したいと考えています。

北海道の持続的発展のために

――北海道にとって、どのような企業であり続けたいと考えていますか。

藤井 当社を取り巻く事業環境は大きく変化していますが、「北海道の持続的な発展なくしてほくでんグループの発展はない」という考えは不変です。

今後は電力供給に限らず、ガスも含めてエネルギーに関するさまざまな課題解決のお役に立つことで、地域の活性化に貢献していきたいと考えています。地域が活気づくことで、そこから新たな需要、サービスのニーズが生まれてくると考えており、今後も、地域の活性化と総合エネルギー企業としての発展の相乗効果を図っていきます。

そのためには、「お客さま、地域があっての我々」という「感謝」の気持ちと「謙虚さ」を忘れず、お客さま、地域および社会がほくでんグループに対して何を求めているのか、常にアンテナを高く持ち、世間の風を肌で感じ取ることが大切だと思っています。

昔も今も、私たちの「お客さまへ電気を送り届ける」という想いは、どの部門においても先輩方から脈々と受け継がれています。

私は「人に恵まれた」と心の底から感じており、自らの経験から「周囲の人々と切磋琢磨して、刺激を受けて、生き方を高めていくことが大切」と実感しています。われわれが地域の皆さまのお役に立ち北海道が発展し、その結果として当社の発展にも繋がっていけばありがたいです。

――最後に趣味などをお聞かせください。

藤井 子供たち(1男1女)が小さい頃は、家族でよくスキーに行きましたね。最近の週末は、妻と近所をウォーキングすることが多いでしょうか。まとまった時間がなかなか取れませんが、合間をみて読書もします。最近読んだ中では、山崎豊子さんの「約束の海」に強い感銘を受けました。

=ききて/前田圭祐=