「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > 法律相談

Lawyer

このエントリーをはてなブックマークに追加

法律相談掲載号:2018年3月

photo

 
弁護士 前田 尚一
まえだ・しょういち/1959年1月22日岩見沢市生まれ。
北大法学部卒。93年前田尚一法律事務所開設。
UHB「のりゆきのトークDE北海道」、STV「どさんこワイド」出演。
JR札幌病院倫理委員・臨床研究審査委員。
元・北海道大学法科大学院実務家教員

第64回 就業規則の変更は慎重にすべし!

 顧問先からの紹介で訪れたA社長との談話です。

 A社長 やっと会社が軌道に乗ってきました。ずっと売り上げばかりに目を向けてきましたが、会社としてのレベルアップも考えたい。そこで社内規定の整備をしたいと考えています。まずは就業規則の全面改訂をお願いしたい。

 前田 なぜ就業規則なのですか。

 A社長 現在の就業規則は、助成金を受給するために、専門家が持ち込んだひな形を手直しして労働基準監督に提出したものです。私自身、目を通したこともありません。会社の将来のあるべき姿、ビジョンを明確に打ち出した就業規則を改めてつくりたいのです。

 前田 立派なお考えですが、就業規則が企業と従業員のルールブックであることをきちんと押さえた上で、手続きを進められたほうがよいかと思います。

 A社長 具体的には。

 前田 例えば、労働時間には法律上、1週40時間、1日8時間という縛りがあります。業務の繁閑や特殊性に応じて時間労働を配分でき、シフト制を活用する場合などに有用な「変形労働時間制」や労働者が主体的で柔軟な勤務をする「フレックスタイム制」「事業場外労働のみなし制」「裁量労働制」などを活用するためには、就業規則または労使協定などについて法律上の条件を整備しておく必要があります。きちんとしておかないと、労働時間の縛りは満たしており、総時間数は同じであっても時間外割増手当を支払わなければならない事態になるのです。

 A社長 今は労使一丸となって会社の成長を目指していますから、実際的な規定は従業員と話し合いながら、随時整備していけばよいのではないでしょうか。

 前田 いいえ、従業員が増えると、すべての面で価値観が一致することは非現実的でしょう。会社にとって合理的と思われる事項についても、容易に合意がとれなくなります。政府の進める「働き方改革」は労働者の権利意識をますます高めていくでしょう。

 労働基準法では、就業規則の作成・変更は労働者の意見聴取義務があっても、同意をとる必要はありません。しかし、従業員が増えれば、そのコンセンサスなしに労働条件にかかわる新たな規定を創設するのが困難となることも予想されます。現在、運用している内容については、現時点で法律に則った対応をしておくべきです。

 就業規則それ自体の変更も、手続き上、労働者の同意は必要ありませんが、判例や労働契約法では労働条件を不利益に変更することは容易に認められないということも頭においてください。助成金受給のために形だけのつもりで作成した就業規則……もしかすると大変な内容かも知れません……。自己判断せず、事前に私に相談したことは正解でしたね。

前田尚一法律事務所:
フリーダイヤル 0120・48・1744
http://www.smaedalaw.com/