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法律相談掲載号:2014年5月

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弁護士 前田 尚一
まえだ・しょういち/1959年1月22日岩見沢市生まれ。
北大法学部卒。93年前田尚一法律事務所開設。
UHB「のりゆきのトークDE北海道」、STV「どさんこワイド」出演。
JR札幌病院倫理委員・臨床研究審査委員。
元・北海道大学法科大学院実務家教員

第34回 〝ねつ造〟から真実の全貌を考えてみる

――「STAP細胞論文ねつ造疑惑」で小保方晴子さんに同情する人が少なくないようです。
前田 小保方さんの「STAP細胞の発見自体がねつ造であると誤解されかねず、到底容認できません」という表明は、理化学研究所(理研)調査委員会の最終報告に対する限定した意見表明であり、同情するのは適切ではありません。不適切なものを証拠とした論文を提出したことは事実ですから。
冤罪事件を考えてみましょう。最近では、死刑確定後、48年ぶりに再審開始が認められ、死刑囚のまま釈放された「袴田事件」が報道されています。裁判所が決定理由の中で「ねつ造されたものであるとの疑問は拭えない」と批判したことが注目されています。
ただ、容疑者が無実だと分かっているのに犯人に仕立て上げるということはまれです。どの分野にも難問を常人には理解しがたいプロセスで解明するスペシャリストはいます。つまり、独自の究明スキルを備えた刑事がいてもおかしくはなく、常に現場に直面しているという点では、机上で培われる裁判官の真実探求能力を超越している場合もあるかもしれません。
しかし、どんなに能力を備えた〝スペシャリスト〟でも間違いを犯します。能力が高い人ほど、揺るぎない自信と「世の中を背負っている」という過度の使命感があり、不具合があっても正当化してしまう傾向にあるともいえます。
このような本性が人間にはあるからこそ、裁判では無罪の推定を働かせながらも、価値のある証拠を基に一定のハードルを超えなければ有罪としない、という仕組みがあります。科学の世界の研究者についても同じだと思いませんか。研究者の発見、発明が真実存在するかどうかは、その研究者が優秀かどうかではなく、証拠によって決めなければ次の進歩・発展には連動していきません。
――STAP細胞には大きな期待をもっていたのですが…。
前田 それは、証拠の裏付けのない論文が提出されたこととは別問題として考えるべきです。もちろん、小保方さんが理研との関係をどのように決着をつけるのかも全く別の問題です。
結局私たちは、真実を判断するに十分な資料のない中で、物事を判断しています。生のまま目の前に示されることはなく、取捨選択され構成された事実を受け止めることしかできません。私たちの結論自体が、実は真実と離れたところにある、と考えた方がよいでしょう。袴田事件でいえば、味噌タンク内で犯行着衣として発見された衣類は、サイズからして容疑者が着用不可能にもかかわらず、検察側は「味噌づけになってサイズが縮んだ」と説明していた事実を知らなかった人は多いはずです。

前田尚一法律事務所:
フリーダイヤル 0120・48・1744
http://www.smaedalaw.com/