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池田熱処理工業

真空パージ式ガス浸炭炉(奥)と焼き戻し炉(手前)

熱処理と機械加工に新型設備を導入。次代のニーズに応える

熱処理とは、耐摩耗性や耐久性向上のために金属に熱を加えて硬化させること。自動車のクラッチ板を中心に産業機械の歯車や農機具用のシャフトなど、さまざまな部品加工に用いられており、経済産業基盤を支える技術といえる。

この分野で道内シェアの9割を占めるのが「池田熱処理工業」だ。1961年の創業以来、金属部品の熱処理加工を主事業とし、道内外の自動車部品や建設機械、農業機械メーカーなどから信頼を獲得してきた〝いぶし銀〟の企業だ。

長年培ってきた技術と経験、豊富な設備で顧客ニーズに応えるほか、生産性向上やコスト削減、環境対策につながるとして新たな機器を続々と導入している。

2022年6月に稼働した「真空パージ式ガス浸炭炉」は従来機に比べ、熱処理作業時の安全性に配慮されている。CO2の排出量も低く、環境にも優しいのが特徴だ。

熱処理分野を統括する森田祐貴氏は「EV(電気自動車)時代の到来に先駆けて、昨年は各種ギアなど歯車の製造向けに『CNCホブ盤』も導入し、より高精度のギアが製造できるようになりました。EVはガソリン車よりも回転数が高いため、耐久性などが求められるためです」と導入の理由を語る。

一方、機械加工分野でも生産体制を強化。22年11月に「マシニングセンタ」と「CNC旋盤」を導入し、主に油圧シリンダーを製造している。

同分野の中心的存在である髙嶋一広氏は「当社の油圧シリンダー製造は、大手メーカーと異なり、小ロット生産と短納期が可能です。オーダーメードのため建機用の特殊油圧シリンダーなどに需要があり、本州向けに販路を拡大しています」と話す。

品質管理にも投資。検査に用いる「デジタルマイクロスコープ」も新型に更新している。

これら技術力を生かし航空機部品の製造も目指す。22年には同社など道内企業3社が主導して「札幌エアークラフトサプライヤーズクラブ」を結成した。札幌丘珠空港周辺を航空部品産業の集積地とする計画だ。

デジタルマイクロスコープ
CNCホブ盤
マシニングセンタ(上)とCNC旋盤(下)
髙嶋一広氏(左)と森田祐貴氏(右)