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札幌大学・札幌大学女子短期大学部

大森 義行学長
(おおもり・よしゆき)1981年室蘭工業大学工学部電気工学科卒業。83年北海道大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。86年博士後期課程修了。工学博士。97年札幌大学に着任し、同大学及び女子短期大学部副学長、同大学孔子学院副学院長、同大学理事・評議員などを歴任し、19年より現職。

道内外の大学、高校、地域と連携強化。多様な学びを提供

――他大学との連携を進めていますね。

大森 長野県の松本大学と交流を深めようと考えています。「地域立大学」を謳う松本大学と、地域とともにある地域共創学群を展開する本学とは考え方が近いのではないかということで、アプローチがありました。以前から本学と協定を結んでいる鹿児島国際大学も交え、3大学で学生を中心とした交流を進めます。今年9月には松本大学に3大学の学生が集結し、地域防災をテーマにした研究会を開催します。地域の特色や、地域間の差異を互いに学び合う。地域創生における新たな取り組みになると考えています。

――高校との提携も。

大森 東京の神田女学園中学高等学校と提携しました。東京の中高生に北海道での学びを提供していきます。同校は探求学習に力を入れています。探求学習の発表などでも本学の教員が協力し、交流を深めたいと考えています。

――探求学習に熱心な鵡川高校とも協定を締結しましたね。

大森 鵡川高校、本学、むかわ町と、高・大・地の3つの組織で協定を結ぶ先進的な取り組みです。むかわ町の高校生に本学の学びを提供する一方、フィールドワークの舞台としてむかわ町を活用したいと考えています。
地域共創学群の使命の一つは地域住民と共に地域を創ることです。むかわ町で街づくりをすることは学生にとって非常に有意義です。この取り組みを「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の目標に基づいて内閣府に提案し、委託事業になりました。全国でも6つしか採択されない狭き門です。大学が高校生を育て、またその土地に帰すという高・大・地の連携、人材循環モデルが評価されました。
鵡川高校を卒業後、本学に進み、地域に役立つ人材となって、むかわに帰る。起業する学生や、後継者不足で悩む企業を引き受ける。そんな人材も育てていきたい。
地域のニーズを把握し、町の人とコミュニケーションをとるために、我々がむかわに行き、若手住民や経営者と意見交換をする予定です。「将来どのような町にしたいか」「どんな人材を採用したいか」をヒアリングし、大学主導で高校生と町民の意見をまとめます。むかわモデルを成功させ、同じような悩みを抱える道内自治体に広げていきたい。

――「サツダイ:みらい志向プログラム」もスタートしましたね。

大森 専攻に関わらず自由に選択できる全専攻横断型の新しい教育プログラムです。学生がそれぞれの専攻で専門性を高めるとともに、他専攻の科目も学びながら応用する分野を見つけるものです。
ぼんやりと興味のある分野を選んでしまうと将来の仕上がり像が見えにくいものです。そこで「サツダイ:みらい志向プログラム」では3つのプログラムを用意しました。ビジネス創生の「食・観光」、データサイエンスの「魁(さきがけ)」、アイヌ文化スペシャリスト養成で、新しいを意味する「asir(アシㇼ)」です。
北海道の基幹産業や先端分野、伝統分野を学びます。専門性以外にもこんな能力があると客観的に示せるように、履修後には修了証明書を発行します。

――一番人気は。

大森 現状ではアイヌ文化スペシャリスト養成の「asir」です。asirを目的に入学してくる学生もいます。従来のように文化や歴史を学ぶだけではなく、4年制大学として初めて、アイヌ工芸実技を正規科目としました。アイヌ文様の刺繍や木彫を高いレベルで習得します。制作物をオンラインで販売し、収益を上げるところまで学びます。経済的な自立を果たし、産業として成り立たせるところまで勉強できるわけです。

――データサイエンスの分野も注目度が高いですね。

大森 昨年、サツドラホールディングスと協定を結びました。同社が運営する教育事業の担当者を講師として招き、実学に近いデータサイエンスを教えていただきたい。企業の第一線で活躍している技術者に教えてもらうことは学生にとって良いチャンスです。
正門横にはサツドラ店舗を建築中です。この店舗で実データを取り、本学の学生とサツドラの講師とでディスカッションを行う。そのようなこともできる実験的な店舗になります。

――新校舎も完成しました。

大森 学内公募で名称を「スコーレ」と名付けました。自動追尾カメラを導入し、全ての教室が遠隔授業対応となっています。これをリアルタイムに、あるいはオンデマンドで学生に配信します。
大ホールは学内利用に加えて、高校生の探求発表会用にも貸しています。実際に利用した新陽高校の生徒も大きなホールでの発表でが自信につながったようです。

――部活動も頑張っていますね。

大森 男子サッカー部が天皇杯に出場し、2回戦では昨年のJリーグチャンピオンで一昨年の天皇杯優勝の川崎フロンターレと対戦しました。惜しくも敗れてしまいましたが、Jリーガーと〝本気〟の試合ができた経験は必ず次につながると思います。

――「令和の大学教育」については。

大森 1つは、未来予測が難しい「VUCA」の時代に対応するということです。答えが無い問いに対し、自分で答えを見つける方法を知ってもらう。その切り口の1つがアクティブラーニングであり、探求学習です。この拠点となるゼミナールをこれからは、より充実させていきたい。
一般的に文系のゼミナールは学内での活動が中心になりがちですが、座学でしっかりと基礎知識を身に付けたならば、次は学外へ出て、フィールドワーク型のゼミナールを行ってほしい。
地域の方と交わり、地域のニーズを掴む。地域と一緒に課題を解決しながら、その手法を身に付けていく。それが目標の1つとなり、学生の成長につながります。

札幌ドーム4個分の広大なキャンパス内に昨年、新校舎を開設