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天使大学

田畑 邦治 学長
(たばた・くにはる)1947年生まれ。74年上智大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了。聖母女子短期大学助教授、同大教授、NPO法人「生と死を考える会」理事長などを歴任。2016年白百合女子大学学長を経て、20年4月から現職。

己の弱さを受け入れ、考え、行動によって主体性を育む

――ズバリ〝人間力〟とは。

田畑 有名なフランスの哲学者パスカルは「人間は考える葦である」と宣言しました。人は植物のアシのように弱い存在だが、考えることができる、という意味です。己の弱さ、限界を認めた上で、物事を見極め、しっかりと考えることこそ、我々人間が持つ最大の力なのではないでしょうか。

――ウェブ社会となった今、〝考える〟機会が減少しています。

田畑 世の中が便利になり、スマホで検索すれば何かしらの〝解答〟が見つかる時代ですが、偏った情報に翻弄されて本質を見誤る、あるいは考えること自体を放棄してしまうケースもあると危惧しています。今こそ、学生には自分なりに考え、答えを導き出すことが必要だと捉えています。

――具体的には。

田畑 本学では看護栄養学部を開設しており、看護学科と栄養学科の2学科で看護師と管理栄養士を養成しています。両学科ともにグループワークを中心とした教育カリキュラムを組んでおり、授業ごとに設けられるさまざまなテーマに対し、学生同士が活発にディスカッションしています。座学でインプットした知識や情報を、しっかりとアウトプットする場面を設け、自身の真の知識にさせています。学生がプレゼンテーションをする機会も増やしています。ティーチングに終始せず、学生参加型の教育を進めています。

――大学院では保健師や助産師も数多く輩出しています。

田畑 養成する全職種が命と向き合うプロフェッショナルです。科学的教育も重要ですが、病気を患った人や高齢者、障がい者と接するわけですから、内面的教育や教養教育も重要です。前述の通り、人間の弱さを知り、自分の身に置き換えて他者と接することが真のプロと言えるでしょう。

――看護師の将来性は。

田畑 少子高齢化を背景に看護師が担う役割は大きくなっていくでしょう。また、医療機関だけではなく、地域や福祉施設からのニーズも高まっています。病気の予防などを含め、ますますニーズが多様化し、広く〝人々の健康と生活を支える仕事〟になっています。

看護師には患者をキュアする、ケアする役割があります。科学技術を用いて病状を改善するキュアに対し、例えば慢性疾患や終末期医療では心身のケアが重要になります。ケアは人に寄り添うということです。カトリック校としての「人間愛」の教育も生かされるでしょう。

――管理栄養士の国家試験合格率は道内トップです。

田畑 2022年度は91.9%と新卒全国平均87.2%を大きく上回ることができました。本学は管理栄養士のほか、道や札幌市で採用されている栄養教諭資格の実績も豊富で、制度がスタートした05年から現在まで、毎年道内1位の合格者数を堅守しています。現在、道内で活躍している栄養教諭の半数以上が本学の卒業生です。また、札幌市では公務員として栄養士の採用枠を設けており、こちらも道内トップの採用実績を有しています。

――好成績の要因は。

田畑 そもそも成績優秀で、進学校から「管理栄養士になりたい」と高い志を持った学生が多い。授業内容も試験を見据えた実践的なカリキュラムを組んでいるほか、学生一人ひとりの理解度を把握し、個別に学習を支援しています。学生は総じて学習意欲が高いため、お互いを刺激し合う良い雰囲気であることも強みです。

――管理栄養士の就職先は。

田畑 医療機関や福祉施設が中心となります。今年5月より「医療従事者の職種として厚生労働大臣が定めるもの(医療法)」に管理栄養士と栄養士が追加されました。入院患者や高齢者など利用者の数に応じて、病院や施設は有資格者をそろえる義務が生じます。高齢化社会は今後も続きますから、将来的に引く手あまたの職種になると同時に、待遇面の向上も期待できます。

――栄養士のやりがいは。

田畑 食は生命維持に必要不可欠であり、人生に彩りを与えてくれる大切なものです。数値上で栄養を管理すればいいという単純なものではありません。例えば食事制限が必要な病気を患った人に、いかにQOLを維持しながら食を楽しんでもらうのか。プロとしての腕の見せ所です。

本学は今後も〝誕生から死まで〟命に貢献する人材を育てていきます。

全国唯一の専門職大学院で助産師を養成
命に寄り添える看護師を養成
高齢化社会で管理栄養士のニーズは高まっている