サニタリータンクの製造に特化 顧客はナショナルブランド
われわれの生活を〝影〟から支えている職人の集団が石狩にある。今年、創業20年目を迎えた北栄ステンレス工業だ。
主事業はステンレスの加工。食品・製菓・飲料メーカー工場などで必須となるサニタリータンクに特化している。調合や発酵といった製造プロセスに応じて設計・製作し、販売まで手掛ける。取引先はナショナルブランドを含めた国内一流メーカーの名が並ぶ。今日、口にした食品や飲料の中には、同社の製品によってつくられたものが入っている可能性が高い。
食の安心・安全が叫ばれる中、サニタリータンクの製造は極めて高い品質が求められる。小さな溝やキズ、ズレなどは、洗浄作業を阻害するため、衛生面に悪影響を及ぼしてしまうからだ。
だからこそ同社では、すべてオーダーメード・ハンドメードで対応しており、溶接1つとっても1㍉の狂いもないフラットな表面加工を実践。目に見えないほどの小さなキズやピンホールも見逃さない検査体制を整えている。
また、一貫生産による「短納期・低コスト」をうたっているのも同社ならでは。通常は分業でおこなわれる溶接・研磨・組み立て・仕上げといった工程を、同社では職人一人ひとりが高いレベルで遂行。据え付けや配管工事まですべてを自社でおこなうことで、工期短縮とコスト削減を可能にした。
こうした一連の工程を熟知しているからこそ、顧客との打ち合わせもスムーズ。多様化するニーズをくみ取った提案型の設計は「かゆいところに手が届く」と好評を得ている。
確かな技術力と柔軟な対応力を武器に、道内外で顧客を獲得。現在は製薬会社や化粧品メーカーなどのサニタリータンクも数多く手がけるなど、さまざまな業界で存在感を示している。
「金属の物づくりにはあらゆる技術がつまっています。複雑で特殊な技能が必要なため、自動化はまだまだ先でしょうし、競合他社が劇的に増えることもありません。また、衛生面などを加味すれば、海外での大量生産も難しい。将来的にも安定した受注が見込める分野ですから、責任を持って職人を育てていきたい。技術をしっかりと身につければ、一生食うに困らない。一から教えていきます」と秋枝征典社長。次世代への技術の伝承を目指し、採用活動も積極的におこなっている。