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Interview

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JR、原発、空港民営化…
“北海道の危機”と再生戦略を語る
掲載号:2017年7月

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横内龍三 北海道経済同友会代表幹事

「人口減少下の成長戦略の要は、1人当たりの生産性を高めることに尽きる」――本道経済界の重鎮、北海道経済同友会代表幹事の横内龍三氏(北洋銀行会長)はそう断言する。北海道は人口減少圧力に抗して、再浮上できるのか。危機感を募らせる横内氏に聞いた。

北海道はボヤボヤしてはおられない

――北海道の衰退が急速に進行しています。現状をどう認識されていますか。

横内 率直に言って、北海道はボヤボヤしてはいられないぞ、と思いますね。

もう一度足元をしっかり見た上で、いい意味での危機感を持ち続けて、北海道のこれからをどうやって成長させていくのか、その未来図を構築しなくてはならないと思います。

「地方創生」で全国の地方公共団体が、地方の中長期的な成長戦略を提出しています。いくつか主要なところを読んでみますと、ほかの地域もみんな北海道が〝強み〟として出している「食と観光」の2本柱をあげてきているんですね。

北海道もこれまで以上にブランド力確保に努めなければなりません。

それとTPPの問題もアメリカが抜けて、農業界はひと安心ということで、議論はほとんどなくなりましたが、農業の生産性を諸外国と比較した場合、日本が低いというのは厳然たる事実です。

TPPがどうなろうと、危機感を持って1次産業分野で生産性を高めるということをしっかりやっていかなければなりません。

そうでなければ日本の農業はさらに衰退していってしまいます。TPPの嵐は過ぎたけれど、問題がなくなったわけではない。それなのに、何かホッと胸をなでおろすような雰囲気を感じます。いい意味での危機感を持ち続けなければならないと思います。

生産性の向上とニュービジネスを

――人口減少であちこちで人手不足が話題になっています

横内 人口減少・少子高齢化の実体経済面への影響というものは、想像していたよりはるかにスピードが速いなと感じています。

北海道でもいまいろいろな分野で、人手不足で困っているという声が多く聞かれます。

例えば、バスの運転手さんが足りないというんですね。バス会社さんはみんな人材確保に必死です。

そうするとJR問題を考えるときに、採算性の悪いところはバスに切り替えるという話になりますが、いまの状況だと、バスに切り替えることが具体的な解決論になるかどうか。もしかしたら解決策にならないかもしれないと。そういう状況なんですね。

それから観光業界でも、民宿、旅館など宿泊関係も人手不足が深刻で、1番肝心のベッドメーキングが間に合わないんだそうです。

例えばホテルの部屋が100室あって、お客さんが100あっても、ベッドメーキングが間に合わないため、稼働率がピークでも7割ぐらいになってしまうと言うんです。 

これからさらに人口が減ってきますから、地方が自ら考えて稼ぐ力をつけること、つまり生産性を高めて行かなくては全体の経済を維持して行けなくなります。

人口減少下における成長戦略の要は、ひと言で言えば「1人当たりの生産性を高める」ことに尽きます。 そのためには「人材の育成」も非常に重要になってくる。

日本の労働生産性の国際比較(2015年)をみると、OECD加盟国35カ国中22位となっています。

日本の労働生産性は、就業者1人当たり、時間当たりのいずれにおいてもアメリカの6割強の水準で、先進7カ国の中では最も低いんです。順番はアメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、カナダ、日本です。

しかし、見方を変えれば日本の生産性向上の余地は、まだかなり残されていると言えます。

人口減少に直面する北海道にとって、豊かで安心安全な地域社会を形成するためには、ベースとして既存ビジネス、特にウエートの高い農林水産業と観光分野での生産性の向上が求められます。

同時にまた、より付加価値を期待できるニュービジネスをつくり出すという新たな展開が必要です。

アメリカではIT産業とか、資源でいえばシェールガスの開発とか新しい仕事をつくり出して克服しつつあります。あれほど大規模な業種革命でなくても、ニュービジネスをたえず考え、それを実現することによって、人口が減少する中で、経済の規模を維持していくことが求められます。

原発再稼働で電気料金の引き下げを

――泊原発の再稼働の見通しがなかなかはっきりしません。

横内 電気料金・エネルギー問題も北海道経済の大きな課題の1つです。

私も原発に本当に賛成かといわれると、それは原発にはいろいろ問題があると考えています。最終処理問題が決まっていない状態で、長期的に依存度を高める方向というのは確かに問題は大きいと思います。

しかし、この問題は中長期的対策と短期的対策を分けて考えないといけない。 北海道の電気料金が地域的に1番高い状態がずっと続いているのは、当然のことながら経済活動に負担になるし、消費者の方々にも負担になります。

再生可能エネルギーなども、まだ十分にエネルギーを供給するための手段としては問題があります。

ですから規制委員会が示した条件をクリアして、短期的、中期的にはやはり原発を稼働して、電気料金を下げてもらうことが重要です。それから、代替エネルギーの本格稼働をまって、原発を廃止していけばいいと考えています。

「JRの努力」と「国にお願い」が…

――いま原発が動いていないのに、ちゃんとやっているじゃないか、という声もあります。

横内 いま原発がなくてやれているのは、化石燃料でなんとか補っているからです。

世界的なテーマでいうと、地球温暖化対策として、化石燃料の依存度を下げましょうとやっているんです。

それなのに原発をやめて、その分を化石燃料を復活させて、どんどんCO2を出していくことでいいのか、ということになります。

この問題を解決するために、自然エネルギーでやるという。でも、それは早急にはできませんね。

皆さんが電気料金が高くてもいいと、それで自分たちの生活や経済活動を構築していこう、という覚悟なら、それはそれで1つの道だと思います。

でも、得てして料金についての議論は、それは北電の努力が足りない、北電が努力して下げなければいけない、ということになりがちです。

北電の努力が足りない部分もあるかもしれませんが、それで本当の問題解決になるんでしょうか。

JR北海道の問題にも似たところがあります。

やっぱりJRの努力が足りないと。それからもう1つは、これは国にお願いすることだと。

「JRの努力」と「国にお願い」ということで、果たして問題は解決するでしょうか。私はそれだけではダメだと思います。

そもそも北海道の交通インフラというのは、まず第一義的には北海道の問題なんです。

ですから、利用者がいないことが問題だとすると、それじゃ地域として利用者を増やすために何ができるのか。

できない理由ばかりでなく、できることは何かないのかと。それぞれの地域で本当にそういう検討をしているかどうか。

次に、地方公共団体として何ができるのか、その可能性を探ること。その次に、全道の問題だから道庁としてやれることは何か。

そしてJRが民間企業として頑張ればどれだけのことができるのか。

それを詰めた上でどうしても足りないものを、国鉄民営化の歴史的な事情もありますし、また本来あてにしていた基金の運用益がいまは全然ないという環境変化もある。

そういうことを考慮して、国に最終的に何をお願いしたらいいのか。

そういう議論をして行かなければならないんですよね。みんなただ国にお願いする、国にお願いするって、自分たちの努力の棚上げみたいなことでは、全国的な理解と支援は得られないのではないでしょうか。

――北海道の交通体系についてどうお考えですか。

横内 私は、北海道の交通インフラ全体の将来像をどう構築していくかを、もっと議論しなければならないと思います。

JR問題や空港民営化問題を、それぞれ個別の問題として議論していくと、将来、どうもつじつまが合わないじゃないか、ということになりかねないと思うんです。

私は専門家ではないので、気の利いたことは言えませんが、例えば長距離に向く手段、それから時間をものすごく意識しなければならない手段は、北海道は特に広域ですから、拠点、拠点を結ぶものは空の小さな飛行機、コミューターが1番ビジネス的には合っていると思います。

それから大量に物を運ぶ貨物をどうするか。いまは鉄道に頼っていますが、海をもっと使えないのか等々、JR北海道の維持困難路線の問題や、空港民営化問題を踏まえ、鉄道と道路の陸路、そして空路、海上航路などを、総合的にとらえて北海道の交通インフラの将来像をどうするのか。全体像をしっかり構築した上で、それぞれ各論に臨むべきだと思います。

JR問題はあと2年も3年もほったらかしにはできません。また空港民営化の論議もスケジュールが煮詰まってきています。

学者や実業界の人たちの意見を参考にして、しっかり議論した上で全体像をまとめていくのは、やはり道庁の役割じゃないかと思いますね。

もう先送りする余裕のないところまできています。交通インフラ、エネルギー、農業および観光の生産性の問題等々、今年は北海道にとって重要な施策の決断の年だと思います。

――ありがとうございました。         

=ききて/干場一之=