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Interview

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2度の危機から学んだ“身の丈成長”掲載号:2015年10月

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大見英明 コープさっぽろ理事長

道内流通界で確固たる地位を占めるコープさっぽろは今年7月、創立50周年を迎えた。半世紀の間に2度の経営危機を乗り越えたいま、店舗事業と配食事業を両輪にした着実な成長路線をひたむきに走る。

1965年に2店舗からスタート

――50周年を迎えました。コープさっぽろの半世紀を振り返ると、どんな転機があったと思いますか。
大見 1965年に北海道大学生協組合の職員と地域住民が力を合わせ、地域生協として発足しました。
日本は高度経済成長の時代です。ほぼ同時期に道内各地に地域生協が発足し、その後、コープさっぽろと統合していきます。
当時は「北海道価格」という言葉があり、道民は本州よりも高い値段で日用品を買っていました。「北海道価格」をどう打破するかが、コープさっぽろにとって大きなテーマでした。
まだ道内に本格的なスーパーマーケットチェーンがない時代です。そこでいち早くチェーンストア理論を取り入れ、多舗店展開を進めます。設立当時は2店舗でしたが、5、6年後に店舗は30を超えました。
しかし、高速成長を意識し過ぎるあまり、71年に資金ショートに陥ります。これが初めての経営危機でしたが、立ち直りました。
また、消費者運動が盛んになる中、コープさっぽろはまとめ役として存在感を発揮します。灯油の値上げ反対運動などがありました。各地の組合員のパワーが増し、経営も再び順調に伸びていきました。
――80年代に入ると、本州から大手スーパーマーケットが続々と上陸してきました。
大見 当然、大手スーパーにどう対抗するかが経営課題として浮上し、対抗策として店舗の大型化が推進されました。3000坪とか4000坪の大型店です。
しかし、91年にバブルが崩壊し、97年には北海道拓殖銀行が破綻します。道内経済が急速に冷え込む中、コープさっぽろは98年、経営危機に見舞われました。
71年の資金ショート、そしてバブル崩壊後の経営危機。この2回のピンチは、振り返って見ればターニングポイントになったと思います。他社との競争関係もあり、コープさっぽろは実力以上の戦い方をしてしまったと思います。身の丈を超えた経営、成長を目指したことが、1番の反省点だったのではないでしょうか。
――98年の経営危機に対し、どのような再建策を打ち出したのですか。
大見 この時は、コープさっぽろがなくなるかもしれない、というぐらいの事態でした。いわば土俵際です。大リストラを断行せざるを得ない状況でした。
1400億円の事業規模に対して正職員が2500人、パート職員が1万2、3000人おりました。退職勧奨をおこない、99年から2002年にかけて正職員だけでも5、600人が去りました。残った職員についても、賃金水準を引き下げました。
もちろん不採算事業からは徹底しました。旅行代理店、ホテル、家電・衣料販売などです。赤字の店舗も閉めました。
――当時、大見理事長はどのような立場で再建にたずさわったのですか。
大見 既存店のリニューアルを任されました。日本生活協同組合連合会(日生協)から多額の資金支援を受け、その資金の一部を店舗事業の再生に投じました。98年から32店舗の改装を実施し、その後店舗事業は回復軌道に乗ります。
当時の事業規模では、コープさっぽろは再建の展望が開けない状況でした。不採算店を閉めつつ、店舗事業を強化することは急務でした。
もう1つの再建策の目玉が、宅配事業を伸ばすことでした。宅配は200億円以下の事業規模しかなく、各地の生協と比べると、全体の事業高(売上高)に占める割合が低く、まだまだ伸ばす余地がありました。強化した結果、現在の宅配事業は750億円を超えています。
――日生協は救済策として資金支援に加え、理事長も送り込みました。
大見 日生協から来た内舘晟さん、その後の松村喬さんも各5年、理事長を務めました。10年間の軌道修正期があったわけです。私は8年前、松村さんからバトンを受け取りました。
――かなりスケールが大きい再建策を断行したわけですが、組合員の反応は。
大見 大規模なリストラをおこない、店も最終的には43店閉めましたが、コープさっぽろがよくなっていくための努力とご理解をいただき、組合員のみなさまから、多くの出資をちょうだいしました。
組合員のご協力のおかげで、コープさっぽろの今日があると言っても過言ではありません。これからも、組合員のご要望を真摯に、心の真ん中で受け止めて歩みを進めていきます。

7、8年で累積欠損を解消する

――松村前体制、大見体制で「コープさっぽろはV字回復を果たした」と言われていますが、累積欠損はどれぐらい残っていますか。
大見 連結ベースで大体400億円ぐらいです。ただ、一般企業の経常利益に該当する利益剰余金が毎年、40億円前後出ています。今年度の上期も前年比104・5%と好調で、通期で過去最高を記録するかもしれません。
競合他社の動向もあり、先を見通すのは難しい時代ですが、累積欠損を7、8年で解消したい。実は創立50周年の今期で、不採算子会社3社の整理を実施します。これは本格的に債務を処理していくためでもあります。
――各事業の今後について教えてください。出店についての方針は。
大見 この5年ぐらい一貫しているのですが、新規出店は年1、2店ペース。既存店の建て替えなどが基本で、急速に店舗数を増やすことは考えていません。
人口減少がどんどん進む一方、コンビニやドラッグストアが数多く出店しており、道内は飽和状態だと考えています。消費動向の変化に売り方や商品づくりで対応しながら、既存店重視の姿勢を続けていきます。
例えば、基幹店のルーシー店を今年春に改装しましたが、着実に成果が上がっています。デリカ部門を強化した結果、総菜は1・3倍ぐらい伸びています。こうした効果的なリニューアルなどで、2年後をメドに店舗事業を黒字化していきたい。
――宅配事業の現状は。
大見 約32万世帯にお届けしており、1世帯平均で年間約30万円のご利用をいただいております。事業規模としては全体の3割程度ですが、収益率が高く、宅配事業の利益が全体に大きく寄与しています。
宅配のメニューはほぼ4000品目で、ご案内の紙面を毎週変えてニーズに対応していますが、今年から新たな取り組みも始めました。別立てで業務用商品の取り扱いを始めたほか、約800品目を掲載した酒類だけのカタログも作り、試験的にスタートしました。
どちらも手応えを感じており、こうした取り組みを続け、宅配事業をさらに進化させていきます。
――配達後の帰りのトラック便の活用も進めているそうですね。
大見 2010年からエコセンターが稼働しているのですが、宅配で届けたカタログ、新聞紙、段ボール、ビニール類などを回収しています。今年春からは古着の回収も始めました。宅配事業はリサイクル事業も兼ねています。
ちなみに食用廃油を年間約70万㍑回収していますが、これは一事業者の回収量としては全国トップクラスだと聞いております。宅配のトラックの3分の1にあたる約350台が、回収した廃油から製造した再生油で走っています。
また、宅配事業は社会的な役割も果たしています。高齢化が進み、組合員の中には1人暮らしの高齢者世帯も少なくない。そこで見守り活動をおこなっています。担当者が週に必ず1回お宅を訪問するわけですから、異変に気づくことができるわけです。
宅配ドライバーに救急救命講習を課し、トラックにAEDも配備しました。実際、年に50件ぐらい、救急車を要請するなどの緊急対応をしています。115自治体と高齢者の見守りに関する協定を結びました。

3つの「つなぐ」を追求していく

――2010年から始めた配食事業については。
大見 1日約6000食を提供しており、それ以外に60の幼稚園・保育園に給食を届けています。
給食サービスは、11年の福島第1原発事故後に受けた「生協はきちんと検査をしているのでお願いできないか」という依頼がきっかけでした。12年からは、アレルギーを持つお子さん向けの作り分けもしています。例えば卵アレルギーのお子さんには、卵焼きの代わりに、白いすり身にカボチャパウダーを混ぜ、同じ様なものをつくります。
――細かい対応ですね。
大見 おかげさまで配食工場を増設しないといけないほど、引き合いがあります。今回、江別の新工場に加工機能の一部を移管し、石狩工場に余裕ができました。配食事業の拡大も可能なので今後、病院や高齢者施設への給食サービスも検討していきたい。
高齢者の1人暮らし世帯が増え、遠くまで買い物に行けない。あるいは家で料理をするのが難しい。そんな世帯もあります。配食事業は、超高齢社会におけるライフラインの1つとして、意義があると考えています。
――最後に、次の50年に向けてのお考えを。
大見 50周年のテーマとして「つなぐ」を掲げました。3つの意味があります。
コープさっぽろは、組合員も含めた消費者とメーカーや生産者を、食を通じてつないでいます。また、2つ目に、さまざまな活動で組合員同士の、つまり人と人をつなぐこともしています。宅配事業における高齢者の見守り活動も、人と人をつなぐ取り組みと言えるでしょう。
そして3番目が人と未来をつなぐです。未来を担う子どもたちのために2010年に子育て基金を創設しました。その一環として絵本を無償で届ける活動を続けています。再生エネルギーの推進も、未来に向けた取り組みの1つです。この3つの「つなぐ」を今後も追求していきたい。

=ききて/野口=