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Interview

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北海道医療大学とカレスサッポロが
ホールディングス化へ
日本初の「地域医療連携推進法人」を設立
掲載号:2016年5月

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浅香正博 北海道医療大学学長

昨年9月16日の参議院本会議で「医療法の一部を改正する法律」が可決・成立した。目玉は「地域医療連携推進法人」の制度化。その第1号が北海道で実現しようとしている。それも大学と病院という、当初の想定を超えた組み合わせだ。

関連病院、附属病院を持ちたい

――北海道大学医学部第3内科教授や同大病院長などを歴任され、ピロリ菌研究では大変著名な浅香さんが、4月1日付で北海道医療大学の学長に就任されました。どのような経緯があったのですか。

浅香 最初にお話をいただいたのは2014年12月でした。前任の新川詔夫学長は体調の関係もあって退任の希望があったようで、その後任にと。本学の東郷重興理事長と理事のお一人が私のところにやってきたのです。私は第3内科の教授を定年になった後、昨年12月まで北大の寄付講座「がん予防内科学講座」の特任教授をしておりました。
私は1972年に北大医学部を卒業してから、米国留学の2年間を除いてほぼ40年、北大で過ごしてきました。私立大学の経営などは、まったくわかりません。正直、非常に悩みました。でも熱心なお誘いもあって、15年4月にお受けするという返事をしました。ただ寄付講座の仕事が残っていましたので、それが終わってからということで了解をいただきました。

――まず昨年8月に医療大学の特任教授になられた。

浅香 はい。その後、10月に副学長を兼任し、理事会などにも出席するようになりました。そして、1月1日から副学長に専任。北大の寄付講座を終え、こちらの常勤となりました。

――常勤されるようになって大学の印象、雰囲気はどうですか。

浅香 本学は今年で開学から42年目を迎えました。その間に1万9000人近くの医療人を世に送り出し、各方面から高く評価されています。現在、薬学部、歯学部、看護福祉学部、心理科学部、リハビリテーション科学部の5学部8学科、および5つの大学院研究科、さらに歯学部附属歯科衛生士専門学校から構成され、2018年をめざして健康衛生学部の設置も構想中です。医療系の総合大学としては日本でも最も大きい部類に入ると思います。

メーンキャンパスは当別町の田園地帯に位置し、本当にすばらしい自然の中に近代的設備をそなえた施設を有しています。これは英国のケンブリッジ大学や米国のアイビーリーグのような理想的な高等教育の場だと実感します。また札幌市内には、あいの里地区ならびに中央区内のアスティ45内にサテライトキャンパスも設置。それら3カ所のキャンパスで学生・教職員、総勢約4000人が日々生き生きと活動しています。まさに躍動感あふれる大学との印象です。

――高齢社会となり、医療・福祉系を目指す人は多いのでは。

浅香 ただ同じような学部を持つ大学は札幌にも結構あります。その中で、札幌市内からJRで約40分かかる本学に、いかに来てもらうか。さらに特徴を出していかなければならないと思います。

――具体的には。

浅香 本学の学科は、そのほとんどが国家資格に絡みますから、国家試験の合格率が高いというのは必須です。そのほかに、通常の教育にプラスさせる要素として、学生に実践教育をさせる場がもっと必要だと思います。いまは本学教職員が道内各地の医療機関を隅から隅まで回り、何とか研修をお願いしているような状況です。人気の研修先は受け入れ人数も多いので、どうしても見学のようになってしまう。これではあまり意味がありません。

――医療大は自前の附属病院もあるようですが。

浅香 あいの里に「北海道医療大学病院」はありますが、病床は24です。患者数が多いわけでもなく、ちょっと研修病院には適していません。ですから、前々から札幌市に関連病院、附属病院を持ちたいという希望はあったのです。

カレスの大城理事長は20年来の友人

――医療大は、そうした課題を一気に解決できるような提携を4月11日に発表されましたね。

浅香 本学は、札幌市内で時計台記念病院や北光記念病院を経営する社会医療法人社団カレスサッポロと「地域医療連携推進法人」設立に向けた合意書を交わしたことを発表しました。

――聞きなれない名称の法人ですが、どういうものなのですか。

浅香 厚生労働省は、医療を取り巻く制度改革の中心に「地域包括ケアシステム」を据えています。団塊世代が75歳以上となる年をめどに、高齢者が可能な限り住みなれた地域で暮らしていける包括的な支援・サービスの提供体制をつくるというものです。そこで厚労省は、地域に対して効率的で質の高いサービスを提供するために〝非営利ホールディングスカンパニー型〟の新たな法人格の創設を提案しました。昨年9月の参議院本会議で関係する法律が成立し、これにより複数の非営利法人を束ねて一体的に経営することができるようになりました。それが地域医療連携推進法人です。

――カレスと合意書を交わすまでの経緯は。

浅香 私は東郷理事長から研修病院を何とかしたいという話を聞いていました。そこで昔から懇意にさせてもらっているカレスの大城辰美理事長を訪ねたのです。

――それはいつですか。

浅香 昨年12月です。その時は東郷理事長にも同席してもらいました。東郷理事長も大城理事長も医師ではないので話が合うのではと思ったからです。実際、その通りでした。とくに東郷理事長は、大城理事長がつくった看護のシミュレーションセンターに大変興味を示されました。

――その時に提携の話はされたのですか。

浅香 具体的な話はしていません。年明けの2月、私が大城理事長のところに具体的な提携の話を持っていったところから急に進み出しました。

私たちは附属病院を持つため、病院の買収も考えていました。しかし、買収だけで何十億円もかかるし、赤字経営ならその補填もしなければならない。

私は時計台記念病院で2年間、ピロリ菌外来をやらせてもらった経験があります。そこで200人くらいの除菌をしました。そんなこともあってカレスの健全性は十分わかっていましたから、提携先はカレスしかないと思っていました。

――そういえば時計台記念病院の本田耕一院長は北大出身でしたね。

浅香 大学時代のバスケットクラブの先輩で、私に時計台記念病院で外来をやらないかといってくれたのも本田院長です。

北光記念病院の櫻井正之院長も北大の先輩で、両院長とも親しくさせてもらっています。

――大城理事長との付き合いはどれくらいに。

浅香 かれこれ20年くらいになります。私が北大病院長の時代などは、よく経営について意見交換をさせてもらいました。

実は、大城理事長からは将来的に時計台と北光を統合して1つの病院としたとき、新病院の管理者になってほしいと言われていたのです。もちろん、本田院長も櫻井院長も納得されてのことだとおっしゃっていました。せっかくのお話だったのですが、学長の件が決まった後、大城理事長のところに謝りに行ったら「うちよりいい話だから、いいじゃないですか」と逆にハッパをかけられました。

必要な機能と不足する機能を補完

――2月の大城理事長との面談で具体的にどういう提案をされたのですか。

浅香 将来的に、本学の附属病院になることについて興味はないかと。ただ、この提案は本学にはメリットがありますが、カレスにはあまりないかもしれないと思っていました。しかし、大城理事長はその提案に乗ってくれて、逆に地域医療連携推進法人はどうかという話をされたのです。

――その話を聞いたとき、どう思いましたか。

浅香 びっくりしました。こんな方法があるのかと。大城理事長からは具体例として、いま岡山大学が付属病院を法人化して独立させ、近隣の公立・公的病院を包括した「岡山大学メディカルセンター構想」を進めているという話も聞きました。ただ、規模が大きく公の機関も絡んでいるので、実際問題としてはなかなか進んでいない。私立同士がやった場合は、もっとスピーディーに事が運ぶのではないかと。

そこで私は、実際に新法人設立を進めるとしたら想定される諸課題などについて、もっと具体的な図を提示してほしいと頼みました。大城理事長から1カ月ほど待ってくれと言われました。

――大城理事長は、カレス側のメリットは何だとおっしゃっていましたか。

浅香 カレスは歯科医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士などの人材が不足していると。われわれは、まさにそうした人材を養成しています。

もう1つ、本学で不足しているものをいえば、やはり医師です。医学部がないので医師は欲しい。

さらにいえば、両法人の経営および財政はともに安定しています。これも重要なことです。

正式に新法人設立となれば、相互に必要な機能と不足している機能が補完されます。事業の基盤が一段と強固になり、北海道の保健・医療・福祉の課題解決に、さらなる貢献ができると確信しています。

――新法人名は考えられているのですか。

浅香 いまのところ「北海道医療大学・カレスサッポロ メディカルホールディングス」、略してHCMHを予定しています。

――誰がトップに。

浅香 それはこれからの話し合いになります。今回の発表は、あくまで2つの法人で新しい法人をつくることに合意したということだけです。今後、お互いに準備委員会をつくって細かい検討を始めます。遅くとも2017年4月の法律の施行に間に合うよう議論は進めていくつもりです。

いずれにせよ設立の目的は、医学教育の質的向上と予防医学から疾病治療・リハビリテーション・緩和ケア・在宅医療・地域包括ケアシステムの確立に加えて、高度医療・救急医療・へき地医療へ積極的に取り組み、地域社会の発展に貢献していくことです。

=ききて/鈴木正紀=