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Interview

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18年1月、道内初の1兆円信金誕生
「アワーズしんきんバンク」になる!
掲載号:2018年1月

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吉本淳一 札幌信用金庫会長

2018年1月、札幌・北海・小樽の3信金の合併により「北海道信用金庫」が誕生する。道内初の預金量1兆円信金は何を目指すのか。厳しい金融環境をどう勝ち残るのか。合併の立役者となった札幌信金会長の吉本淳一氏に聞いた。

道央圏の経済を守るための合併

吉本淳一氏は1955年空知管内長沼町生まれ。小樽商科大学卒業後、78年4月に札幌信用金庫入庫。その後資金営業部長や総合経営推進部長、人事企画部長を歴任し、08年1月に常務理事、同年6月に代表理事理事長、12年6月代表理事会長。18年1月発足の北海道信用金庫で会長に就任する。

   ◇    ◇

――北海信金、小樽信金との合併を目前に控えています。

吉本 2018年1月1日に北海道信用金庫(略称・しんきん北海道)が誕生します。

来年は1869年(明治2年)8月15日に「北海道」と命名されて150年の節目。その年に北海道の名を冠する信用金庫をわれわれの手でつくり上げることができて、大変幸せです。

北海道の中心である札幌を中心とした道央圏が、北海道の経済を牽引していくことができるよう、発展させていきたいです。

――今回の合併は、吉本会長が専任となり実現したものと聞いています。その経緯を、あらためて教えてください。

吉本 私が理事長に就任したのは08年6月。その2カ月後に、いわゆるリーマンショックがありました。

全国的に大変多くの金融機関が赤字決算を余儀なくされ、その後も長く景気低迷が続いて金融機関競争、金利競争が熾烈化し、同時に地方の疲弊が進んでいきました。

リーマンショックは、いわば乗り越えれば何とかなるという一時的な事象ですが、その後も環境の変化が継続していることこそが重要。それらに左右されることなく、地域経済活性化、地方創生に貢献していくためには、地域密着型金融機関として、サスティナビリティー(持続可能性)がなければいけません。われわれは営利法人ではありませんが、地域に貢献していくためには、一定のサスティナブルな収益を確保して、取引先、地域からの信頼を得ることが必要です。

こうした中で、道央圏に店舗を構える多くのトップのみなさまと議論や意見交換をしてまいりました。その中で、地域経済活性化、地方創生などに関する考え方、札幌を中心とした共通のエリアである道央圏をしっかりと守っていくという考え方が一致したのが、われわれ3信金でした。道央圏を核に、北海道を代表する信金をつくり上げようと。これが最大の理由です。

――最初の構想から7年越しの実現となりました。

吉本 時代や環境の変化で起きる地域の課題に、対応できる信金をつくり、道央圏を守る。合併はそのための「手段」であり、エリアの拡大や規模の拡大を目的として合併するわけではありません。

――結果として、道内初の「1兆円信金」が誕生します。

吉本 預金量1兆615億円、貸出金が5920億円、自己資本は771億円(17年3月末単純合算)です。これを最大限有効活用した経営をおこなってまいります。

信金が得意とする地域密着型金融を深化させていくやり方は、色々あります。われわれは合併をそのための手段として、ダイナミックな経営をおこないたい。

――合併によって、経営の効率化が進みますが、店舗の統廃合は検討されるのでしょうか。

吉本 現在、出張所を含め3信金合計で88店舗、そのうち札幌市内に42店舗があります。合併時はおこないませんが、今後はご迷惑をおかけしないような形での統廃合、見直しも検討します。近接した店舗のどちらかを閉めるという方法もあれば、両方を閉めて、もっと利便性の高い店舗を新設するという方法もあるかもしれません。

地域密着型金融の原点に返る

――信金の一丁目一番地は地域経済の活性化や貢献です。どう取り組みますか。

吉本 合併後の営業エリアは、北海道全体の面積の16%とコンパクトであるのに対し、ここには道内人口の約55%、300万人が居住しています。

その中に効率よく張りめぐらされた店舗網による「点と面」双方向からの営業展開、真に顧客本位の「リレーションシップ・バンキング」(地域密着型金融)の原点に返ります。

――原点とは。

吉本 地域の中小企業・小規模事業者の本業を力強く支援すること。地域の企業に付加価値をつける経営をおこない、企業を成長・再成長させることです。それが地域経済活性化、地方創生につながります。われわれの強みは、合併前から3信金が同じ経済圏の中でコンパクトに固まっていたこと、そして優秀な“人財”が多いということです。これらを強みとして、勝ち残っていきたい。

道央圏は一大消費地でもありますから、この中だけでも、地方創生につながる有益なビジネスマッチングができると思っています。

――具体的には。

吉本 積極的な資金供給は当たり前のことですが、創業・新事業支援、各種補助金やビジネスマッチング、事業承継・M&Aなどの企業経営をサポートする取り組みをより強化、推進します。ここには合併による業務・店舗の効率化等により生まれた“人財”を戦略的に配置します。

また地方公共団体との包括連携、関連の財団法人を通じ、各種助成をめた社会、文化、人づくりのための貢献も積極的にやっていきたいと考えています。

――地方銀行2行との関係は。

吉本 1兆円信金になったとしても、単独でできることには限りがあります。業界内の連携・協調はもちろん、両行とは今後ともより一層連携を深めて「協調と競争」の中で一緒に、道央圏の活性化に寄与していきたい。

厳しい金融環境・競争に対応

――金融庁は信金をはじめ、さらなる金融再編の意欲を持つといわれています。

吉本 私は16年に公表された「金融仲介機能のベンチマーク」や17年10月公表の「金融レポート」「金融行政方針」などを参考にすれば、金融庁が再編を必ずしも求めているわけではないと考えています。

地域金融機関を取り巻く環境が厳しい中、中小企業金融の理念に立ち返ることが必要。その上で、顧客本位の持続可能な経営モデルの構築や、環境変化に対応したガバナンスの発揮を求めているのだと思います。

――さらなる道内での金融再編は起こりますか。

吉本 推測で言うべきものではないのでコメントできませんが、道内の信金はそれぞれ地域に密着し、健全経営を貫いています。これだけ広い北海道ですから、単純に金融機関の規模で語ることもできません。それに地域・地方を守っていくその手法や、地域密着型金融を深化させる方法は色々あります。
われわれ3信金はエリアが重複しており、連携は意味がないことから、合併という選択肢を選びました。信金が単独で地域を守り深化させていくことも1つのやり方ですし、地域間・金庫間で連携をして守っていく深化させていく、というやり方でもいい。地域性など、置かれた環境の中で判断すべきことです。

――北海道信用金庫と他の信金とのさらなる合併はありますか。

吉本 今は18年1月の合併を成就させることで頭が一杯です。ただ、合併に至る中で、3信金のトップの考え方は一致していました。われわれと考え方を同じくするほかの信金との議論や意見交換は、常にオープンでありたいと考えています。
 ただし、それは必ずしも合併を前提にした話ではありません。道央圏をしっかりと守っていくという考え方の中では、連携という選択肢も当然あるでしょう。

――業界を取り巻く、現在の環境も関係するのでは。

吉本 いわゆるマイナス金利政策については、金融機関経営に大きな影響を与えています。預金積金の負債管理も、経営の重要なテーマの1つになってきたのかも知れません。

この金利環境や金融競争が長く続くと、収益環境はなかなか厳しくなります。しかし、われわれには700億円をはるかに超える盤石な自己資本があります。

次の10年後20年後に経営を担う者のため、今は各種のリスクに配慮した“我慢の経営”が必要です。

私は、こういう時の経営、そして資金運用は「シンプル・イズ・ベスト」が基本だと考えます。合併によって単独の信金では難しい重複業務の効率化や、店舗統廃合などによる経費削減によって、厳しい環境に対応できるはず。マイナス金利を見通して合併を決めたわけではありませんが、時宜を得たものだったと思います。

――北海道信用金庫が目指す理想像は。

吉本 3信金それぞれが掲げていた経営方針に、大きな違いはもともとありません。その上で、今後「四方良し」と「アワーズしんきんバンクの実現」を目指します。
「四方良し」とは「会員・お客さま良し」「地域社会良し」「金庫・役職員(家族)良し」「環境良し」ということ。
「アワーズしんきんバンク(われわれの金融機関)」とは、厳しい金融環境・金融競争の中で、われわれが勝ち残っていくため、お客さまから「私の金融機関(マイしんきんバンク)」と言われるのではなく「われわれの金融機関」と言われなければいけない。お客さまから「囲い込まれ」て、お客さまから新たなお客さまを安心してご紹介いただく。魅力ある、頼りがいのある信金を実現していくということです。「カスタマー」から「サポーター」へ、最後は当信金の「パートナー」にと。

なかなか定量化しづらい目標かもしれませんが、18年度からスタートする新3カ年経営計画にも、その目標実現に向けた内容が盛り込まれます。

――新たな歴史をどう刻みますか。

吉本 3信金それぞれの長い歴史の中、いつの時代にも困難な事態があり、先人たちは苦闘し、苦悩しつつも、それを乗り越え、地域社会を守り発展させてきました。安楽な時代など、一度たりともなかったといえます。

現在も厳しい環境ですが、「地域経済活性化」のため、また「アワーズしんきんバンク」実現のため、頑張ってまいります。

=ききて/清水大輔=