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Interview

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開業45周年で大改装
時代に対応、入店客数増を追い求める
掲載号:2018年4月

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萩原正統 東急百貨店札幌店長

1973年10月に開業し、今年で45周年を迎える東急百貨店札幌店が、3・4月にかけて大改装をおこなう。同店店長で、これまで販促・宣伝畑を長く歩んできた〝仕掛け〟のプロ・萩原正統氏に、その狙いを聞いた。

閉店するスーパーで学んだ商売哲学

東急百貨店札幌店長の萩原正統氏は1959年東京都生まれ。青山学院大学経済学部卒業後の82年4月に東急百貨店入社。2006年営業推進室販売促進部長、09年販売促進部催事部長、12年同社本店長、15年執行役員MD企画部長を経て16年2月から現職。以下、萩原氏への一問一答。

   ◇    ◇

――大学では広告のゼミに入っていた。

萩原 大学の先生から、広告の仕事で面白いのは、広告の発注者かつくり手のデザイナーと言われました。広告代理店はその間を取り持つ存在だとも教わりました。その後、いろいろ考えた結果、住んでいた場所から身近だったこともあって百貨店を志望したのですが、東急百貨店を受ける時は「広告や宣伝の仕事をしたい」と。

――入社後はまず店頭で接客ですよね。

萩原 最初は吉祥寺店の食料品売り場だったのですが、その年の8月にたまプラーザ店(神奈川県)の開店準備室へ異動になったんです。それも食料品かと思ったら、宣伝セクションで。

――立ち上げの一番面白いところに携わった。

萩原 残業が多くてかなり忙しかったのですが、その時の経験が後々に役立っていると思います。

――これまでの配属部署で思い出深いものは。

萩原 これも神奈川なのですが、当時は高級スーパーも運営しておりまして。でも売り上げが芳しくなかったもので、そこの店長として立て直しを図ったことがありました。1年間やってみたんですが、結果としては業績が上向かないまま閉店してしまったんです。ただその1年間はがむしゃらにさまざまな仕掛けをしましたね。朝市のようなイベントや商品構成の変更、ありとあらゆることをしましたが、結局はダメで。最終営業日の閉店時間に、お客さまへ立礼をするわけです。長い間ありがとうございました、と。20時くらいだったかと思います。

――シャッターの前で社員一同が並ぶような。

萩原 はい。それでね、社員はみんな泣いているんです。私も含めて。最後の瞬間に来ていただいたお客さままで泣いている。そのお客さまからは「私たち、毎日ここで食料品を買っていたのに、明日からどうすればいいんですか」と言われて。そこで気付かされたのは、一度商売を始めると、儲かる儲からないの次元を超えるということ。営業を継続することが一番で、そのためには利益が必要だということです。その地域に根ざして、寄り添っていくことが大切なのだと痛感しました。自分の商売哲学にもすごく影響を与えた経験だったと思います。

入店客を増やす仕掛けを積み重ねる

――販促、宣伝畑が長いですね。

萩原 大半は販促か宣伝、そして催事といった〝仕掛ける〟部署に身を置いていました。

――百貨店の華といえば催事です。

萩原 自分が始めた催事で成功したものでいえば、大阪、名古屋という意外と取り上げられない切り口の物産展をそれぞれ企画しまして、これが当たりました。大阪は言わずと知れた食文化の宝庫ですが、名古屋もきしめんや味噌カツといった独自のものがたくさんあったので。

――失敗した事例もありますか。

萩原 10年近く前ですが、通信販売の会社と組んだものは、失敗でしたね。今だとまた違うのでしょうけど。

ただ、失敗についていつも従業員に言っているのは、イチロー選手だってなんだって、10回のうち7回はヒットを打てないのだから、失敗を恐れずどんどんやりなさいということ。3回当たったらもう大打者ですからね。

――東京・渋谷の本店長からMD企画部長を経て、16年に札幌店の店長となりました。

萩原 本店は、来店客は決して多くはありませんが、外商の売り上げがすごく多い。つまりお得意さまが多いということだから、その方々に響くような戦略や商品、催事の提案に力を入れました。

札幌店に赴任後は、逆に従業員へ「まず入店客数を増やそう」と声をかけています。売り上げを上げようとは一度も言っていません。

入店客を増やすには、何か楽しい仕掛けや催事があるとか、いい商品を置いているとか、人気を集める売り場が必要。それをめがけてお客さまがいらっしゃるので。増やそうとするなら、そのためのコンテンツをつくることになります。

――まず手をつけたのはどの部分ですか。

萩原 百貨店にとって入店客数のバロメーターは食料品ですので、まず食料品フロアの改装をしました。肉・魚・グロッサリーというセルフゾーンと呼ばれる部分の改装を16年7月におこなって。そのほかにも売り場やショップ単位でできる小さな仕掛けをたくさんやるよう、売り場のみなさんにお願いをしました。1つひとつは小さくても、100個集まったら大きな力になります。

その効果がはっきり出てきたのが昨年で、入店客数は前年比で104%。17年の売り上げも前年比で102%になりました。百貨店の売り上げは入店客数と比例しますから。

今の時代、全国的に見ても入店の増える店はたぶん少ない。札幌はインバウンドの力も当然背景にはありますが、部下も一生懸命やってくれていると思います。

地域と従業員のために保育所を設置

――札幌店の店長としてのミッションは。

萩原 私自身は、札幌店を通じて、札幌という地域を元気にしていきたいと思っています。そのためには地域に根ざしていかないといけないし、地域が抱えている問題に向き合い、その中で自分たちの立ち位置がどういうものかというのを考える必要があります。

そういう意味で最初にしたことは、企業内保育所の設置です。これには2つの狙いがあります。赴任した当初、報道で札幌市の待機児童が約800人も居るというのを耳にしたので、何か地域に役立てることができないかと思ったのが1つあります。それと百貨店は女性の労働力がとても大切です。出産のあと、育児休業中の従業員も貴重な戦力ですから、早く復帰してもらえるようにという思いもありました。ちょうど企業主導型保育事業という国の施策が始まる年だったこともあって、それに全国の百貨店に先駆けて手をあげたということです。

――Jリーグの北海道コンサドーレ札幌のスポンサーにもなったそうですね。

萩原 東京は地方から来た人たちも多いですから、1つのチームを地域一丸で応援するということになかなかなりにくい。でも札幌だと当然のようにみなさんがコンサを応援している。毎日のように報道もされています。われわれも道民と喜怒哀楽をともにしていくことが必要だ、と思いました。それでコンサの事務所を訪ねて、スポンサーになりたいのですが、と。

――東京の店舗でそういうことはしにくいのでは。

萩原 本部にも驚かれましたが、でもこのエリアで商売をしている以上、必要なことだと思いましたから。

百貨店は〝時代対応型企業〟と言われています。その時代に合わせていくことが必要で。商品や売り場、売り方についてはもちろんですが、保育所の設置やコンサへのスポンサードも含めて、その時代に対応したアクションであれば、やらないといけないんです。

グループ一体となってシナジーを出す

――今年10月に開業45周年を迎え、大規模な改装をおこなう予定です。

萩原 改装については上半期と下半期の二段構えになっています。まず上期は第1弾として3月15日に4~6階をリニューアルします。4月26日には、8階と9階の一部でこれまで大通地区で営業していた東急ハンズが移転オープンするほか、食料品売り場の改装もおこないます。

東急ハンズの移転については、われわれ東急グループが掲げている「ひとつの東急」というキーワードが前提になっています。これはグループの結束によるシナジー効果で、お客さまにより良いサービス・商品を提供しようということ。これまでは、同じ東急グループの企業が市内の別々の 場所で営業していました。これからは、駅前という立地を生かし、1つになった方が確実にお客さまに対してメリットがあります。

――ハンズはほぼビル一棟が売り場でした。移転で売り場面積は減りますか。

萩原 実は、そう変わりません。各フロアごとにレジスペースがあったものを集約できますし、百貨店側で販売してきた商品と重なる部分も調整できますから、ほぼ同じ面積を確保できる見込みです。

――そのほかの改装は。

萩原 今回、ハンズが入る8階にはもともと子ども服の売り場がありまして、これを5階に移設します。それもただフロアが変わるだけでなく、売り場のど真ん中、エスカレーター脇の一等地に大きな子どもの遊び場を設けています。

ご家族で来店された時に、フロアの中央でお子さんを遊ばせて、親御さんはその周りで買い物を楽しむことができるようにしています。

――商品ではなく遊び場ということは、売り上げを生み出すスペースではない。

萩原 はい、そこをあえての試みです。入店客数を増やす仕掛けがあれば、結果として売り上げは上がると考えています。そのほかにも乳幼児を連れたお客さま用の休憩室も、市内では最も充実したものをと考えて設置します。

――本誌では以前に、東急グループを含めた札幌駅前の大規模再開発が水面下で動いているという記事を掲載しました。

萩原 今はまったくの白紙です。札幌市が中心になって駅前再開発をするということは発表されていますが、北海道新幹線の駅がどこになるか、まだ決まっていません。それが決まらないと、市も再開発の道筋をつけることは難しいでしょう。われわれは再開発の方向性が示された後、確認し、対応を考えることになると思います。

=ききて/清水大輔=