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Interview

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道銀・堰八義博頭取の頼もしい進軍ラッパ
公的資金完済!苦境に耐えて築いた骨太・高収益体質
掲載号:2009年10月号

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堰八義博 北海道銀行頭取

ほくほくフィナンシャルグループが公的資金を1年前倒しで完済した。これによってグループ傘下の北海道銀行は今後、積極的に攻めの経営を展開していくことが可能になった。そこで堰八義博頭取に、道銀の経営戦略を聞いた。

祝杯のかけ声は乾杯ではなく完済

――北海道銀行と北陸銀行の持ち株会社「ほくほくフィナンシャルグループ(FG)」は8月27日、国から注入された公的資金の残額200億円を返済、これで1400億円を完済しました。
堰八 北陸銀行が11年前の1998年に劣後ローン200億円、99年に750億円の優先株を入れま した。北海道銀行が公的資金を入れたのは、2000年3月です。私どもと北陸銀行が経営統合したのは、04年。その時点では、都合1400億円の公的資金 を抱えて、新しい銀行が誕生しました。
公的資金は国民の税金ですから、ほくほくフィナンシャルグループは、それを間違いなく、しかも早期に返済させていただくということを、経営の大きな課題としてスタートしました。
今回、約1年前倒しで完済することができ、経営をつかさどるものとしては、大きな義務を果たすことができ、ひとつ肩の荷が下りたという気持ちです。
完済するというリリースを8月24日、行内にしたときはみんな喜びました。職場の仲間で一杯飲む際は、「乾杯」ではなく「完済」と言って祝杯をあげていたようです。
i2  ――この間、金融機関は厳しい状況に追い込まれた時期がありました。道銀はそれを見事にクリアし、今日に至ったわけですね。
堰八 一番感謝しなければいけないのは、お客さまに対してです。引き続き道銀をご愛顧いただいた。「道銀、頑張れよ」と、いろいろな局面で声を掛けていただきました。私どものお取引先の会である「らいらっく会」を中心に、ご支援をいただきました。
また、いろいろな制限がある中で我慢をしながら日々、営業の努力をしてくれた役員、職員たちにも「よく頑張ってくれたね」と言いたい。
もちろん、減配の中で株を持ち続けてくれた株主の皆さまにも感謝の気持ちでいっぱいです。公的資金を返した後も、そういう人たちに恩返しをしていきたいと考えています。
――取引先の企業が、道銀株を買い、支えてくれたのは、道銀が必要だと感じていたからです。
堰八 2000年3月に北海道銀行は公的資金を入れましたが、その前年、1999年7月に537億円の優先株を発行しました。
97年末に拓銀が破たんし、私どもも残念ながら経営的に財務基盤がやや弱くなっていました。拓銀が破たんした上、万一にも道銀ということになると、地元の 金融機能がダメージを受けるだろうと、お客さまの方も相当心配されたのだと思います。道内の金融システムをこれ以上、混乱させることができないと考えたの ではないでしょうか。それで、お客さまの方も決して楽な状況ではない中、優先株という形で自己資本の充実に協力をしてくれたのだと思います。
――今後の営業展開についてうかがいたい。
堰八 ほくほくFGを立ち上げた時に、統合の大きな目的を3つ掲げています。営業基盤の強化、効率経営、経営基盤の安定化です。
公的資金を借りている間は、返済の原資をきちんと積み上げていく必要があり、毎年最終的な利益水準も、公表している経営健全化計画の7割以上を達成する義務がありました。それ以下だと、業務改善命令を受けるという縛りがありました。
「本来はこういうことに投資をして、もう少し収益も上げていけるのになあ」ということにも、いろいろな制限がありましたので、抑制方針でやってきました。一言で言うと、「必要最小限のものをやってきた」わけです。
これまでは「どうしてもやらなければならないところにいくら投資できるか」ということでしたが、これからは「こういったところに投資すれば、さらにわれわれの営業基盤が広がっていく」ということへ積極的に投資を行い、投資した以上の成果を出すようにしていきます。

株主配当も増やし職員の処遇も改善

そのためにまず、お客さまの利便性をより高めて、使い勝手のいい銀行になって行かなければならない。その1つが営業のネットワークの拡充です。店舗の空白 地帯は、札幌市内にもまだあります。札幌以外でも一部あります。そういったところへ積極的に展開したいと思っています。先日も中標津に札幌市以外では17 年ぶりとなる新規出店をいたしました。
それに合わせて、老朽化した店舗の建て替えもしていかなければなりません。8月24日、小樽支店が五十数年ぶりに新築オープンしました。年内には白老支店 も新築になります。   また、いくら新しい箱をつくっても、それだけではだめです。お客さまに最適、最良の商品をいろいろとプレゼンテーションしていく人が必要です。その人員に ついても拡充していきます。道銀はピーク時、正社員が3400人いましたが、いまは1800人しかいません。今後は500人強いる契約社員で能力のある人 については正社員に積極的に登用していくことを考えています。主に金融機関の経験がある人の中途採用にも常時、門戸を開いています。さらに新卒の採用も従 来よりも増やす方針です。
――道銀は高収益体質の金融機関だと思います。
堰八 ポスト公的資金返済を課題としていたので、道銀、ほくほくFGの強みである効率経営、高収益 体質ができあがったと思います。地銀の中でもトップクラスです。これを維持していくことが重要です。経営トップとして、これは行内で前から言っていたので すが、「近いうちに公的資金を返済するが、返してしまってタガが緩んでしまって、経費がどんどん出ていくのは駄目だ」と。私はオーバーヘッドレシオ (OHR=業務粗利益経費率)を重視する経営をしています。これからもそういう銀行でありたい。
それから株主さまへの配当をきちんとしていきたい。これまでは普通株の配当も抑制的で、今年6月の配当も3円で我慢してもらっています。ここをやはりもう 少しレベルを上げたい。どこが適正かという問題はありますし、時期についても断言できませんが、なるべく早めに5円程度の配当にもっていきたいと思ってい ます。合わせて職員に対する処遇、いま我慢してもらっているところを少しでも改善していきたい。   営業力の強化ということでは、先ほどのネットワークと、それに個人リテール戦略ですね。ここはやはり行員の頭数が必要です。そして支店の機能も、お客さま が相談しやすい支店にするための、インフラが必要です。そのためにいま、パーソナル支店シリーズを展開しています。昨年、屯田、あいの里をオープンしまし た。12月には宮の森パーソナル支店ができます。札幌市内には渉外の担当を置いていない、お客さまに窓口へ来てもらう支店がいくつもありますが、そこに パーソナル支店の機能を付加していきます。パーソナル支店化です。これを合わせてやっていきたい。

海外進出と農業を積極的に支援

――海外進出の心強いサポート役でもありますね。
堰八 私どもの海外戦略は、北海道のお客さまにとって必要な仕事のパートナーを探し、仲立ちをする ということです。北海道と同じような気候・風土のところとビジネスチャンスが生まれてくると思いますので、中国の瀋陽とロシアのユジノサハリンスクに駐在 員事務所を出しました。瀋陽は非常に北海道と似た気候のところです。ロシアも近くて遠い外国だったが、だんだん変わってきています。これは北海道銀行らし い戦略だと思っています。
北海道はちょっと外に目を向ければ、もっともっと近いところにパートナーになり得る存在があります。やや時間がかかっても、そういったところにきちんと足 がかりをつくっておくことが必要と思い、そういう戦略を進めています。現在、北陸銀行がシンガポール、上海、ニューヨークに駐在員事務所を持ち、大連の富 山県事務所には北陸銀行の行員が、北京の札幌市事務所には北海道銀行の行員がそれぞれ出向しています。グループでこういったネットワークを利用、協力しな がら、お客さまの役に立つ海外ビジネスを展開していきたいと考えています。
10月7日から10日まで、私どもの取引先約70社、総勢100人が参加し、ユジノサハリンスクで情報交換会を行います。それぞれの産業分野でどのような ニーズがあるのかをイメージしていきたいと思っています。想像以上に参加したいというお客さまが多くて非常にビックリしています。
――地銀同士の連携は今後も増えていくのですか。
堰八 第一地銀は全国に64行ありますが、実業のところにもっと踏み込み、お互いにビジネスを一緒に やろうということで、勉強会、提携関係が活発になっています。メガバンクは全国を網羅していますが、一個一個の密度は薄い。地域ごとの密度の濃い地銀が 64行集まり、強力なお互いのネットワークを活用するならば、非常に重要な武器になります。
――アグリビジネス支援にも取り組んでいますね。
堰八 ここにいま非常に力を入れていて、中標津に支店を出した目的の1つにそれがあります。北海道 の1次産業をより成長させるため、民間金融機関としてできることはたくさんあります。行内にアグリビジネス推進室も設置しました。農業支援をどんどんやっ ていきたいと思っています。
農業は非常に楽しい、頑張れば豊かな暮らしができる、という産業に育てていかなければ、今後も後継者問題が解決しません。いま40%の日本の食糧自給率を高めようとするとき、どこが貢献できるかといったら、北海道しかありません。
――台湾の銀行カード会社と連携しましたが…
堰八 台湾からの観光客は年間、30万人弱います。北海道を訪れる海外の観光客の中では一番多い。 彼らに北海道で観光、ショッピングなどをより楽しんでもらうため、台湾銀行協会と台湾のATMのネットワークを運営する会社と業務提携することになりまし た。遅くとも来年1月までにはシステムが完成します。端末を置いてもらえば、台湾の人たちが自国の銀行のキャッシュカードで買い物ができるようになりま す。いわゆるデビットカードです。また、そのキャッシュカードで現金そのものを引き出すことができます。北海道銀行が用意するATMでそのカードを使う と、レートを自動的に計算して日本円が出てくるようになります。これは全国で初の試みです。
いままで申し上げてきた戦略を通じて、よりいっそう北海道経済発展のために役職員一丸となって頑張っていきたい。

=ききて/酒井雅広=