「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

近藤龍夫が語る「北海道の時代」
農業・観光・新幹線・食料備蓄…
掲載号:2009年1月

photo

近藤龍夫 道経連会長

「北海道は時代が評価する価値を全て持っている。新しい『北海道の時代』は必ず来る。だがそのためには10年、20年、30年の努力が必要だ」-------北海道経済界のトップリーダーの座に就いて半年。近藤龍夫北海道経済連合会会長(北電会長)にご登場願った。

北海道の持つ価値を再確認しよう

--------道経連会長に就任されて半年たちました。少しは慣れましたか。
近藤この仕事は見方によっては人様のやることに口出しする仕事。生来無器用ゆえにその作法がなかなか身につかず、いつになったら慣れるのか、慣れないまま終わってしまうのではないか、(笑)そんな感じですね。
--------世界同時不況の大波が日本にも押し寄せ、北海道もまたきわめて厳しい状況です。2008年をふり返って、今後の方向を。
近藤全国的に景気が上向き傾向といわれた時期にも、北海道だけは取り残されてきました。そこへ2008年は年初から原油や原材料・資材価格が高騰し、大きなダメージとなり、さらに年後半のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機です。
その影響がじわじわと出ており、数年来続いている公共工事の縮減と相まって、道内経済の疲弊感が一層強まった年でした。
そうした中、明るい話題として、北海道の将来を大きく変える契機となる新しいチャンスにも恵まれました。その1つは、北海道洞爺湖サミットです。北海道の知名度アップと官民連携による事業運営ノウハウの蓄積は将来にわたって北海道の財産になると思います。
もう1つは、エネルギー、食料、環境の重要性が認識され、これまでの価値観が歴史的に大きく転換した年で、地球温暖化防止対策の推進が急務となっています。
こうした状況の中で北海道は、いま時代が価値あるものとして評価する食料、水、自然環境をすべて備えているんです。私たちはいま一度、北海道の持つ価値を再確認し、この価値を実際の経済価値に変えて行く努力を真剣に継続していく必要があると思います。

「大規模食糧備蓄基地」を

--------食の安全にかかわる事件が多発して、あらためて北海道の食や、食糧自給率が広く認識されました。
近藤カロリーベースでわが国の食糧自給率は約40%で、主要先進国の中で極めて低い水準にあります。品目別には米以外の小麦13%、大豆5%、飼料25%などが特に低い。
 一方、北海道の食糧自給率は、200%あり、国内食料供給の2割を生産し、わが国の食料の供給基地として一定の役割を果たしており、今後とも、日本の食糧基地としての役割を果たしていくために、北海道の農業を更に発展させていく必要があります。
1つは、自給率を上げるため、すなわち量の確保の観点から輸入依存度の高い小麦や大豆などの生産量を上げる重点地域として、新たな国の施策のもとで、国 の支援・協力を得ながら取り組んでいく必要があります。もう1つは安定供給の確保のため、不測の事態に備えた大規模な国の食糧備蓄基地を、北海道に設置す ることが望まれます。
食糧備蓄基地については、海外にはいくつもの事例もあり、道経連でも10年ほど前から協議会を設けて、雪氷冷熱エネルギーを利用した省エネで食味を落とさない貯蔵システムによる大規模貯蔵基地の建設を、国に働きかけています。
--------農業はじめ北海道の食料産業の方向性を。
近藤農業、水産業、食品加工業などの北海道の食料産業全般に言えることですが、道内経済の活性化の ためには、量を供給するだけではダメで、やはり食料品に「付加価値をつけて売る」という取り組みを積極的に展開しなければいけません。1次加工だけではな く、道内で最終商品を完成させ、付加価値を付けて道外に売っていく必要があります。そうしなければ、道民の雇用を確保し、生活の質を向上させることはでき ません。 最近の健康への関心の高まりを受けて、道産の食材から健康機能性食品を作っていこうという動きもあります。
例えば、タマネギは血液をサラサラにするとよく言われますが、それはタマネギの“ケルセチン”という成分にその作用があることが分かっています。
そこで、北見ではオニオンスープを粉末にして紙のスティックに入れて販売していますし、栗山町では北大農学部を卒業した若者がベンチャー企業(植物育種 研究所)を立ち上げ、ケルセチンの含有量が普通のタマネギの1・5~3倍もあるタマネギを開発し、「サラサラレッド」と名づけて全国に販売しています。

戦略産業の柱は「農業」と「観光」

kondo_3--------産学官連携のプロジェクトが進んでいる。
近藤ノーステック財団と北大では、道産食材の健康機能性に注目し、健康食品の開発や化粧品・医薬品の原料を見つけ出していこうという研究開発プロジェクトが産学官の連携によって進められています。
道産食材の中から、抗アレルギーや免疫機能の改善や認知機能の改善などに効果のある食材を探し出し、その効能を科学的に解明して、健康食品や化粧品・医 薬品などを道内で生産し、全国的に販売していこうという取り組みです。1次、2次、3次産業が連携し、北海道の食の産業活性化を図る必要があります。
--------近藤会長は、食・農業とともに観光を北海道の戦略産業ととらえておられますが、観光産業の発展の方向性、対策を。
近藤観光は、農林漁業が形成する景観、そして農畜水産品、食品、さらには商業、飲食店、運輸、金融等多くの産業と密接に結びついており、その経済的波及効果は非常に大きい。
道外からは外国人を含めて年間6000万人を超える観光客が訪れ、観光に伴う経済波及効果は約2兆円にも上ります。近年、外国人観光客はアジア地域以外 にもオーストラリア人スキー客が増えるなど多国籍化しており、昨年度の外国人来道者は71万人でその延べ宿泊者数が187万人と東京都、大阪府に次ぐ規模 にまで成長しています。
しかしながら、景気の低迷により、国内観光客は「安い、近い、短い」の傾向を高め、さらに円高の影響を受けて外国人の来道者が減少してきており、厳しさ を増しつつあるのも事実です。また、北海道の観光産業は、嗜好が変わりつつある国内観光客や急増する外国人観光客への対応が遅れ、またお客様の声としてホ スピタリティーの不足などの課題を抱えています。
専門家の意見を聞くなり、内外の良好事例に学ぶなりして改善していく必要があると思います。
北海道観光の発展のためには、関連する分野が広いだけに産業界全体が協力して取り組む必要があります。
そこで08年4月に、官民が一体となった「北海道観光振興機構」がスタートしましたが、北海道観光振興の中核的な役割を担い、民間のノウハウを活用し、1次産業や2次産業とも連携した戦略的な観光事業の推進を期待しています。
道経連としても積極的にバックアップしていきたい。
--------地方分権、国の地方出先機関の見直し、北海道開発局廃止論について。
近藤国の地方出先機関の見直しの議論は、北海道の場合、道州制に直結することから、道州制における国と道州の役割分担が明確に整理されないまま、国の地方出先機関をどうするかといった行政改革における組織論だけが先行しているのではないかと大変危惧しています。
二重行政の撤廃には異論はありません。しかし現実は、国の出先機関の業務と地方の業務の多くが二重に重複して行れているわけではありません。複数ある河 川の管理などで類似する業務について規模や特性に応じて国と地方が分担しています。あたかも多くの業務がダブって行なわれているように誤解されておりま す。地方の事情や将来の道州制を念頭に置き、地方の意見も聞き慎重に進めていただきたい。
北海道開発局廃止論が地方分権改革の組織論や二重行政の議論の中で、やり玉に挙げられていますが、東北や北陸などの各地域ブロックに置かれている地方整 備局や地方農政局がそれぞれ実施している国直轄の公共事業を北海道開発局がすでに一元的に実施しており、ある意味で行政改革が本州より進んでいるともいえ るんです。
北海道開発局の廃止論及び国の出先機関の見直しの議論において、私たち道民がしっかり認識しておかねばならないことがあります。 それは、北海道は社会 資本の整備、特に高速幹線道路の整備が遅れており、国の計画の4割程度しか完成しておらず、本州の約7割を大きく下回っているという現状です。広大過疎、 少子高齢化の進む北海道だからこそ、高速幹線道路の整備により、地域間の時間距離を短縮することで、道民生活の平準化・維持向上や地域産業の活性化へつな げていく必要があります。
また地方に細切れで散在している道路が高速幹線道路とつながることで、ブランチ道路としてやっと生かされる。札幌一極集中の軽減にもつながることから も、整備が急がれます。そのような状況の中で、これまで課題解決に果たしてきた北海道開発局の役割・貢献は大きいものがあります。
もし道州制となれば開発局の現体制が維持されることはないでしょう。しかし、まだ本州に遅れをとっている道路などの社会資本整備を推進するためには、地 方分権、道州制導入の過程において、いかに開発局のこれまでの機能を維持しつつ道州制の中に移転させていくかが極めて重要な課題であると考えています。

「北海道の時代」を創るために

--------北海道新幹線の札幌延伸問題を。
近藤新幹線は、まさしく日本列島の高速交通ネットワークの背骨に当たり、北海道の中心都市「札幌」 までの延伸が約束されて当然と考えています。北海道の特性を生かした食料、観光、環境で日本の発展に貢献するためにも、中央との陸路の時間距離をより短く することが重要であり、必要不可欠な社会資本です。
--------最後に新しい年の展望と抱負を。
近藤原油の値下がりは明るい材料ですが、一方で、急激な円高の影響が懸念され、世界経済の混乱が収まる兆しも見えません。北海道経済も厳しい状況が続くと思いますし、予断を許さないというか、先を見通すことはなかなか難しい状況です。
「10年偉大なり、20年おそるべし、30年にして歴史になる」という言葉がありますが、私は、この言葉がいまの北海道にとって本当に必要なのではないかと思っています。
世界的にエネルギー資源や食料危機、地球環境問題がクローズアップされる中で、私は必ず「北海道の時代」がくると信じています。 北海道が持つ、豊かな 自然、食材、様々な資源などの優位性を生かして、来るべき「北海道の時代」に備える。10年ではできないかもしれない。20年やってもできないかもしれな い。しかし、30年努力すれば成果となって表れる。それぐらいの意気込みでやらない限り新しい北海道は創れませんし、その覚悟で取り組んでまいります。
--------ありがとうございました。

=ききて/干場一之=