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Interview

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農林業と連携 北海道の漁業は面白い!掲載号:2015年11月

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川崎一好 北海道漁業協同組合連合会代表理事会長

漁業規制、水産資源の減少など、水産王国・北海道は大きな曲がり角に立たされている。待ち受ける荒波をどのように乗り越えていくのか。川崎一好北海道漁業協同組合連合会代表理事会長に、あるべき漁業の将来像を大いに語ってもらった。

北洋サケ・マスは精神的支柱だった

――来年からロシア海域でのサケ・マス流し網漁が禁止されます。
川崎 沿岸での定置が多いカムチャツカと、沖合の流し網を主体とするサハリンだと、漁業に対する考え方が大きく異なります。今回、そうしたロシア側の国内事情により、一方的に流し網漁が禁止されました。
サケ・マス流し網がおこなわれる北洋は、大昔から2代、3代と、先人たちが守ってきた漁場です。
サケ・マスは道東の沖合漁業者の春漁の中心でした。自分たちの漁業に対する心の支柱が折れてしまったわけです。筆舌に尽くしがたい状況です。
――北洋で水揚げされるサケは〝ほんちゃん〟と呼ばれ、とてもおいしいと評判でした。
川崎 流し網で捕ったサケは、船上で塩蔵あるいは氷温処理されて陸上に運ばれます。鮮度のいいうちに、素早く1次処理をおこなっています。
定置、沿岸で捕れたものと比べれば、脂の乗りが違います。あのおいしい魚を消費者のみなさんに提供できなくなるのは、とても残念です。
――サケ・マス流し網漁禁止に、道漁連は、どのように対応していきますか。
川崎 来年からこの漁業ができないとなると、根室を中心とした道東の浜に、経済、雇用などの面で大きな影響があります。
サケ・マスに代わる代替種はないのか。また、サケ・マスを捕るために、他の漁法があるのかなどを、国や道、漁業者たちと一緒に模索していきたい。
サケ・マスはIQ品目(輸入割当品目)に入っていないので、国際的に自由に取り引きされる魚種です。
現在、ノルウェー、チリなどから輸入されています。〝ほんちゃん〟がなくなった後、消費者がどのサケ・マスを選択するのか。われわれも興味を持っています。
――ここ数年で、大衆魚と呼ばれた魚の値段が高くなった印象を受けます。背景には、海の環境の変化があるのですか。
川崎 確かにその影響はあると思います。いままでいなかった魚、哺乳動物がどんどん北海道にあがってきています。その代わり、北海道が主漁場だった魚も北へ北へ向かっています。
ホッケやスケソウダラなどはかつて、沖合の底引き船、沿岸の定置、刺し網で、わりと豊富に水揚げされていました。ところが近年、資源的に少なくなってきました。函館で水揚げされたイカは道南にとどまることなく、いきなり羅臼などの道東沖で漁場を形成するようになりました。
その一方、4、5年前からブリが本格的に北海道で捕れ始めています。道南が中心だったブリが、いまでは稚内沖を通ってウトロ、羅臼沖まで回遊しています。今後、寒ブリではありませんが、天然ものとして大事にしていかなければなりません。
よく、魚の生息域が北上したことで、「ほかの魚が来るようになるので、北海道はいいだろう」と言われます。加工場など、迎える側の整備もおこなわなければならず、そんな単純な話ではないんです。

子や孫に豊かな海を残していく

――日本だけではなく、世界規模で資源管理を考えていかなければいけません。
川崎 日本の漁業は、魚を捕ることに関する技術、海洋での処理技術は優れたものがあります。国内だけではなく、多くの漁業者が資源を求めて、全世界の海に繰り出していました。しかし、資源そのものが少なくなっており、それを回復させる考え方が国際的に定着してきました。
今年9月、札幌で中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の小委員会が開催されました。太平洋クロマグロの資源管理を考える国際会議です。30㌔以下のマグロの漁獲を規制することで成果が見られなければ、禁漁を含んだ思い切った資源管理をすることになりました。
今が旬のサンマは、対前年で見ると、約60%弱の漁獲数量にとどまっています。先般、初めて公海上のサンマの資源管理を議論する国際会議がもたれました。もっと早く開催するべきでしたが、ついに公海上のサンマの規制を検討しなければいけない状況になってしまったということです。
資源管理に甘さがあったことは、われわれ漁業者も反省しなければなりません。豊かな海を子どもや孫に伝え、残していくことが使命であり、もっとも大切なことです。
――そうした中、北海道は栽培漁業が盛んです。
川崎 北海道はエサをやらないで育てる〝無給餌型〟が主流です。魚を囲い込む本州の養殖漁業とは異なります。ホタテ、秋サケなど、人工的に増やした稚貝、稚魚は、大海原の資源をエサにしています。技術的にかなり確立されている根付けの養殖事業は、北海道漁業の強さになっています。
資源管理の中で、絶対漁獲量をどこに置くのかがカギになります。たとえば、100あるうち55まではいいが、60まで捕れば資源が下降線をたどる。魚種によっては、そうしたデータが出ています。網の目を大きくしたり、漁業ができる期間を短くし、次へ育っていく稚魚、稚貝を大事にする。
資源管理をしっかりし、漁場を整備する。われわれは適度に資源を使わせていただく。1歩も2歩も未来を見据えた漁業が大事です。漁業者、道、水産庁も、資源回復に向けて舵を切り出したところです。
それが消費者のみなさんに安定した海産物の供給につながるのではないでしょうか。

地域にポリシーを持った1次産業を

――川崎会長は厚岸漁協の組合長でもあります。地元産のカキ「カキえもん」を全国区にするなど、地元海産物のブランド化に取り組んでいますね。
川崎 厚岸湖は汽水湖で、昔から天然のカキやアサリが成育していました。しかし、1983年頃までに天然ものが姿を消し、養殖事業に代わっていきました。当時、カキは宮城県の松島から購入する稚貝に頼り切りでした。地元の稚貝を一からつくり、育てていくことで、純厚岸産のカキえもんが誕生しました。そういう海産物があれば、厚岸に足を運んでいただけると考えています。
その地域、地域のローカル的な特徴を出したものが、これからどんどん増えてくるのではないでしょうか。
――なぜですか。 
川崎 農業も同じですが、地域を武器にしたブランドが消費者のみなさんから喜ばれるからです。一見、魚や貝類は、どこで水揚げされても同じように見えます。扱い方や育て方が異なれば味も違ってきます。その地域を代表する魚や貝をどのように育てていくのかが大切です。
私は、浜と農林業がコラボレーションする時代になっていると考えています。
1次産業に生きるわれわれは、自然と共存し、その恵みを生業にさせていただいています。
生産性だけを求めていくと不漁、不作の時に嫌になってしまいますが、われわれ1次産業従事者はそうではありません。
自然の中で魚介類をとったり、作物を育てたりしているという誇りを持っています。その根本的な思いは農業も漁業も林業も同じです。
道内の海に面している市町村には、漁業だけではなく、農業、酪農、林業もあります。こんなに恵まれている地域は北海道以外にありません。
家畜を飼うにしても、酪農家だけでいいのかということです。たとえば、ブランド牛を育てる場合、地元漁師がとったコンブを食べさせてみる。塩分も必要になるでしょう。また、農家の人たちも加わった形で、養殖事業をおこなう。
通常の専門的な仕事は、それぞれに携わる人たちが担当します。そして地域を売り出すときには、地域の農業、漁業が一緒になるのです。
つまり、その地域、地域にポリシーを持った1次産業をつくりあげるということです。これが私が考える1次産業の理想の形です。
現在、地元の厚岸では、農協、漁協に商工会を加えて頻繁に集まっています。そして将来について語り合っています。
1次産業は、少子高齢化で後継者、担い手不足に悩んでいます。労働力がどんどん少なくなっていくのは避けられない面があります。
そうした中でも、お互いに知恵を出し合えば、楽しい、子や孫たちが住みたいまちづくりができるような気がします。
まだまだ北海道の海と山は強くなることができます。さまざまな可能性を秘める北海道の漁業は、全国のどこよりも夢があり、面白いと思っています。

道産海産物を世界に羽ばたかせる

――道内海産物の海外輸出については、どのように考えていますか。
川崎 いままで海外に輸出してきた品目は、ホタテ、秋サケが中心です。冷凍、加工技術がとても進歩しています。以前なら、生ものを世界に送れるなど、誰も想像していませんでした。ほかの魚種についても、世界に羽ばたかせるチャンスがあります。
その場合、ただ単に魚を輸出すればいいのではありません。
魚は捕ってすぐではなく、それから1日、2日が経過し、脂が乗り切ったときがおいしいケースもあります。活締めにより血抜きをしっかりおこなう。日本が培ってきた技術を世界に伝道させることも必要ではないでしょうか。日本人は魚を扱わせれば世界一です。おいしく食べるコツを知っているのです。
――ここ数年、中国、台湾、東南アジアなどから、多くの観光客が北海道を訪れています。
川崎 道漁連でも、東南アジアの国々の食品スーパーや日本料理店などに、ホタテやカニなどを冷凍コンテナで輸出しています。現地では、北海道の食品に「安全・安心」というブランド力があり、好評だと聞いています。
高橋はるみ知事は、道産食品輸出1000億円の達成を掲げています。こうした動きと連動させ、道漁連が海外に持つネットワークを生かしながら、さらなる売り込みを図っていきます。
――本日は、お忙しいところありがとうございました。

=ききて/前田=