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Interview

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農政、災害復興、輸出促進…掲載号:2018年12月

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吉川貴盛 農林水産大臣

吉川貴盛衆院議員(道2区)は、第4次安倍改造内閣で農林水産大臣に就任した。道内からの閣僚誕生は6年ぶり。攻めの農政を進めながら、胆振東部地震などの災害復興にも力を入れる。(取材日=10月26日)

初心を忘れず、自然体で臨む

――吉川大臣は就任会見で、ご自身を「浅学菲才の身」と表現されていました。現在の心境はいかがですか。

吉川 常に「浅学菲才の身」だと思っていますよ。北海道からの農林水産大臣は12年ぶりになりますが、気負わず、自然体でこれまで農林分野に携わってきました。農水大臣を拝命したかといって、その気持ちは変わりません。

――農水大臣就任に際して、安倍晋三総理からはどのような言葉がありましか。

吉川 安倍総理からは「農林水産関係は、成長戦略であると。しっかりやってください」というお話をいただきました。

――北海道の主力産業は一次産業です。大臣にも期待する声が多く届いているのでは。

吉川 期待をしていただけるのは、大変ありがたいことですね。私は初心を忘れずに、しっかりといろいろなことに対応できれば、と思っています。

農業者、水産、林業関係の方々の思いを聞かせていただきながら、しっかり取り組んでいきます。

――農政は裾野が広く、複雑です。さまざまな課題があると思いますが、今年相次いだ自然災害の復旧、復興対策が急務になります。

吉川 今年はものすごく災害が多い1年でした。大阪北部地震があり、7月に西日本豪雨。それから台風21号、北海道の胆振東部地震です。さらに台風24号もありました。

まず、農林水産省としては、営農をしているみなさんのことが第一です。ですから、迅速に対応をしなければならない。

対応策をできるだけはやく提示し、来年も農林水産業で頑張ろうと。そういう気持ちを持っていただかなければならない。

そのため、私は大臣就任直後に被災地域を訪ねさせていただきました。その1つとして、震源地に近い厚真、安平、むかわの3町に足を運び、みなさんと率直に話をしてきました。

――胆振東部地震では、北海道のほぼ全域が停電しました。搾乳ができなかったり、生乳を廃棄せざるを得ない事態になりました。今後は防災対策も大切になります。

吉川 農林水産大臣を拝命する前に、党のほうで農林・食料戦略調査会の会長代理をしていた際に、防災対策のまとめをさせていただき、それを確実に実行していくことが大切です。

道東などの酪農地帯は、地震による大きな被害はありませんでしたが、停電という二次的な被害を受けました。

酪農において搾乳には搾乳ロボットや、生乳を冷やしておくためのバルククーラーという設備も必要です。どちらも動かすには電気が必要です。乳業工場も停電のためストップし、生乳を廃棄せざるを得なくなりました。

残念ながら制度上、廃棄した生乳そのものを補償する制度はありませんが、国として、これからの営農に差し支えのないように、いろいろな形で支援策をまとめました。

今後、搾乳された貴重な生乳が、停電によって廃棄されることがないように、非常用電源の予算もしっかりつけさせていただいた。災害時には、JAから個人の酪農家に非常用電源の貸し出しができるというものです。かなりきめ細かな対策ができました。

農協改革で尊重するJAの自己取組

――吉川大臣はTPPの交渉にもずっとかかわってこられました。アメリカとの物品貿易協定(TAG)の交渉には、どのように臨まれますか。

吉川 われわれ農水省のスタンスは、有り体にいいますと、TPP以上の水準は絶対に譲れませんね、というものです。

今後、地方農政局等で、説明会を開催します。私自身も生産者のみなさんが不安にならないように、しっかり説明責任を果たしていくことが大切です。

――政府が進める農協改革については。

吉川 農協改革では、全国的に自己改革を積極的に展開していただいていると思います。あくまでも、JAのみなさんの取り組みを尊重していくことが大切です。

19年から、全国のJA中央会の組織のあり方も変わります。「JA中央会」という名称は使えますが、農業協同組合連合会という形になります。系統の全農と呼ばれる団体も、資材の値下げや、農生産物の直接買い取りも増やしてもらっています。

北海道の109の単位農協、それぞれ地域の連合会がありますよね。それぞれ話をうかがっても、みなさま工夫をされていて、どうすれば農家の所得が上がっていくのかを、しっかり考えておられる。そういう意味では、農協改革については心配していません。

その一方、後継者、担い手不足という問題を全国的に抱えています。農業所得向上を図るための農協改革を加速化させていくのは、われわれに課せられた大きな仕事です。

道産チーズは世界に通用する

――最近、「スマート農業」という言葉が聞かれます。

吉川 これは、これからの日本農業の大改革です。スマート農業は意外と誤解されていて、大規模に経営している地域だけに通じると思われています。ドローンの使い方も、いまは補助者がいなければ農薬散布をできない。そうした規制をこれから外していきます。今後は大規模、大区画だけではなく、たとえば山間地域でも、ロボットによる野菜や果物の収穫作業の実用化を目指す。実用化に向けた試験的なことは、すでにおこなわれています。

わが国ならではの技術を駆使した農業が進んでいく。世界からも注目されると思います。できれば林業、水産にもひろげていきたい。

――道内産品で売り込みたいものはありますか。

吉川 たとえば、日本とEUとのEPAが来年2月に発効が予定されています。北海道だけで取り上げると、乳製品がどんどんEUから輸入されて、北海道内の生産者は苦労するんじゃないかと。そう言われていますが、決してそうではありません。

いま、EUに牛肉は輸出できますが、豚肉、鳥肉、鶏卵、乳製品は輸出できません。動物の検疫などEUと協議しながら解決し、第三国リストに載った暁には、一定の条件を満たせば輸出が可能になります。

TPPの経済連携協定対策本部が自民党にあります。私はその事務総長として、ベルギーに何度も足を運んで、折衝を重ねてきました。

競争力をつけることによって、チーズも負けないと思いますよ。北海道でつくっているチーズは美味しい。

私はよく言いますが、塩分控えめのチーズだと。日本、北海道のチーズはすばらしい、と評価をいただけるのではないでしょうか。早ければ、来年あたりから輸出を可能にしていきたい。

大切なのは“攻め”です。守りだけじゃありません。輸出可能な状況になったら、今度は攻めていく。日本、北海道の農業にとっては必要な部分だと思っています。

=ききて/前田圭祐=