民主党はマニフェスト詐欺だ
――政府の2010年度予算案をどのように評価しますか。また、民主党はマニフェストを予算に反映したと考えますか。
谷垣 非常に迷走していますね。概算要求が95兆円です。それに対して、谷垣 がおそらく37兆円。税外収入が10兆円と言ってますが、これはかなり厳しいと思います。国債発行額は44兆円ぐらいのようです。あらあら足すと、これで91兆円ですが、それも簡単ではない。4、5兆円のギャップが生じます。
暫定税率や高速道路財源をどうするかなどの話が出ていましたが、このままでは民主党のマニフェストはかなりの部分が実施できない。公約を守るためには、大量の国債を発行せざるを得ないと思います。
なぜそうなったかといえば、かなり無理なマニフェストを予算案に上乗せしたからです。「財源なんか自民党政府の予算を組み替えれば出てくる」と野党時代に民主党は主張していました。言葉は悪いですが、“マニフェスト詐欺”みたいなことになっているのではないでしょうか。
仕分け等々に対する評価はあると思いますが、むしろこういう時期ですから、わが国の限られた谷垣 をどういうふうに資源配分をしていくか、その全体像を明確にすべきです。しかし、そういう機能がいままでの議論の中では弱いと思います。これは菅(直人)さんの国家戦略局の問題かもしれません。
? 同じ予算、景気対策をするにしても、どういう方向に持って行くかというメッセージがきちっと出ているのと出ていないのでは質が違ってきます。
――内閣の意志が統一されていないからでしょうか。
谷垣 そういうことだと思います。結局、子ども手当など個々の政策はあるけれども、国の全体像を指し示す政策が弱い政権だと感じます。
――もともと民主党は、「財源は大丈夫か」という声に対して「埋蔵金がある」と言ってました。しかし、実際に政権を取ってみたら埋蔵金は思ったほど掘り起こすことができなかった。
谷垣 “埋蔵金伝説”というものが、雲散霧消しつつあるということかもしれませんね。
――では、予算編成はどうあるべきだと考えますか。
谷垣 こういうときですから、どういうところに成長の種を見つけ、投資するのかという経済の成長戦略が大事です。また、雇用にかなり焦点を当てていく必要があります。
単年度で収支を均衡にすることは難しいですが、歳出に対する負担をどうするのかということを、きちっとした姿で出さなければなりません。今後4年間、消 費税率アップを封印したまま、大きな政府を目指すというところに、民主党政府の大きな問題があると思います。景気対策もそこのところを不明確にしたままで は、みんなが安心して財布のヒモをゆるめるというわけにはいきません。個人金融資産も動かない。
今年は谷垣 を国債発行額が上回るという、あまり経験したことがないゾーンに入っていくので、中長期的な財政運営のフレームを明確に出さないと、マーケットは不安になると思います。そこを重視して予算と税制を考えるべきです。
――個人消費を刺激し、内需を拡大すれば景気が回復すると政府は考えているようですね。
谷垣 内需振興という掛け声は、わからないわけではありません。アメリカの過剰投資で輸出品を主にいろんな物が売れていた構造、いわばそれを支えていた強いドルと為替関係という概念がパラダイムシフトされたのですから。
しかし、内需と外需は切り離されたものではありません。同じ物をつくるにしても、アジアとのそれぞれの製造過程における役割分担など、いろいろな問題が あります。また、国内の消費者の期待に応えるような政策を打ち出していくということは大事ですが、それは単純に内需拡大策ということだけではない。もう少 し目を開いて考えていかないと見誤ると思います。
? 「所得の格差が生じているから、所得再配分機能を高めるべきだ」というのは、当然ある議論だと思います。消費を刺激しようという議論自体は、悪くはありま せん。しかし、(景気刺激策が国の資金を)いきなり家計に入れるというやり方ばかりでは問題があります。それが経済の発展に回ってくるまでには、時間がか かるからです。特に雇用にまで反映してくるには、かなり時間がかかります。しかも、なんでも家計に入れていくという政策をとっていくと、例えば子ども手当 も2万6000円より3万がいい、5万の方がいいと、バナナのたたき売りのような議論になっていく危険性があります。結果として極めて社会主義的なものに なっていく可能性もある。
やはり産業全体に目配りをして、伸びる産業を育てていくという発想がなければいけないと思います。
「コンクリートから人へ」というのも聞き心地のいいキャッチフレーズですが、田舎の方に行きますと公共事業というのは地域経済や雇用を支えたりする機能があります。あまりにもバッサバッサ切ると、雇用の下支えがなくなってしまいます。
大都会ばかりではなく地方にも血液が循環していくように、カネが循環するシステムは何なんだということを考えるべきです。それが全部公共事業だとは言いませんが、そういうことを意識しないと年度末に心配な面が出てきます。
――自民党は現在、政権構想会議を中心にいろんな議論を煮詰めていますが、党再生には何が必要ですか。