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Interview

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観光立国を目指す北海道の日本一貧弱な観光予算
「せめて2ケタ台に」
掲載号:2014年11月

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近藤 龍夫 北海道観光振興機構会長

 北海道経済の命運を握るといっても過言ではない観光産業。そんな重要な業界をリードすべき「北海道観光振興機構」に徒手空拳で乗り込んだ近藤龍夫氏の苦闘は続く。〝難産〟の末の会長就任から、はや4カ月。近藤氏を直撃した。

改革というのは短期間にやるもの

――6月16日に北海道観光振興機構(以下、機構)の会長に就任し、早くも4カ月たちました。
近藤 従前より北海道の豊富な観光資源を食と融合させた産業へ発展させたいとの思いがありました。また、観光産業の経済的即効性にもひかれるものがありまして、北海道経済発展のエンジンとして期待していました。そんなことから不案内を承知の上、お引き受けした次第です。
――就任を依頼された際、関係者からどんなお話しがあったのですか。
近藤 機構の運営体制を実効性のあるものに再構築し、軌道に乗せることでした。具体的には6年前の機構設立の趣旨に沿って名実ともに官民一体となった体制をつくることと、会員・業界の意向を踏まえた事業の企画・立案ができる仕組みをつくり軌道に乗せることです。
――官民一体の組織には、ほど遠い。
近藤 道庁観光局と機構に各々約30人が2カ所に別居した非能率的な体制で6億円の観光事業管理業務をおこなっていました。そこで私は、本当の一体化を視野に入れて、まずは同じ屋根の下で仕事をするよう道に声をかけました。やっとのことで8月から観光局の職員合計10人が輪番制で機構で執務するということで折り合いをつけました。しかし、計画通り執務することもなく機能していません。再検討中です。
――一体化の狙いは。
近藤 観光産業の飛躍的発展のための官民混成プロ集団がほしい。効率化だけでなく、業務の質を上げるためにも重要です。この程度の仕事では関係者の居場所を1つにして一心同体取り組むのが〝いろはのい〟です。北海道の観光産業の飛躍的発展のためには地域・事業者と連携しながら、既存観光地の再生、新たな市場の創造、海外に向けたマーケティ ング強化など、さらに踏み込んだ取り組みができる体制に、進化する必要があります。そう考えると、近い将来観光局を道庁から外出しして、官民混成のプロ集 団にすべきと考えています。すでに他の地域では、いろいろな強化策がとられはじめています。よく学んで答えを出したい。
――会長職は1年で辞めるのですか。
近藤 改革というのは短期間にやるものです。それを引き受けたのですから、普通に考えたら、この程度のことは1年かなというだけの話。別に決めているわけではありません。お引き受けしたことがいつまでに果たせるかは、道庁さん次第です。
――次に会員・業界の意向を反映した事業の企画・立案ができる仕組みについてお聞きします。
近藤 業界さんが部会長、委員になっていただく業種別部会(観光開発・振興、広報プロモーション、交通、人材育成・サービスなど5部会)を設置し事業提案していただくこととしました。これらをベースにした毎年の事業およびその予算案が提案されることを期待しています。

圧倒的に少ない北海道の観光予算

――多くの関係者から、北海道の観光予算は他地域に比べ圧倒的に少ないと指摘されています。
近藤 機構の予算は、道からの事業費(約5・17億円)と会員からの会費などを合わせて6億円です。観光庁が公表している都道府県別の観光予算は、2014年度、北海道6億円に対して、九州ブロック43億円、四国ブロック34億円とケタ違い。県との比較でも鹿児島県17億円、高知県15億円、富山県10億円などと、軒並み北海道を上回っています。
また、前年度比については全国平均で約10%アップです。福井県は、新幹線が14年度に隣の石川県まで開通するためか、前年度比2・2倍の14億円です。
一方の北海道は、15年度に北海道新幹線が開通するのに前年比マイナス1%です。中央からは「北海道はやる気があるのか」と厳しく問われる状況です。
――それに対する道の見解は。
近藤 私には理解できない理由を並べていますが、道内の各振興局の広さにも満たないあるいは財政規模も小さい他県と比べて、関連予算を含めれば他県並みあるいはそれ以上の予算を確保しているとのこと。そんな主張を聞くにつけ、何か情けなくなってしまいます。
――どういうメンタリティーなんでしょう。
近藤 行政全般にいえることですが、都府県のような隣接自治体との競争環境がないことと「北海道はブランドがすでに確立している」という慢心があるのだと思います。昨年は外国人観光客も国内道外客も、前年に比べ大きく伸びています。他県のようにジタバタする必要はないと、北海道ブランドの信仰に寄りかかって、さらなるレベルアップを図ろうとする政策立案努力が不足しています。こう思うのは私だけではありません。
――危機感が薄すぎるのかもしれませんね。
近藤 われわれは食と観光とものづくり産業を北海道経済の3本柱と位置づけて、これらを盛んにして消費を拡大し、新たな雇用と税収を生み出し、北海道を元気にし、ひいては国の経済発展にも貢献していくことを使命として取り組んでいるのですが、その点が理解されていません。
北海道は四季折々の自然や新鮮で豊富な山海の幸に恵まれています。こんな地域は世界中、他にありません。世界からの関心も高く、また、観光は外部需要を誘発するので人口減による経済力低下を補う産業でもあります。さらに農水産業、食品産業も付加価値が向上します。だからこそ豊富な観光資源を生かして、北海道を支える産業にするためのさまざまな施策を打つ必要があるのに、その予算が6億円しかないのは異常です。観光はアベノミクスの重点政策でもあるだけに、いつも歯がゆい思いをいたしております。

せめて2ケタ台の予算額にすべき

――少なくとも九州ブロック並みの予算があってもおかしくないでしょうね。
近藤 北海道観光の持続的な発展には、相当規模の予算が必要です。それでさまざまな課題を解決し、絶えず魅力をブラッシュアップしていくことも欠かせません。なぜなら、北海道の宿泊客延べ数は1999年度の3630万人をピークに下がり続けましたが、12年度以降はLCC効果で国内客が回復。外国人の入り込みも円安効果などで順調。全体的に盛り返しています。
ただ、外国人客の増加が国内客の落ち込みをカバーするまでには至っていません。北海道観光は「風頼み」「他力本願」のようなところがあるので、いつまた減少傾向に陥ってもおかしくありません。いま部会で必要な事業の洗い出しをやっています。これらをベースにしてしっかりした予算要望ができるようにしたい。
しかし、とりあえず中央要望でばかにされたり笑われる予算配分からの脱却は急がれます。1ケタアップ10億円台。
――やはり観光予算の問題は避けては通れません。
近藤 予算が十分確保できないのは観光に限ったことではなく、一般会計予算全般のことです。新規事業や既存事業の拡大などの新たな予算の獲得が極めて難しいということです。役所の場合、予算管理は単式簿の収支管理が基本です。したがって執行結果の評価とその次年度以降への反映が不十分になりがちです。そのことが、各部門の既得権に縛られた前年通りの配分を基本とする予算で硬直化しているのです。さらに、将来に成果を期待する投資型予算の新規計上をきわめて消極的にしているのです。あったとしても名ばかりで小粒。事業結果に応じた再配分が難しいシステムになっているので、全国都府県、市町村では、いろいろ苦労・工夫しております。

財源はつくり出すもの

――ここを打破しなければ財源確保ができません。
近藤 財源はつくり出すもの。抜本的には全庁的な行財政総点検に基づく改革が必要。まずは、知事が公約や施策方針で、あれもこれもではなく、特定施策として重点配分を命じることです。財源の確保は、1つ目、全予算から、たとえば0・2%カットして、約50億円の知事予算(特定施策分)とすること。2つ目は、カット対象を選択した特定の予算とするやり方です。3つ目は、全庁的に税金の使われ方について「行財政の総点検」を実施することで恒久的な潜在財源を発掘するやり方です。予算規模が北海道とほぼ同じ大阪府の例が参考になります。民間の意見を参考に、加えて若手の優秀な職員に徹底したムダの除去、効率化・高度化による歳入歳出改革、公務員制度改革、財政運用改革をやらせ、3年間で2000億円浮かせた。その詳細は大阪府のホームページで公開されています。
道も大阪並みにやれば、かなりの成果が期待できる。なぜなら、機構の予算6億円の管理は、道観光局と機構の計65人、人件費で約4億円かけておこなわれ続けてきました。民間の感覚からすれば〝超〟異常。でも、これまで問題視されたことがない。こうしたことが氷山の一角と考えれば、潜在する財源はかなり眠っているはず。各所で改革、効率化が叫ばれている昨今、何かにつけて下位の北海道であればこそ率先して、議会の協力も得て潜在財源の発掘にとりかかるべきだ。
必ずやらなければならないことだ。早くやれば痛みは小さい。学ぶところは全国大小いろいろある。

250万人の外国 人客数を目指せ

――知事の観光にかける意気込みが大事ですね。
近藤 日本の外国人入り込み数は1000万人を超えました。北海道はその約12%を担ったという実績は大きい。国が目指す2020年2000万人達成の目標に合わせて、知事には「北海道においても250万人を目指して、頑張るぞー」とでも言ってもらいたい。そのために、誰が・何を・いつまで・どれくらい実施するのかを定めることです。自ずとそれに向けた動きが出てきます。

=ききて/鈴木正紀=