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Interview

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葵会理事長が語る〝北海道戦略の全貌〟掲載号:2013年3月

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新谷 幸義 葵会理事長

 12医療法人3社会福祉法人を擁し、全国14都道県に18病院2クリニック、53介護老人施設などを展開する葵会グループ。北海道には2010年12月に初進出。現在2病院1老健を運営している。今後も道内で拡大を目指すという葵会。新谷幸義理事長を直撃した。

川崎社会保険病院を60億円で買収

――昨年12月の総選挙で、次男の正義さんが自民党所属の国会議員になりました。
新谷 比例代表の北関東ブロックで、名簿順位33位だったのですが、上がほとんど小選挙区で当選。まあ、運がよかった。
――医師ですよね。今回の立候補のきっかけは。
新谷 もともとは参院選候補の公募にエントリーしていました。3人が残り、うち1人が次男でした。最終的には昨年10月、元総務官僚で退路を断っていた前茨城県副知事が候補者と決まりました。その後、衆議院の解散。12月に自民党は次男を比例北関東ブロックの公認候補としたのです。
――もともと国政を目指していたのですか。
新谷 やりたいとは思っていたようです。医者にはなりましたが、その後、東京大学の経済学部経営学科にいきましたから。37歳で、まだ独身なんです。
――晴生会の理事長は。
新谷 院長は降りましたが、理事長はそのままです。
――葵会グループですが、拡大のスピードは衰えません。現状、病院、介護老人施設のほかにも教育・保育施設、ホテルなども合わせると79施設になりますか。
新谷 それくらいでしょう。数はよくわからない。
――病床数の合計は3200床、老人施設の定員は4900人、職員は1万1000人と、ホームページには出ています。
新谷 いまはもっと増えているでしょう。われわれは病院を核に、周りに老人施設などで囲んで連携してやっています。1万数千人の職員の生活がかかっています。だから一生懸命やらなければいけない。そして、絶対法を犯してはならない。これだけ社会的責任が大きくなると、不正なことをすれば、いっぺんにおかしくなります。
――昨年5月には川崎社会保険病院を60億円で手に入れました。
新谷 川崎社保病院308床と、併設する介護老人保健施設「サンビューかわさき」100床は、厚生労働省が譲渡手続きを進めるよう、運営する「年金・健康保険福祉施設整理機構」に求めていました。それを受け同機構は昨年4月、一般競争入札を実施。5法人の参加申し込みがあったようですが、応札は3法人。われわれが60億円で落札したということです。
――60億円は妥当な金額ですか。
新谷 買ったときは、みなさん高いとおっしゃったけど、私は妥当だと思います。いまあのあたりで300床の病院を建てようとしたら50億円はかかります。今回はそれに老健が100床。都合400床です。そう高い買い物ではない。みなさん、どうやって60億円を返すのか興味津々のようですが、うちは別になんとも思っていないですよ。
――もう葵会から人は入っているんですか。
新谷 もちろん入れていますが、まだ向こうの経営です。一部だけに入らせてもらっている状態です。それでもいろいろな部分は見えてくる。やはりお役人の仕事です。赤字になって身売りをするようになりますよ。当然のことです。葵会グループの病院としてオープンするのは4月1日です。1カ月で満床にします。
――こういう案件があれば、まだ買いますか。
新谷 あればやりますよ。
――現在、北海道での展開は2病院と1老健。
新谷 そうです。札幌市北区の「晴生会さっぽろ病院」は可能ならば少し大きくしたい。増床できるように昨年の10月、隣接している土地を取得しています。
――建て直すのですか。
新谷 増築です。
――増床するためには、どこかの病床を買わないといけませんね。
新谷 そうですね。
――メドは。
新谷 何とか。
――どれくらいの規模にしたいと考えていますか。
新谷 できれば200床くらいにしたい。一番採算がいいですから。
――あと120床くらい必要です。ありますか。
新谷 さあ、どうですかね(笑)。
――石狩の旧共生会病院の病床を買われていますね。
新谷 買っています。
――40床くらいですね。
新谷 40床だけではどうしようもない。
――札幌にはもってこられません。
新谷 そうですね。医療圏が違うので。
――では、どこか石狩の病院を買うと。
新谷 ちょっとそれは言えない。
――小樽でも物件を探していますね。
新谷 はい。探していますよ。
――某建設会社所有の土地を買って大がかりな展開をという話も聞こえます。
新谷 まだ土地は買っていません。
――旭川の展開は。
新谷 お話はきています。
――某不動産業者と共同でという話ですか。
新谷 そうですね。
――早そうなのは。
新谷 旭川だと思いますが、まだわからない。案件は、ぼちぼちいただいています。大きいのから小さいのまで。

すべて相手側から持ち込まれた案件

――江別の次の展開は何か考えていますか。
新谷 現在、江別では100床の老健を運営しています。この場所は元道職員住宅があった道有地で、福祉専用の開発としばりをかけて公募しました。ところが手をあげたのはわれわれだけだったようです。ほかにもやらせてもらえるのであればやりたいですね。
――江別市立病院の運営委託のような話は。
新谷 いろいろなお話は聞いています。
――実際、全国各地からいろんな案件がきているんでしょうね。
新谷 そうですね。ただ効率がいいのは、やはり人口の多いところ。室蘭は人口が10万人を切っているようなまちですから、三村病院の支援のときはちょっと懸念しました。しかし、非常に順調にいっています。
いい案件であれば問題はありませんが、内容が悪くても、たとえば悪いもの同士3つくっつけるとか。そうすることで最終的によくなればいいわけですから、いろんな方法を考えます。
――手がけたところで失敗したケースはありますか。
新谷 1件だけあります。それは東京・世田谷の病院でした。隣の土地が買えるという算段で支援に入ったのですが、それがどうもうまくいかない。増床できないと判断し、すぐに撤退しました。ちょうど土地が上がっていたときに不動産として売れたので、赤字にもならず撤退できたのは不幸中の幸いでした。
――新谷さんが経営に専念されるようになったのはいつからですか。
新谷 もう20年くらい前になります。ちょうど地元の広島から出て、最初の千葉の病院にかかわるころからです。
――拡大路線に入ったのはいつごろでしょう。
新谷 年間10施設以上やり出したのは6、7年前からでしょうか。いい案件をいただいてきた。運がよかったのだと思います。
――これまで自分から買収にいったことは。
新谷 ありません。すべて相手側から持ち込まれた案件です。
――内容の悪いところが多いのでは。
新谷 そういうところもありますが、あまりにも悪ければ最初から受けません。現在は「福祉医療機構」と名称が変わりましたが、旧社会福祉・医療事業団からも案件は持ち込まれます。もちろん、貸し倒れになりそうなところです。これまで事業団から5つくらいお話をいただいて、再生させています。
――銀行からの紹介も。
新谷 もちろんあります。
――拡大のメリットは。
新谷 いい案件が集まります。いまや赤字の施設は1つもありません。
――医師の確保は大変ではないですか。
新谷 北海道に出るとき、それが大変だと聞いていましたが、あまりそのような認識はありません。もちろん関東でも、東海地区でも、中国地区でも同じです。
――その地域の大学に相談することは。
新谷 ないこともないですが、いまは個人的に動かれるドクターも増えています。医師不足とは言われていても、ドクターの数自体は毎年増えています。やはり増えた分だけ動きも出ている。そういう意味では昔に比べると医師の確保はずいぶんと楽です。

大学の卒業旅行で北海道を一周

――現在、グループの年商はいくらになりますか。
新谷 医療・福祉分野で約650億円です。
――借金は。
新谷 1000億円まではいきませんが、それに近いものはあるでしょう。
――それでも銀行は融資をしてくれる。
新谷 だから、われわれも事業ができて、社会に貢献することができます。
――学校の運営もやっていますね。
新谷 理学療法士の専門学校です。千葉の柏にあります。今後は千葉に看護大学をつくる予定です。
――文部科学省に申請はされているのですか。
新谷 もちろんです。岡山にも看護の専門学校をつくります。高校の跡地を利用しますので、すでにハードはある。近くに老健もつくります。
北海道で学校法人の譲渡話があれば買うかもしれません。大学であれば既存の学部に看護や理学療法、作業療法などの学部を新設します。学生を集めるのに、もう専門学校では厳しいという認識です。
――新谷さんは以前から北海道が好きだとおっしゃっていましたね。
新谷 食べ物はおいしいし、土地は広いし、住んでいる人の人間性もいい。いいゴルフ場もたくさんある。私自身が住みたい。好きな土地で事業をやれるというのは、とてもありがたいことです。
――好きになったきっかけは何ですか。
新谷 大学を卒業したときに、北海道を一周しました。それ以来、北海道が大好きになりました。農場の大きいのがあればやりたいと思っているくらいです。
――耕作放棄地は結構ありますが、異業種からの参入はなかなか難しいかもしれません。
新谷 実は3、4年前から、われわれは農業をやっています。規模はまだ非常に小さいのですが、今後の可能性は大いにあると思っています。「東京ファーム」といいます。
――病院食などに生かそうということですか。
新谷 いまつくっている野菜類は、みんな系列の施設にいっています。
私は、クックチルドをやりたいと思っています。
――それは何ですか。
新谷 加熱調理した食品を短時間に急速冷却してチルド保存し、必要なときに再加熱するシステムです。
調理法ではなく、食品・料理の保存法の一種。熟練した経験がなくても品質の高い料理を提供できます。現在、病院や機内食で利用されている方法です。
現在、当グループには関東に10病院、35の老人介護施設があります。ある程度まとまった規模があるので、まずは関東で挑戦したいと思っています。

=ききて/鈴木正紀=