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Interview

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自民党とは大所高所に立った相互協力
消費税問題は目的と時期とバランスが肝心だ
掲載号:2012年4月

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山口那津男 公明党代表

「社会保障と税の一体改革」が国会の焦点となっている。野田佳彦総理は消費税増税路線を突き進んでいるが、与野党ともに慎重論は根強い。そこで公明党の山口那津男代表に問題点を聞いた。また、10区の稲津久氏出馬についても語ってもらった。

子育てやこころの病にも支援

――これからの社会保障のあり方を、公明党はどのように考えていますか。
山口 一昨年の暮れに「新しい福祉社会ビジョン」をトータルで発表しました。その際、社会保障に関して「与野党で協議をする機関をつくったらどうですか」と、去年の通常国会の代表質問で提案をしました。提案の柱は、年金、医療、介護という3つの大きな社会保障制度の機能を少子高齢化にともなって強化すべきだということです。
あわせて子育て支援も、この3つの社会保障制度と並ぶ重要なテーマですので、ここも充実させなければなりません。例えば幼稚園、保育園のような就学前の教育、保育をもっと充実させるとか、やることはいろいろあるはずです。
それともう1つ公明党らしい提案があります。例えば、うつ病です。職場や地域社会、あるいは家庭の中でも、日常的というか、普通の課題になってきています。さらには、不登校、いじめなど、社会がいま直面している新しいリスクに対応した福祉政策が、あまりにも立ち遅れている。本格的な課題として正面から取り上げて、政策を確立していくべきです。
――医療、福祉、年金の財源措置をどうすべきですか。
山口 いまは、すでにある社会保障制度を維持継続していくのも大変です。毎年1兆円以上も、そのための費用がかかっています。
われわれは自公政権当時に「中期プログラム」を決めて、それにともなう増税、これは消費税だけではなく、消費税を含む税制全体の抜本的な改革が必要だという大きな方向性を出しました。税のあり方については、当時の所得税法等改正案の中の付則104条にその趣旨を盛り込みました。税制改正は何のためにあるのか、どこに使うのか、これをはっきりさせ、国民の皆さんにご理解をいただいて、改革をおこなうというのがわれわれの基本です。
問題は具体的な進め方です。与野党の議論の中で一番課題になっているのは、昨日(2月29日)も党首討論で申し上げたのですが、「一体ですよ」ということです。つまり、消費税増税ばかりが声高に叫ばれているけれども、何のためにやるのか。それは「社会保障の改革と一体なんですよ」というところが、大事なのです。しかし、その肝心なところがぼやけてきている。
――政府の消費税増税はいまや財政再建が主眼のようですね。
山口 ぼやけている一番の原因が、民主党の掲げてきた年金の抜本改革という考え方です。民主党はこれを9年越しで訴えてきたのに、いまだに具体的な内容が出てきていない。「どうするのですか」と問うと、「来年2013年に法律を出します」と言った。しかし、その前に消費税を上げるという案を出してきた。
野田政権は消費税を10%に上げるだけにとどまらず、さらに上乗せして膨大な消費税を民主党が考える年金支給だけに使おうとしてる。しかも、この年金をすぐもらえるのかと思ったら、そこにたどり着くまでに40年もかかる。だが、たどり着いたと思ったら、いまより手取りが減っちゃう人が多い。これでは何のための抜本改革なのかわからない。おそらく実現不可能です。
そのうえ、政府は社会保障のそれぞれの法律をいっぺんには出さないで、バラバラに出そうとしています。そうするとバラバラに議論されて、どこがどう一体なのかということが、国会の決まりごととして実現してこない。結果的に、社会保障の個別のもので実現できないものが出てくるかもしれない。
――民主党は消費税増税に反対していたが、政権を取ったら急に増税だと言う。次もまた違うことを言うかもしれない。
山口 国民の政府に対する不信感は、そこが根底にある。現に民主党の中にも、政府に対してそういうことをおっしゃっている方が、大勢いらっしゃいます。大綱を決める過程でも離党する人も出たし、いまも大きなグループで反対する人がいる。連立のパートナーである国民新党も真っ向から反対しています。野田内閣は、自らの足元が弱いのに野党に「あなた方が協力してくれれば身内をかわせる」と迫っている。

いますぐの増税は無理がある

――国民は増税分が社会保障のためだということにも、疑念を持っています。
山口 予算委員会にお呼びした参考人の中には、「これは社会保障のために使うんじゃない。消費税は財政再建のために使うんだとはっきり言った方がいいんだ」と述べた人もいます。財務省の中にもこうした認識が根強くある。取ってつけたように、「増税は社会保障のためですよ」と言っていることに説得力がない。
かといって、財政再建のことは全く放置して、社会保障をどんどんどんどん拡大すればいいということにもならない。子ども手当とか、年金の抜本改革とか、非常に大きな財源を費やすものを野放しにしたまま消費税増税で負担を求めるというのでは、国民は疲れてしまう。国民の皆さんの負担の限界というものがあると思います。
また、消費税の増税は最終的に必要だと思いますが、タイミングはあります。景気が悪い時に増税をやったら、もっと落ち込んでしまいます。いますぐの増税は、無理だと思います。円高でしょう。これがおさまる保障はまだ見えてないですね。それから長い間のデフレ傾向からの脱却ができてませんね。それと震災。ちょっと前のリーマンショックの影響からも完全に免れてるとは言えないでしょう。
――でも、政府は総選挙前に増税をおこなう考えのようですね。
山口 それはいくらなんでも賛成しかねる。アジアの成長力を取り込んで、いまの日本の経済は成り立っています。しかし、アジアの経済成長をしている国が、ヨーロッパの影響を受けていま落ち込んでるんですね。これらの国が元気にならないと日本だけでは元気になれない。
――選挙制度の問題はどうしますか。
山口 衆参ともに憲法違反。1票の格差を是正せよと最高裁から言われているわけですから、これはもう何が何でもやらなきゃならない課題です。でも、よく考えてみると、1票の格差があるということは、現行の選挙制度は、民意の反映に歪みがある、1票の平等が歪んでいるということです。衆議院の小選挙区比例代表並立制は、小選挙区では1票でも多い政党が議席を得る。それ以外の票は切り捨てられます。世論調査の結果を見ると、国会は民意と違った議席の構成になっていることがわかります。だから、衆院で自民党や民主党が現行の選挙制度下で大勝しても、参院選で国民は違った選択をします。その結果がねじれ国会です。
ここは選挙制度そのものをより民意を反映できる制度に変え、その中で定数削減を考えるべきです。衆院の選挙区定数の改正案として0増5減案が出ていますが、小手先の一時しのぎに過ぎません。1票の格差の是正、選挙制度の改革、その中での定数削減、この3つを一緒にやるべきです。
――公明党が提唱している連用制度は、複雑なんじゃないですか。
山口 そんなことはありません。小選挙区の議席に連動させて比例の部分で調整をし、得票率と議席率が近づくようにする制度です。
――TPPには賛成ですか。反対ですか。
山口 例外なき関税撤廃になると、日本がどう努力しても非常にマイナスの影響をこうむるものが出てくる。その不安を解消できない。ですから、ある程度の例外、調整を盛り込まなきゃならない。
また、もっと大事な視点はTPPが本当に日本の経済力を高めることにつながるのかということです。日本はアジアの成長力、中国やインドやASEAN諸国、こういうところと貿易ルールを自由化することを進めなきゃいけない。全体の戦略の中でどうやったら成長力を取り込む交渉、ルールができるかということを、もっと多角的に考えることが必要です。
アメリカは、アメリカから見た貿易の不均衡についての要求を突きつけてきています。アメリカはTPPで何を求めようとしているのか。すでに参加した国がどういう影響をこうむっているのか。日本はどうプラスに活用していけるのか。そういう情報提供や基礎的議論をもっともっと偏ぱなく誠実にした上で選択をしていくべきです。例えば、韓国はFTAをアメリカと結びました。その時は歓迎ムードでした。しかし、いま選挙を前にして脱退しろとか、破棄しろという主張もかなり出てきています。
また、いまの民主党政権の取り組みには、やや違った側面がある。沖縄の普天間の問題で対応を誤り、日米関係がギクシャクした。こういうマイナスを取り戻そうと、日米関係強化の一環としてTPPを推進しようとしている。
農業は、日本の国土の環境保全にも役立っています。農業は日本特有の気候、自然が相手ですから、仮に大きな変化で破壊されてしまったら、復元も容易なことではない。そういう農業の多面的な機能も、もっと深く広く見る必要があると思いますね。
また、日本の中では北海道の農業は優位性があるように見えます。しかし、じゃあ同じレベルでアメリカやオーストラリアと比べたらどうかといったら、これはとてもとても太刀打ちできません。競争力とか維持力ということを考えた時に、もっと現に営んでいる人の立場で考えなきゃいけない。
逆に貿易ルールづくりの生かし方によっては、勝負できる農業というものもある。もっと強い農業、競争できる農業を育てることに集約していく必要があると思います。

自民党には丁寧に理解を求める

――北海道10区に衆院比例区の現職・稲津久さんを、友党の自民党とハレーションを起こす可能性があるにもかかわらず、出馬させる理由はなんですか。
山口 やはり政党である以上、党勢拡大のチャンスをうかがうというのは当然のことだと思います。北海道では比例でどうにか1議席を確保してきました。しかし、全国的にいっても小選挙区でも可能性のあるところは出馬を模索するべきだと考えています。しかし、公明党単独で小選挙区の議席が取れるかというと、これはなかなか難しい。しかも、過去小選挙区で取った議席というのは、連立相手の自民党と協力しながら取ってきたわけです。
一方で、自民党が単独では盤石といえない小選挙区で協力をしてきました。その数を比べてみれば、圧倒的にわれわれのギブの方が多いわけです。いまの民主党政権のまずいところをただし、政権交代をおこなおうという大きな視点から、自公の協力というのは考えるべきことだと思います。ともに北海道の地域を日本をよくしていこうという政策実現のため、力を合わせようというのであれば、十分に協力の可能性はあると思います。
ただ話をあまり急ぎすぎると、戸惑いや混乱ということも生じますので、そこは丁寧にご理解をいただきながら進めていこうということです。

=ききて/酒井雅広=