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Interview

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“総仕上げの年”の成果を語る
3選出馬は規定路線
掲載号:2011年1月号

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高橋はるみ 知事

 高橋道政の2期目も最終盤を迎えている。この1年間は近隣諸外国との友好関係、経済交流を深めた。その一方で新幹線の札幌延伸などのインフラ整備は、国の政策転換や財政難で厳しい状況だ。高橋はるみ知事に今年度の成果を聞いた。

地域主権の旗を掲げる北海道

――道州制についてお聞きします。国の不熱心さも影響していると思いますが、最近あまり話題になっていないようですが…
高橋 小泉純一郎首相時代に道州制の議論が高まり、各党がマニフェストに入れたり、経済界でも熱心に 話し合われました。ただ、現政権の民主党のマニフェスト(2010年参院選)には道州制の記述がありません。そういう政権側の関心の度合いに加え、われわ れ知事会側にも問題があります。道州に合併され、かつ、中心地にならない県のみなさんには強い危機感があり、以前から反発しています。
しかし、そういう反対があっても、日本の将来のために道州制は重要だと思うのですが、世論の流れはいまはちょっと停滞気味ですね。
ただし、国からの権限移譲を可能とする道州制特区法は恒久法です。われわれはいままでに26項目の提案をし、例えば、札幌医科大学の定員の自由化、水道 法に基づく監督権限の移譲など、18項目を実現しています。これからも道民の方々からのご提案を受け、道州制特区提案検討委員会でオープンな議論を行な い、道議会の議決を経て提案することを粛々と続けていきます。
国に先駆けて地域主権の旗を掲げた道としては、北海道が将来にわたり地域の可能性を引き出し、自立した地域として持続的に発展していくため、この国のか たちをこれまでの中央集権から、地域のことは地域で責任を持って決めることができる「地域主権型社会」へ転換していくことが重要であると考えています。

中・韓・ロとの経済交流を拡大

――高橋知事は韓国、中国、ロシアなどとの友好・経済交流に力を注いでいますね。
高橋 今年だけに限っても、5月のゴールデンウイーク中にロシアのモスクワ、ウラジオストクへ行きました。9月には道内の400人の方々と一緒に、万博が開かれていた上海と広州にも行きました。広州では中国南方航空の本社を訪ね、定期便拡充の要請をしました。また、東方航空が主体となって、同社のネットワークがある中国の国内で北海道のPRをしてもらいました。10月中旬には友好交流協定調印のため、韓国のソウル特別市を訪問しました。
アジアの、とりわけ近隣諸国の方々の北海道に対する関心が高まっています。この好機を活用して北海道へ多くのお客さまに来てもらう努力をしています。感触は大変いいです。
モスクワは北海道から遠いかなと思ったのですが、モスクワの道産子会は、各都道府県の出身者でつくる現地の日本人会で一番盛んな活動をしています。モスクワでも北海道の知名度はあります。私は行けませんでしたが、北海道物産展を10月に行ないました。極東へのアプローチとともに、モスクワへの働きかけをしていきます。
中国とは尖閣諸島の問題で国と国との関係が微妙になっていますが、人と人との交流はとどめることができないと思います。上海万博の日本館イベントスペースで開催された「北海道の日」(9月3日から5日)に合わせて、上海市内の百貨店(上海三越)において開催した物産観光展のオープニングセレモニーに出席し、一般来場者に対し、私自ら安全・安心でおいしい道産食品などのPRを行ないました。
また、上海では現地のマスコミ関係者を呼んで昼食会をするなど、交流を深めました。北海道の日に来られなかった人たちに、現地のマスコミを通じてアピールしようと考えたからです。上海における北海道人気は非常に高かったと思います。
――企業の海外進出や輸出という点では、どのような支援を行なっていますか。
i10高橋 もともと水産物などは漁連がしっかりした輸出ルートを持っていますが、野菜なども含めて物販のセールスを高めていこうと考えています。
ただ、知的財産の保護もしっかりやらなければなりません。「道産品輸出用シンボルマーク」の商標登録を中国で出願しました。今後とも、海外において開催される商談会や展示会、各種イベントの機会をとらえ、積極的に普及を進めていきます。
また、ソウルでは北海道に対するあこがれの大きさを実感しました。大韓航空を訪問し、さらなる航空路線の拡充を要請しましたが、2011年春から新千歳ー仁川便が1日2便になる予定です。さらに、韓国コンビニエンスストア最大手の「普光(ボーグァン)ファミリーマート」も訪問し、連携・交流に向けご協力をお願いしてきたほか、道産日本酒のトップセールスを行なって参りました。
韓国の経済人の方々が独自のパワーと資金力で、ソウル市内の一等地に、北海道の物販と観光を常設でPRする館をつくられる計画もあります。
日中韓は互いに切磋琢磨(せっさたくま)して、相互に高め合う関係にあります。韓国の観光業の方々にとっても、富裕層を中心とする中国パワーはお客さんとして大きな魅力。でも、一方で競い合う隣国同士という意識もあります。日本もそういったことを踏まえ、日中韓の枠組みを常に念頭に置いて、しっかり交流していくことが大事だと思います。
そのことが北海道というローカルガバメントの立場でも、これから中長期的に意味のあることだと実感しました。

TPPはオール北海道で反対

――TPP(環太平洋パートナーシップ協定)にはどのように対処していきますか。
高橋 菅政権はTPP交渉について関係国との協議を開始するとしていますが、北海道は農業を中心とする1次産業が基幹産業です。農業団体をはじめ道経連、連合北海道、消費者協会など、政治的な立場を超えオール北海道で一致団結し、TPPには反対しています。そのパワーを先般、中央にもぶつけてきました。
各県の知事とも話をしましたが、「北海道はよくまとまったねぇ」と言われましたが、それくらい北海道のTPP拒否のスタンスは全国の中でも際立っています。各県とも危機感は持っているのだが、それを県全体としてなかなかとりまとめることができないでいます。
しかし、1次産業を基幹とし、その関連産業で多くの経済産業構造が成り立っている北海道の現状を考えた場合に、原則関税をなしにし、すべてのことについてマルチレベルで複数の国が集い、物の交流を自由にしようというTPPの枠組みの中で、何の対応もせずにいろいろと言うのはあまりにも危険です。
仮に重要品目の関税撤廃の例外措置が認められない交渉となった場合は、米国や豪州と比べ、土地や社会条件等で大きな開きがある中、他の都府県より経営規模の大きな本道農業が規模拡大などの構造改革努力を重ねたとしても、こうした国々と同程度の規模等に達することは困難と考えています。
i11また、外国産農畜産物が自由に輸入される状況下では、均質でまとまったロットを確保しやすいなどの有利性を持つ外国産に需要が奪われることになります。
道内で生産される小麦、ビート、乳製品などは、食品加工メーカーに原料として出荷され、さまざまな食品に加工されていますが、そうした工場での人件費、資材費、光熱費、流通経費などの縮減には限度があると考えられるため、国産原料の調達割合の低下を招き、結果として農業生産の継続が危ぶまれます。
さらに、製造コストの面で厳しい競争を求められる食品加工メーカーをはじめとする関連産業や流通、観光等への影響が危惧され、道内の農村地域においては、経済社会の崩壊につながることが大変懸念されるところです。
菅政権は農業改革、農業政策を同時に示すと言っていますが、それもやはり見極めさせていただきたい。その上でまた議論を深めていきたいと思います。
――知事が熱心に取り組んでいる「食」の問題も、1次産業が基盤にあればこそですからね。
高橋 まったくその通りです。元気な農林水産業は北海道の宝です。

新幹線札幌延伸で縦貫ネットが完成

――北海道新幹線の札幌延伸ですが、これはちょっと中央との温度差が大きいようですね。
高橋 やっと青函トンネルを通って北海道新幹線が実現というところまできました。2015年度には新函館駅まで開通する予定になっています。そこで「さあ、次は道都札幌までだ」という機運になったのに、札幌延伸が白紙になったことはとても残念です。
原因は何よりも財源問題です。北陸、西九州、北海道の3路線を合わせると、2兆を超える財源が必要で、それをどこから持ってくるのかという議論に尽きます。政治家の方々、役所の事務方の方々からなど、いろんな方法で情報収集していますが、トータル2兆を超える財源確保のめどが立っていない状況です。
しかしながら、われわれとしては要請を続けるしかありません。8月27日付で整備新幹線の未着工区間の取り扱いについて、国の整備新幹線問題検討会議から出された課題は3つあります。1.青函共同走行区間における運行形態のあり方2.並行在来線の経営のあり方3.最高速度(整備計画)の見直し―というものです。このうち並行在来線問題はわれわれが主体的に取り組まなければなりません。これは1にも2にも需要予測がみんなが納得する形になれば、おのずと解決に向かうと思います。あとの2つの課題は、国が早期に検討し、方向性を出していただきたい。
――北海道新幹線に投資することによって得られる日本全体の経済効果についても、もっとしっかり考えて、前向きな論議をしてほしいですね。
高橋 鹿児島まではもう行くことが決まっているわけですね。しかし、人口を考えたら、札幌のほうがはるかに多い。国が主体的に関与し、新幹線が北は札幌から南は鹿児島まで通って初めて、北から南までの縦貫ネットワークが完成するのだと思います。
――HACの問題ですが、道と札幌市や関係自治体との間で意見の相違があった問題は、解決しつつあるということですか。
高橋 札幌市との話し合いで、副市長、副知事が中心となっていただき、基本的な面で合意をしています。しかし、それ以外の課題もあって、例えば全日空の利尻線の季節運航化という話がある中で、こちらをどうするかなど、残された課題を検討し、できる限り早く新しい姿を確定したいと考えています。

=ききて/酒井雅広=