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Interview

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空港民営化を観光振興のチャンスにする掲載号:2016年9月

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堰八義博 北海道観光振興機構会長

6月27日、北海道観光振興機構のトップに就いた堰八義博北海道銀行会長。機構の前会長・近藤龍夫氏も期待する本道経済界のニューリーダーは、急増するインバウンド、観光と関連する空港の民営化などの喫緊の課題にどう向き合っていくのか。

台湾の観光客向けサービスを発案

――銀行マンとして観光産業にかかわったエピソードを教えてください。

堰八 北海道銀行頭取時代の2008年ごろ、すでに台湾からの観光客が伸び始めており、何か金融面で貢献できないか、と考えて私が言い出したのが、台湾の銀行のキャッシュカードでATMから日本円を引き出せるというアイデアでした。いちいち両替をしなくていいわけです。

この構想をNTTデータのトップに話したところ、一気に具体化し、共同で取り組みました。10年1月には、台湾の主要銀行のカードに対応した専用ATMを設置し、スタートしました。同時に、台湾のデビットカードで買い物代金を支払うシステムも稼働させました。いずれも日本初です。

――台湾からの観光客は今や50万人近く。先見性のある取り組みですね。

堰八 先見の明がありすぎたかもしれません(笑)。実は、当初は道内だけで展開し、専用ATMの設置台数も少なく、注目されませんでした。しかし、今は全国展開を図って日の目を見ており、個人的にもうれしく思っています。

――機構の会長就任から1カ月余りがたちました。

堰八 この間、道内外の関係先への挨拶回りをし、各方面から「北海道は日本の観光産業のリード役を目指してほしい」といった応援をちょうだいしました。期待をひしひしと感じるとともに、責任の重さを痛感しているところです。

――機構の中に入ってみて気になったことは。

堰八 策定時期の違いもあるのですが、観光振興に関する道庁の中期計画と機構のそれとの間で、設定期間やこれにリンクした目標値について差異が生じていることです。機構の予算の大半は道庁からです。基本的な計画は機関・目標値ができる限り一致しているほうがいいでしょう。

また、民間企業なら当たり前の10年後ぐらいを見すえた長期ビジョンが存在しません。やはり北海道観光の将来を展望する旗印は必要ではないでしょうか。できれば今後、道庁と一緒になってつくりたい。

――どのような方向性で機構を率いていきますか。

堰八 機構は08年の発足時、3つの基本理念「各界の力を結集」「民間主導」「機動性と専門性をもった組織」を掲げました。観光立国・北海道の実現と、関係団体・企業、地域の知恵と資源を結集して「複合型の総合産業の創出」を目指しています。この原点を見失うことなく活動をしていきたい。職員にも、この点を徹底させるつもりです。

時代のテーマは地方創生ですが、本道において観光と食は絶対に欠かせない要素です。実際に大半の自治体や団体が、地域活性化の起爆剤として観光を位置づけ、努力を重ねています。

しかし、広域であるため、同じ観光をテーマにしても地域ごとに取り組みがバラバラになっていたり、ノウハウや人材不足に悩んでいる例があります。広域ゆえの観光コンテンツの豊富なバリエーションは強みですが、「北海道」というブランド力を共通で活用していく取り組みも不可欠と考えています。

機構は4月、観光庁が推進する日本版DMO(DMO法人=稼ぐ力を引き出す観光地域づくりのかじ取り役)において、広域連携DMO候補法人に登録されました。今後、正式認定を目指す中で、北海道が一丸となって観光をより強い産業に育てていけるよう、力を注ぎます。

――北海道観光の現状は。

堰八 機構発足時の08年と比べると、観光入込客数は飛躍的に拡大しています。08年度が4707万人、14年度が5377万人です。とりわけインバウンドは69万人から154万人に増えました。暦年ベースだと15年は190万人でした。

新千歳空港の離発着枠の拡大、旧共産圏のエアラインへの乗り入れ制限の撤廃・緩和が予定されており、インバウンドの伸びはさらに加速するでしょう。5年後ぐらいに年間400~500万人になることも現実味を帯びてきています。

道外観光客に対する対策も必要

――道内人口に匹敵する外国人観光客数に……

堰八 ソフト、ハードの両面における受け入れ態勢の整備が急務です。CIQ(税関・出入国管理・検疫)の強化など、国の力をお借りする部分も多く、道庁にも強力なリーダーシップを発揮していただきたい。もちろん機構も関係機関と連携しながら関連施策を推進します。

――インバウンドよりも絶対数の多い国内観光客数は伸び悩んでいます。

堰八 インバウンドは国情や為替などによる変動リスクがあります。インバウンドの増加に浮かれることなく、観光消費額も高い道外客向けの手も打たなければなりません。

昨今はパッケージツアーを利用する来道客は2割を割り込み、自由にルートを決める少人数、個人旅行にシフトしています。そうした背景も踏まえた対策の必要性を認識しています。

また、観光を通じて北海道ブランドを高め、道産品の輸出・移出の拡大につなげる仕掛けづくりも、本道経済の発展に欠かせない。

――議論が進んでいる道内7空港の民営化は観光とも密接にかかわってきます。

堰八 空港民営化は観光にとってまたとないチャンスになります。

国が進める民営化は民間に運営権を与え、空港ビルとの一体的な経営をさせるスキームで、着陸料なども運営会社が自由に、戦略的に設定できます。今のところ道内13空港のうち国管理の新千歳、函館、釧路、稚内に加え、市管理の旭川と帯広、道管理の女満別の計7空港が民営化の検討対象になっています。

そもそも新千歳以外の空港はすべて赤字の状態で、今後も単独で黒字転換するのは困難な状況でしょう。複数空港をバンドリングして1社が経営する手法によって、トータルで収益を上げ、再投資していくことが可能になります。効率性も高めることができます。

ただし新千歳の黒字で他空港の赤字を埋めるといった発想ではありません。各空港が特色を出して頑張り、全体で上がった収益を戦略的に各拠点に再投資をするという考え方です。

――早い段階から空港民営化に関心を持っていたと聞いています。

堰八 新千歳のターミナルビルを運営する会社の監査役を務めていることもあり、以前から動向を注視していました。広大な本道では観光だけでなく、生活の面においても交通ネットワーク網が重要なファクターになっているからです。

まして今後、大幅な人口減少が見込まれ、鉄路の現状維持が厳しい中、ますます道内空路の充実、高速道路網の整備が求められます。私としては、道内の広域交通ネットワーク網にも寄与する方針を打ち出す企業体が、運営会社に選定されてほしい。そう考えています。

さらに付け加えると、手軽に安く利用でき、道内主要地域をカバーする路線を持つ航空会社も必要でしょう。いずれ選定される運営会社には少なくとも、こうした路線を支援する方策を講じていただきたい。

空港民営化は観光のみならず、道民の生活そのものに直結する非常に重要なテーマです。最も良い形で着地できるよう、官民一体で向き合っていかなければ。もちろん私自身も力を尽くします。

=ききて/野口晋一=