「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

磨いた商品力、空間演出で
楽しいひとときを
掲載号:2015年9月

photo

上條努 サッポロホールディングス社長兼CEO

サッポロビールの前身である「開拓使麦酒醸造所」は、139年前に北海道で産声をあげた。上條努サッポロホールディングス社長兼CEO(61)に今後の事業展開、北海道への思いを聞いた。

大盛況だった「道産子感謝DAY」

――上條努社長は1976年に慶應義塾大学法学部卒業後、サッポロビールに入社しました。志望の動機を教えてください。

上條 私は生まれも育ちも仙台市です。ちょうど大学生の頃、当社の仙台工場ができました。当時の食品メーカーの工場としては、極めてきれいで斬新的なつくりで、そんな工場を持つ企業で働いてみたいと思いました。

就職活動で本社に面接に行ったとき、入口に巨人軍のスーパースター・長嶋茂雄さんのポスターが飾ってあったのです。当時、長嶋さんに「リボンシトロン」の宣伝にご出演していただいていました。「あの長嶋さんが出ているなら、きっといい会社だろう」とも考えましたね(笑)。面接では野球の話で花が咲いたのを覚えています。

――入社後のご経歴は。

上條 当グループは1876年(明治9年)、「開拓使麦酒醸造所」として札幌で創業しました。今年で139年目になりますが、私はちょうど創業100年目に入社しました。会社に入った後は18年ぐらい、ビール会社から関連会社に出向していました。サッポロUSAのサンフランシスコ支店長として5年間、海外にも赴任しています。

91年にサッポロビールの経営企画部にいた頃、開業してまもない商業施設「サッポロファクトリー」の事業運営にも携わりました。07年にサッポロホールディングス(HD)の取締役経営戦略部長、09年常務取締役を経て、11年から社長を務めています。

――サッポロHDは、どのような組織体制なのでしょうか。

上條 サッポロHDは、当グループを束ねる持ち株会社で、2003年に発足しました。国内酒販事業の「サッポロビール」、食品・飲料事業の「ポッカサッポロフード&ビバレッジ」、外食事業の「サッポロライオン」、不動産事業の「サッポロ不動産開発」に加え、国際事業の「サッポロインターナショナル」があります。
そのうち北海道では、首都圏などと同じようにすべての事業を展開しています。私も含めて社員には「北海道はわれわれが生まれ育った大地」という特別な思いがあります。

サッポロHDの社長になってから初めて、7月4日、5日に開かれた「サッポロビール★道産子感謝DAY」に参加させていただきました。北海道の方々に支えられてきた感謝の気持ちを込めて、この時期に年1回、サッポロビール博物館やサッポロビール園のあるサッポロガーデンパークで開催しています。

今年は発売30周年を迎えた「サッポロクラシック」を、1杯200円の感謝価格で提供しました。とても早い時間から、ビールと地物を楽しもうと多くの方々に集まっていただきました。

われわれは「サッポロ」と名乗っている以上、大きな責任があります。札幌以外の自治体と地域活性化の取り組みのお手伝いをさせていただいています。

特保のノンアルコールビールを発売

 ――そうした中、「北海道14振興局のうまいもの」キャンペーンを、10月19日まで展開中です。

上條 これは「サッポロ生ビール黒ラベル」の6缶パック、24缶ケースを対象に実施しています。パッケージの「底辺マーク」を郵送にて応募いただくと、抽選で14振興局ごとに各100人、計1400人にそれぞれの振興局のおいしい食材をプレゼントします。

たとえば、空知の「合鴨肉セット」、釧路の「白糠柳だこ(刺身用)」、オホーツクの「網走産毛ガニ2尾」などがあります。サッポロビールは北海道庁と包括連携協定を締結しています。このキャンペーンを通じて、北海道の「食」ブランドの向上、ならびに活性化に寄与していきたいと思います。

――ビール・酒類市場の現状を教えてください。

上條 ビール市場には、「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」、さらに「ノンアルコール」の商品があります。以前に比べれば、いろいろな商品が提供されることで選択肢の幅が広がっています。

北海道のビール市場では、当社がおかげさまで、多くのお客さまにご支持いただけています。飲食店様などでも圧倒的なご支持をいただけています。黒ラベルは順調に売り上げを伸ばし、ヱビスはプレミアムとしての評価を受け、ご愛顧いただいています。

今年はノンアルコール市場で初となる特定健康食品の新商品「SAPPORO+(サッポロ プラス)」を発売しました。他社に先駆けてわれわれが市場に特保商品を提供できました。私はこの攻めの姿勢を評価しています。また、9月から高級ワインの取り扱いを始める予定です。「テタンジェ」と呼ばれる世界的な著名ブランドのシャンパンを扱います。外国の方々からもサッポロブランドに信頼を置いていただけるようになると思います。非常に楽しみにしています。

 「とりあえず、ビール」を広めたい

――ビール需要喚起にどう取り組んでいきますか。

上條 ビールは本来、悲しいときに飲むものではありません。「酒の効用」と言われますが、仲間や家族とすばらしい時間を過ごす〝潤滑剤〟のような存在です。われわれは、その役割を理解していただける努力をしていかなければなりません。私は業界をあげて、宴席では「とりあえず、ビール」と言ってほしいと思っています。
ライフスタイルの中でのTPO(時、場所、場合)に合わせて、消費者の選択の幅を広げられるような商品を提供していく必要があります。

――札幌駅の地下街「アピア」に今年4月、ビヤバー「YEBISU BAR(ヱビスバー)」が、オープンしました。

上條 潤滑剤は商品だけではありません。楽しい、リラックスできる時間を提供できる空間も大切です。YEBISU BARを展開するサッポロライオンには、「Joy of Living―生きている喜びの提供―」という企業理念があります。YEBISU BARは、東京と関西に13店舗展開しており、北海道は初出店で合計14店となります。

当グループは北海道で、ホップやワイン用のブドウなどをつくっていますが、原材料の宝庫であり、農産物も多くの種類があります。ヱビスバーでは、道産食材を使用した限定メニューも用意しています。

ビヤホールという言葉は日本でつくられた造語です。札幌は全国と比べて、ビヤホール、ビヤガーデンが多い印象です。いま、東京、名古屋、関西のマーケットを分析すると、ビヤホールという業態が見直されつつあると分析しています。

京都には4年前にオープンしたヱビスバーがありますが、当初、京都にビヤホールをつくってもはやらない、と言われました。ところが、多くの若い女性連れが利用しており、たくさんのお客さまから支持をいただいています。その理由を考えると、ビヤホールには安心感があるのではないでしょうか。

まず、ビヤホールと名乗っているのだから、ビールがマズいわけがない。多少の大声は構いません。値段もさほど高くないし、レストランとしては垣根が低く、制約要件がほぼありません。

ビヤホールと聞いたとたんにイメージが沸き、その通りのものがあります。いまの大人たちにとって気を張ることなく、くつろげる空間になっているのではないでしょうか。

 クリーンなイメージがアジアで強み

――サッポログループは、ベトナム、シンガポールなど東南アジアでも、事業展開しています。

上條 11年11月にサッポロビールは、ベトナムにビール工場を竣工しました。日本のビールメーカーが、アジアで工場を稼働させたのは初めてのことです。ベトナムの年間ビール消費量は360万キロリットルくらいです。日本の550万キロリットルには及びませんが、アジアでは3番目というビール大国です。

「氷を入れて泡なしで飲む」など、ベトナムには独特のビール文化があります。味の嗜好など地元の人々の声に耳を傾けながら、地域に愛される場所になる工場をつくりました。

実は現地法人「サッポロベトナム」社長の岸裕文は、空知管内浦臼町の出身です。以前、北海道商工会議所連合会のみなさんがホーチミンを訪問するときも、彼がベトナムの現状をお話しさせていただきました。

また、ポッカサッポロも約40年、シンガポールで商売をさせていただいています。いまでは、アジアなど約60カ国に飲料を供給しています。シンガポールの生産体制を補完するため、マレーシア工場も稼働させました。

――ここ数年、東南アジアから北海道を訪れる観光客が増えています。

上條 私はアメリカに駐在していましたが、札幌五輪のおかげで、札幌の名は広く知られていました。現地の方の「札幌」の発音はわれわれと同じなのです。先日、秋元克広札幌市長に会ったときも「札幌は音として発音しやすい。これは大きな強みになります」と伝えました。
東南アジアの方々は、札幌、北海道の自然や食べ物、が大好きです。「サッポロビール」と聞けば、日本のメーカーがつくったもので、しかも品質は安全・安心が想起されるのでしょう。

サッポロと名乗っていることで、当グループに極めてクリーンなイメージを持っていただけており、北海道への強い憧れがプラスになっています。国内はもとより、海外事業でも北海道、札幌のみなさんに支援をいただいているといえます。

――サッポロの商品が東南アジアで浸透していけば、それが北海道や札幌のPRにつながります。

上條 東南アジアの方々に「次は創業地の北海道で飲んでみたい」と思ってもらえれば、これほどうれしいことはないですね。微力ですが、さまざなな形で北海道の活性化に貢献していきます。

=ききて/前田圭祐=