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Interview

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目立つより、光れ。掲載号:2019年2月

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松井正憲 TVh テレビ北海道社長

TVhは今年開局30周年を迎える。日経新聞出身の松井正憲社長が記念事業に向けた抱負を語った。放送と通信の融合が進む昨今、道内ローカル局で独自性を貫くTVhは、どう生き残りを図っていくのかも聞いた。

放送と通信の融合で変化し続ける

松井正憲氏は1956年8月15日、東京都生まれ。早稲田大学政治経済部卒。80年日本経済新聞に入社。初めての配属先は東京本社編集局経済部で、日本銀行の記者クラブに詰めた。ワシントン支局長だった2001年には大統領就任直後のジョージ・W・ブッシュ氏にインタビュー取材をおこなった。同年に発生したアメリカ同時多発テロ(9・11)を現地で経験。記者時代で最も印象に残っている出来事だという。

帰国後は札幌支社編集部長、本社編集局次長兼国際部長、同兼夕刊編集長などを務めた。12年に日経リサーチ取締役に就任。15年にテレビ北海道専務となり、17年6月より現職。

   ◇     ◇

――TVhに転籍して3年がたちました。

松井 これまでテレビ業界とは縁がありませんでした。知らないことも多いので、周囲に支えてもらいながら、それらを吸収できるので楽しく働いています。ざっくり説明すると、少し暗くて固いイメージのある新聞に比べて、明るく、華やかに見えるのがテレビかなと思っています。

あとは新聞にとって報道が第一にくるわけですが、テレビは報道、スポーツ中継、生活情報など、さまざまジャンルから成り立っている印象です。

――いまのテレビ業界をどう分析していますか。

松井 業界歴はまだ浅いですが、この間、いろいろな動きがあり、放送界は未曽有の変化の時代に突入したと思っています。直近では昨年12月、NHKや民放BS局が衛星基幹放送チャンネルの1つ、BS4Kをスタートさせました。

放送業を管轄する総務省は、放送法の改正をへて、NHK地上波番組のインターネットでの同時配信を認める見通しです。今後、国会で放送法の改正が議論される予定で、来年3月までにはネットの同時配信がスタートすると思います。これによって、放送と通信の本格融合が始まるということです。

民放連としては、ビジネスとして儲からないので、基本的にはあまりやりたくないというのが“本音”ではないでしょうか。でも、時代の流れを受け止めると、やらざるをえない。視聴者にとっては番組を見る選択肢が増えるので、それは間違いなくいいことです。

――昨年11月から総務省の肝いりで、放送をめぐる諸課題に関する検討分科会 が始まりました。いろいろなテーマを1年ほど議論していくことになりますが、その中の1つに、ローカル局の経営問題が主要テーマになっています。

松井 そこからもわかる通り、ローカル局のビジネスモデルの転換が迫られるのだろうと感じています。これまでテレビ局はそれぞれ、経営努力をしてきましたが、放送事業は免許制ですから、守られてきた部分もあります。

昔は見るものといえば、テレビしかありませんでした。それが、インターネットの台頭などで、さまざまな広がりをみせています。放送と通信の融合によって、今後、放送局としては番組配信の方法、番組制作、広告の取り方なども変わってくるでしょう。

当社では1年ほど前から今後の経営に向けた議論を重ねています。さまざまな変化をにらんで編成、報道制作、営業など、各部門でゼロベースで見直す作業をおこなっています。

たとえば、ローカル局であってもネット配信分野に足を突っ込んでおかないと、時代の変化に取り残されてしまう。そして、それをどうマネタイズ(ネット上の無料サービスから収益をあげる方法)していくかが求められます。

簡単にモデルケースがつくれるものではないと思います。各部門の見直し作業は19年度以降の継続案件になっています。

――キー局・テレビ東京は独自性を貫くテレビ局として昨今、とくに世間の話題になる番組が多い。

松井 テレビ東京の番組に対する反響は地方局としてもありがたい限りです。個人的には「緊急SOS 池の水ぜんぶ抜く大作戦」「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」などが好きです。面白いと思います。

テレ東も頑張っていますが、少なくとも、たとえば日本テレビと真っ向勝負するのはなかなか難しい。テレ東は他の民放キー局と比べても規模が小さいわけですから。そうすると、ニッチな部分を探して、番組をつくる。これがいま、うまく世間から支持を受けているのではないでしょうか。

広義で暮らしは経済、そこを豊かに

――TVhは1989年10月1日に開局しました。2019年には開局30周年を迎えます。

松井 当社は平成の始まりとともに開局し、新しい元号の年に節目を迎えます。30周年という節目を変化の時代を勝ち残るためのステップボードにしたいと考えています。

30周年のテーマは「変わり続けながらTVhのブランド力を高め、もっと道民の心と暮らしに寄り添うテレビ局になろう」です。先ほども述べましたが、放送界の大きな変化の始まりの年に、その変化に対応し、テレビ局も変わり続けなければ勝ち残ることはできません。「らっぴぃ」に変わる当社の新キャラクター「シロクマセブン」も変わり続けるという意味合いを込めてつくりました。

今後の放送界は同業との競争だけでなく、他業種とも競争していかなくてはなりません。そう考えると、僕らの限られたリソースを集中的にどう投入していくのかが問題になってきます。

たとえば、当社の看板番組に「けいざいナビ北海道」があります。実は経済番組をつくるのは意外と大変なんです。テレ東もTVhも日本経済新聞の流れの中で、ということはありますが、狭い意味での経済ではなく、広い意味で暮らしは経済なんです。ですから、そこが当社のメーンステージだと思っています。

30周年のテーマにあげたように、道民の暮らし、また北海道に暮らす人々の心。それらを少しでも豊かにするのが目指すところです。

――どのような開局30周年記念事業を予定ですか。

松井 もともと当社では17年度からイベント事業を第2の本業にするという方針を打ち出しています。記念事業はその延長線上という位置付けでもあります。

当社のイベントの観客動員総数は年間20万人ほど。簡単なことではありませんが、これを近い将来25万人にしたいと思っています。

当社のイベントとして、北海道最大のハンドメイドフェスティバル「サッポロ モノ ビレッジ」があります。札幌ドームで実施し、18年は2日間で来場者数は3万8440人でした。女性の割合が圧倒的に多く、全体の84・6%となります。

年代別では10代は1499人と少ないのですが、20代7650人、30代9802人、40代9687人、50代7073人、60代2729人となっています。来場者にアンケートを取ると、滞在時間が平均4時間で、1人あたり平均5000円近く買ってくれています。

若い女性はテレビを見なくなっているといわれていますが、リアルな世界では2日間でこれだけの動員があります。このコンタクトポイントは意外とすごい。計算の仕方によっては、テレビの1時間番組で、視聴率ふた桁くらいになります。

ですから、イベント事業で1つ考えているのはバーチャルとリアルの融合です。テレビはバーチャルでイベントはリアル。それらを融合しながら、マネタイズも同時にできればと思っています。

30周年記念事業としては、まずはモノビレッジの延長線上で「北海道メイカーズ」を札幌ドームで開催します。5月には「さっぽろ落語まつり 三遊亭円楽プロデュース」を3日間おこないます。東西の有名な落語家約30人が集まります。すでに九州・博多では同様のイベントをやっているんですが、北海道では初開催です。

北海道ではいま、落語がはやっています。当社も月に1回以上は独演会を主催しています。落語家さんに話を聞くと、北海道のファンは一生懸命、話を聞こうとするので、すごく温かいと感じるそうです。

このほか、5月に「宝塚歌劇 星組 全国ツアー 北海道公演」、6月~7月に「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」をおこないます。

ゴールデンタイムに自社制作で勝負

――番組関係では。

松井 大きな目玉が、全国ネットで放送予定のドキュメンタリー番組です。まだどなたかは言えないのですが、有名な人間国宝の方に1年近く密着した作品となっています。

もう1つが旅番組です。若干の変更はあるかもしれませんが、新年度以降、週末のゴールデンタイムに1時間放送します。毎週放送できたらいいのですが、コスト面などもあり、最初からということは難しいので、月1回となります。

ひと言で旅と言っても、スイーツを探す旅、温泉秘境めぐりの旅だけではなく、「人生が旅だ」となれば、それも当てはまるわけです。ですから、新番組は旅という持ち株会社の下に、オーソドックスな旅もあれば、それ以外の旅コンテンツもあるというイメージです。

年明け以降、実験番組を放送予定です。北から南までの新幹線の駅をつなぎ、そこのラーメン食べるという旅番組になります。系列局にも協力してもらい、制作します。

――過去、ゴールデンタイムで自社制作番組を放送したことはありますか。

松井 すべて調べたわけではないですが、非常に珍しいと思います。ゴールデンは普通、ネット(キー局)の放送が入っているか、テレ東の人気番組を買ってきて流すか。そのほうが視聴率も取れますし、無難ではあります。

しかし、せっかくの節目でもあります。お金も人もそこまで大量にはかけられませんけど、ゴールデンという檜舞台で、1回、自社制作で勝負してみようということになりました。

――開局30周年に向けた抱負をお願いします。

松井 30周年のキャッチコピーは社内公募で「目立つより、光れ。」としました。北海道のテレビでいうと、当社は、たとえば、売上の大きいSTVと真っ向勝負できるわけではありません。それに少しお恥ずかしい話ですが、視聴者調査をやると、TVhのイメージは「ほとんどない」という答えをいただくこともあります。

そういう現状を踏まえ、規模の成長を目指すのは当然ですが、さすがに当社が1番を狙うわけにはいきません。だとすると、テレ東がニッチな部分、独自性を貫いて支持を得ているように、TVhらしい光り方があるということです。たとえ、光源が小さくても光の効果がきちんとあるということに焦点をあてていきたいです。

記念事業はできるだけ全社員が何らかの形で関わるようにしたいと考えています。やらされている感ではなく、自らもワクワクやドキドキする感情を持ってもらいたい。そういう思いを全社員で共有しながら、おらが30周年事業ということで実施していけたらと思っています。

=ききて/竹内洋規=