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Interview

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渡辺満久が指摘 泊原発の敷地は地震で隆起する掲載号:2012年9月

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渡辺 満久 東洋大学社会学部教授

 野田佳彦総理は原発再稼働に前のめりだ。電力の供給不足を心配する産業界も、原発必要論を叫んでいる。その一方で福島の教訓は風化しつつある。変動地形学が専門の渡辺満久東洋大学教授に原発立地の問題点などを聞いた。

泊原発沖15キロに大きな活断層

――泊原発周辺の断層について教えていただきたいのですが、先生は泊沖の日本海に活断層があると指摘していますね。昨年の春に本誌がインタビューした際には、積丹半島の沖合約15キロの西方海域で、水深200メートル、もしくはもう少し深いところにあり、長さは60キロから70キロ。動き方は東側があがるような逆断層だとおっしゃっていました。しかし、その後も北電や原子力保安院はこの活断層の危険性を考慮していないように思いますが。
渡辺 最近の報告を聞いていると、泊原発付近の断層(泊原発沖の最短30キロ付近を通る海底活断層約98キロ、陸の黒松内低地断層帯と八雲断層帯を合わせた約66キロ)を全部つなげて、噴火湾までいく160キロ以上の長い活断層を想定して、「大きな地震が起きても大丈夫だよ」という計算をしたことは、それはそれでムダなことではないと思います。
ただ、最大の問題は泊原発がある積丹半島の近くにあるのです。積丹半島は確実に隆起をしています。12万年間に、少なくても20メートルから平均で30メートルくらい隆起をしています。
ところが、北電の調査結果では、積丹半島を隆起させるような活断層がまったくない。それではこの地域の成り立ちをまったく説明できないと思います。
――隆起をしていることも、隆起を引き起こしたであろう活断層の存在も、その活断層による地震の危険性も説明していないということですか。
i3渡辺 積丹半島の西側に海成段丘という確実に隆起をした地形があります。しかも、海岸部を見ると、地震のときに海岸が干上がったような特徴的な地形がいくつかあります。これを離水ベンチ(波食棚)というのですが、それがあるということは地震性隆起をうかがわせるものです。
それと12万年間で数十メートル、隆起したことを考えると、断層運動でできたということになります。
で、その断層がどこにあるのかというと、北電や保安院が想定した断層は半島を沈降させる動きをしているので、これではありません。すると、この図に表示した活断層しかないのです。
――積丹半島のすぐ西側の海底に点線で表示してある「考慮しなければならない活断層」と表示してあるものですね。先生は2009年の地震学会で
渡辺 北電や保安院は、私が「段丘の高さは断層に近いところでは多少高くなって、遠いところではそれほど高くないというように差が出ている」と言ったことを誤解、錯覚し、「段丘の高さの違いが断層運動の証拠だ」と言ったと思ったようです。
北電はその後、必死に追加調査をおこなった結果、「段丘面の高さには差がなかった」と報告し、われわれの説を否定したと思っていますが、まったく本質を見誤っています。段丘面の高さに違いがなくても関係ないんです。
とにかく、この活断層が地震を引き起こし、海成段丘を隆起させていることが問題なのです。
ところが、原子力の世界では「地震と関係なく徐々に隆起するんだ」ということをよくおっしゃるんですよ、何の根拠もなしに。泊のケースでも、そういうことをおっしゃりたいのでしょうけれども、そういった証拠はまったくありません。
数十年間にこの辺がどのくらい隆起しているんだとか、地震と関係なくずっと隆起しているんだという証拠があれば理解もしますが、とにかく彼らは「地震とは関係ないんだ」と結論だけを言うのです。

海岸線には地震の証拠がありありと

――結論に至った理由や根拠は提示しないのですか。
渡辺 しませんね。
例えば、大間でもそうなんですよ。大間にも同じように地震性隆起の跡があって、段丘が非常に高い。私たちは活断層があるのではないかと言っています。しかし、電源開発と保安院は「活断層は関係ない。ジワジワと隆起してくるんだ」と主張しています。「何でジワジワと隆起したのがわかるのか」と聞いても、その証拠は出さないのです。
それでは学術的な議論になりません。
大間に関しては近くに国道があり、国土地理院が100年近くにわたって標高を測ってきています。本当にジワジワ隆起しているのならばわかるだろうと調べてみましたが、まったくそういうことはありませんでした。だから、ジワジワ上がってはいないということを、私は証拠で示している。
――やはり地震でドンと隆起したのでなければ、説明がつかないのですね。
渡辺 その通りです。離水ベンチがあって、高い段丘が隆起している。近くに活断層があって、それが動くとドンと隆起する。
――まさに地震で隆起する真上に大間原発の建設予定地があるじゃないですか。
渡辺 原発予定地から活断層まで、水平距離で十数キロです。非常に近いところで地震が起こる可能性が高いのです。ちゃんと考えて耐震設計をしてほしいと思っています。
福島以来津波の話ばっかりになっちゃいましたが、国会の事故調でも福島の原発事故の原因は、津波だけではなく地震の揺れによるものだということがわかってきています。
――泊原発で心配なのはやはり活断層ですか。
渡辺 パソコンのこの写真は積丹半島の海岸線です。いまはその下を波が削っていますが、このベンチはかつて隆起して削られた跡です。神威岬の神威岩もそうです。有名なのもいっぱいありますよ。この写真は1793年の地震のときに隆起し、干上がったものです。日本中に同じようなものがあるわけですよ。
――地形学では、海岸のこうした離水ベンチは地震のときに表れるような間欠的隆起(断層運動)によってできたというのが定説なんですよね。
渡辺 少なくても否定はできない。その可能性は高いということです。
――その考え方が普通であって、証拠となる離水ベンチや海成段丘が周りにいっぱいあるとしたら、活断層と地震の発生、それによる隆起を疑うのが当たり前じゃないですか。
渡辺 おかしいんですよ。原子力の世界では違う。
積丹半島の海岸線も100%地震が起こした隆起ですかと言われれば、それはわからない。違う理由で起きたかもしれない。だが、事実として例がいっぱいあるわけだから、さっきのような地形があれば、地震性隆起が起こっているのではないかと疑うのが普通です。
ところが、原子力村の妙な論理ですが、可能性であれば否定してしまう。おかしな話です。とにかく、ないから始まりますからね。
例えば、去年の4月11日に福島県内で大きな余震が起きました。東電と保安院は活断層でないものが動いたと大騒ぎし、大手マスコミもそれに引きずられた。しかし、私たちは活断層とマッピングしていました。いっぱいあるんですよ、そういうことは。

とんでもない原発立地がいっぱい

――積丹半島でいつ地震があるのかはわからないでしょうが、地震で隆起するとしたら、過去の例から考えるとどのくらいですか。
渡辺 2メートルくらいだと思います。
――大丈夫なんですか。
渡辺 揺れだけなら多分。
私は何が何でも泊原発を止めろと言っているわけではない。この問題をクリアすれば、より安心になるわけなのに、それをやたらと否定してまったく相手にしない態度は非常に困ったものだと思います。
私は06年に誘われて島根原発の近くの活断層調査をしました。そのときまでは、原発ですから、ちゃんとした専門家が調査をして、ちゃんとした専門家が評価をしていると信じていました。ところが、実際に松江の近くの活断層を調査したら、とんでもない結果がでました。それであちこち調べてみると、原発立地地域の活断層の評価が非常におかしいことに気がついた。
それにしても、とんでもないところに立地している原発が多い。過去の保安院や安全委員会の審査がおかしいんですよ。なぜそうなるかというと、場所ありきで審査が始まり、安全だと言う専門家が雇われているからです。
私たちがこの人たちはダメだと指摘する人間の1人が、福島のバックチェックの主査を務め、津波の被害を低く見積もり、震度も過小評価した張本人です。福島の事故に想定外はありませんでした。869年の貞観の大地震は誰でも知っていた。想定できたものをしなかったから起きたのです。人災なのです。
大飯原発も活断層があるという想定ができているのに、それを検討もしないで再稼働とはどういうことですか。また、福島と同じことをするのですかと言いたいですね。

=ききて/酒井=