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Interview

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洗練された「食と観光」を売り込む掲載号:2017年9月

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小髙咲 日本銀行札幌支店長

6月に着任した小髙咲氏は、9年ぶりの地元出身の日本銀行札幌支店長だ。北海道経済の現状をどう見ているのか。あわせて、仕事と家庭を両立させてきた自身の経歴を踏まえて、女性の活躍推進に大切なことなども聞いた。

道内経済の足元は回復基調にある

小髙咲氏は札幌市出身の55歳。札幌北高校卒業後、東大法学部に進学。1986年に日銀に入行した。システム情報局業務システム開発課長、業務局参事役などを経て2015年10月に文書局参事役。今年6月から現職。

   ◇    ◇   

――札幌のご出身ですが、高校時代と比べたら町並みも変わっていると思います。

小髙 とくに札幌駅周辺が大きく変わった印象です。当時、札幌駅から大通周辺までは地下鉄で移動するのが普通でした。いまは両地区間に地下歩行空間が開通し便利になりました。札幌駅周辺も以前より買い物客でにぎわっています。

――故郷での勤務に特別な思いはありますか。

小髙 生活そのものは生まれ育った場所なので、楽かなとは思います。ただ、高校時代は「経済はどうなのか?」などという視点で、北海道を見たことはありませんでした。今回、こういう立場で戻って来られました。そういう観点で道民のみなさんから話をうかがったり、住むことが楽しみです。

実は北海道出身であるがゆえに、札幌近郊以外にあまり行ったことがないんです。北は旭川、東も旭川どまりで……(笑)

赴任中にさまざな場所を訪れてみたい。仕事を通じて、北海道に何か貢献できることがあればと思っています。

――大学卒業後、日銀に入られた経緯を教えてください。

小髙 日銀に入行したのが1986年です。男女雇用機会均等法の施行1年目でした。総合職で4大卒の女性を採用する企業は、いまの時代ほど多くありませんでした。先輩のつてを頼って、そういう新卒採用をしている企業を業種問わず受けました。仕事の中身として公共的な使命はイメージしやすく、日銀に入りました。

――入行後のご経歴は。

小髙 在籍という意味で長かったのは、システム開発につながる業務企画に10年ほどいました。もう1つが金融研究所というところで、金融制度や会計制度の研究を7年くらいやりました。

そのほか、入行してまもなく福島支店に2年弱、20年くらい前にロンドン事務所に駐在員として2年ほど滞在しました。それ以外は東京勤務です。日銀の女性支店長は私で5人目です。現在は、横浜支店長と私の2人で、ロンドンの欧州統括役も女性です。

――北海道経済の現状をどう分析していますか。

小髙 足元は回復しています。日銀としても今年春先くらいまでの景気判断を改善の方向に引き上げました。さまざまな統計データも回復基調を示していると理解しています。企業短期経済観測調査(短観)を7月はじめに公表しましたが、中身もそれを裏付ける結果になりました。

――注目している業種はありますか。

小髙 公共投資・建設関係では、昨年の台風被害の復興需要で仕事が増えています。輸出・生産では、海外の動向に応じて直接、間接的に道内の製造業にいい影響を与えています。

短観を見ると本年度の設備投資の計画も、いい数字が出ています。雇用・所得面については、昨年の冬ボーナスと今春のベアをみると、中小企業を主体に持ち上がってきています。

北海道で付加価値を付けて売り込む

――北海道の可能性については。

小髙 私は就任会見で「食と観光」と申し上げました。東京で札幌に赴任すると話すと、みなさんがそのフレーズを口にします。これは北海道外の人が北海道の魅力と感じている部分です。

観光は調査結果を見ると、海外の観光客は安定的に増えています。来道者がどれだけ滞在して、どれだけおカネを落とすのかがカギです。呼び込める海外の国の広がりも期待でき、伸ばせる余地があります。道民が当たり前だと思って、観光の観点で魅力に気づいていないものがまだまだいっぱいあります。

食についても、質のいい素材は全道にありますよね。原材料の産地が北海道というだけでも、価値があると私は思います。夫とも話しているのですが、選べるなら北海道産を選びたいんです。試しに食べてみるとやっぱりおいしい。とくに加工食品ですが、残念ながら本州で加工されたケースが多いんです。

北海道では素材に付加価値をつけて売ることが、なかなかできていないという話を耳にします。いい素材を道外で加工して、何倍もの値段で売られているのは残念です。

私が高校卒業後、東京に初めて行ったとき、北海道はまだまだ“未開の地”だと、みなさんがまじめに思っていたんです。

新聞は2日遅れて届くとか、木のリンゴ箱を逆さまにして勉強しているイメージです(笑)

私は東京の人の強烈なメジャー意識を感じました。当時、東京の有名進学校で北海道で知られているのは開成くらいでした。ところが、東京にはたくさんあります。それを知っているのが当たり前という前提で会話が進みます。自分たちが中心というメンタリティーがありました。

私はいろいろな意味で北海道出身というマイノリティーを感じました。北海道には洗練されていないアバウトな部分がたくさんあります。心の中にはそれで何が悪いという思いもありますが、これからは北海道の食と観光を洗練させていく。その意味では、日本のおもてなしがあります。海外を見ても、本来はおカネをいただいて提供するサービスであると思います。北海道はその点で改善の余地があるならば、洗練させて売り込むという方向で、食と観光産業を伸ばしていけばいいなと感じています。

仕事を辞める決断を早まらない

――政府は働き方改革として、女性の活躍を打ち出しています。

小髙 女性の就業率、子ども1人当たりの保育所数などをみても、北海道は全国平均と比べると下です。

介護も子育ても女性が担った上で、男性がどこまで手伝うのか。女性が取り組む前提で制度を整えていく、という議論になります。

私はそうじゃないだろうと思っています。やはり男性の意識改革も必要です。自分が家事や育児を手伝っているという発想は、私の中ではNGです。

自分がこれをやっていて、たまに妻に手伝ってもらっいる。そういう考え方の男性が増えると、女性が活躍しやすくなるのではないでしょうか。

その一方、いろいろな事情や考え方から働かないことを選択する女性もいるわけです。そういう方々の肩身が狭くなる世の中になることも、好ましくないと思っています。

――北海道の働く女性のみなさんにメッセージなどはありますか。

小髙 30年前なら結婚したら仕事を辞めるという話になりました。いまは、結婚したら辞めるのは当然、という考え方は薄れつつあります。

女性が夫の転勤、出産などで仕事をやめる選択、判断は、けっこう簡単にできると思っています。でも、同じ条件の仕事をもう一度見つけるのはすごく難しい。あまり早まって決断をしてしまわずに、悩んでいる間もズルズルと働き続けることもいいのではないでしょうか。

――趣味などはありますか。

小髙 高校までは北海道に住んでいたのでスキーが趣味です。東京に行ってから、ずっとブランクがあり、映画「私をスキーに連れてって」が公開された前後に少し行った程度でした。

その後、息子が4歳、5歳になった頃、スキーを経験させようと思いました。ひさしぶりに北海道に来たとき、きれいな雪の結晶が見えました。スキーはこんなに気持ちがよくて、景色がいいものだったと。それを思い出してからハマっています。

東京時代は群馬、長野、岩手、福島のスキー場に行っていました。途中から道は雪がなくアスファルトで、スキー場のコースに人工雪があるケースが多いんです。ここ何年かは、もう北海道に行ってしまおうと考えて、毎年訪れています。

スキーは板の性能が上がり、滑り方が劇的に変わりました。少し体重をかけるだけで曲がるようになり、とても気持ちがいいんです。

スキーは止まるために力を使うほぼ唯一のスポーツのような気がします。ほかは動くために力を使いますよね。スキーは斜面を利用して脱力で楽しめるので、中高年向きです。ケガだけはしないように気をつけながら楽しみたいと思います。

――本日はお忙しいところありがとうございました。(取材日=7月14日=)

=ききて/前田圭祐=