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Interview

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泊原発の緊急防護措置区域に札幌市を入れろ!掲載号:2012年1月

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上田 文雄 札幌市長

 上田文雄札幌市長が怒っている。いくら要求しても、泊原発の防災安全協議に札幌市を加えようとしないからだ。泊原発の安全対策をみんなで考えようという上田市長の訴えに、道や国、北電はどう応えるのか。

アメリカのような医療はいけない

――この1年間で最も心に残ったことは何ですか。
上田 それは震災と原発事故ですよ。このダブルパンチは悲惨です。私は原発問題に30年来携わってきましたが、これまで言ってきたことが全部起こってしまった。本当に凄まじい状況がここにはあるわけです。ですから、私にとっては福島の原発事故が1番大きな出来事でした。
そしていま、だんだん世論というものが、醒めてくるというか、慣れてきたというか、世の中が平穏のようにみえてくることに、恐ろしさを感じています。
――市長選で3選を決めたのも2011年ですが…
上田 TPPで1番問題とされているのは、農業が壊滅状況になるのではないかということです。農業が基幹産業の北海道にとって、もし農産物の関税がフリーになってしまったら、大きな打撃を受けるだろうということは、政府筋も述べています。北海道の産業の基幹部分が打撃を受けるということは、イコール札幌も打撃を受けると思います。
消費力も落ちるし、サービスも低下、生産力も落ちる。そして経済の活性化が阻害される。そういうことになることをわれわれは心配しています。
アメリカのオバマ大統領は、再選絡みの戦略として外交で何らかの成果をあげなければならない。そういう時間的限界の中で急いでTPPをやろうとしているように思えます。日本政府は国民がしっかり判断できる材料を示さなければなりません。
――民主党政権から選挙公約にもないTPPや消費税引き上げという政策が出てくるというのは、どうかと思いますけどね。
上田 民主主義との関係で言えば、「選挙で次はこうするぞ」と、きちんと言わなければならない。外交上の問題があるんでしょうが、TPPを急いでいる理由は、アメリカが自国の利益のために強引に迫っているからという説もあるくらいです。ものの本には「貧困大国アメリカ」と書いてあります。売るものがアメリカには農産物しかなく、あとは医療のシステムや司法のシステムで囲い込んで利益を上げるしかない。日本がそれに付き合ってテーブルに着かざるを得ないというのは、国力が違うので外交判断としてしかたない面もあるとは思いますが、本来であればもっと研究して腰の据わった議論を出発点にしなければならないと思います。
――TPPによって、日本の国の形、制度がアメリカ的に変容させられるという危惧もあります。医療、保険、共済、司法なども…
上田 ぼくもそう思っているんですよ、実は。カネの多寡ではなく、病気で困っている人は治療を受けられるという日本の仕組みが、アメリカのようになってはいかんと思います。

「情報はホームページで見て…」

――泊原発の安全にかかわる議論の一環として、原発事故に備えた「緊急防護措置区域」(UPZ)に札幌市も加えるべきだと主張していますね。
上田 福島の原発事故の結果を見れば明らかです。チェルノブイリ事故からも当然わかっていたことです。ただ、事故は起こっても、チェルノブイリ規模のあれほどひどいものは起きないだろうと多くの科学者も思っていたのでしょうね。ですが、実際にこれほどの事故が起きたのだから、科学者として内心忸怩たる思いを持ちながらも、「二度と過ちは繰り返さないぞ」と誓ったと思うんですよ。
ところが、今回の泊原発のUPZをみると、全然変わっていない、反省のない人もいるっていうことなんだね。驚きだよ。それはひどすぎる。
福島から札幌市に避難してきている人が1000人以上もいる現実をみていながら、「大丈夫だ」とどうして言い切れるのでしょうか。まして、半径10キロ程度のEPZ(緊急時計画区域)を30キロのUPZに拡大しても、それで安全なんですか。
――福島原発の事故で放射線は、60キロ離れていようと70キロ離れていようと現実に飛来したわけですね。それなのに市の中心部が泊原発から70キロ離れている札幌市は、UPZのオブザーバーにも入れないんですか。

上田 「何かあったら相談しましょう」程度の話ですよ。「情報あったらください」と申し入れたら、「わかりました。ホームページに書いておくので見てください」ということでした。
そうじゃなくて、どんな事象でも事故でも不具合でも、私はオープンにすべきだと思います。関係自治体にはリアルタイムで知らせるべきです。危ないものを扱っているのだから、これは当然のことだと思います。みんなから見られているんだという緊張感なしに事故を防ぐことはできない。内々に情報を囲い込んで、「これなら言わないでいい」という意識が危険な事故につながると思います。
それを否定する人はあまりいないと思います。だとすると、この情報公開を現実にシステム化するのは、われわれが負っている将来に対する責務だと思います。
――排除は理解できない。
上田 「一緒に考えたい」と言っているのに、排除する理由はまったくないでしょう。放射線で直接被害を受けるかどうかは、風向き、天候次第でまったく変わるわけですよ。福島第1原発の事故によって福島市の放射線レベルはいまも0・9(マイクロシーベルト毎時)台です。泊原発であの規模の事故が起きたら、札幌もそうなるんですよ。
そうであれば、当然、市民を保護する対策を取らなければならない。あるいは泊原発から10キロ圏、30キロ圏内から避難した人々をサポートする役割を札幌も果たさなければなりません。「原発関連の交付金をもらっていないから、オレたちは手伝わないよ」なんて話にはならない。当然、助け合わなければならないんです。避難路の確保もそうです。隣接、隣々接自治体、そして大都市札幌市が話し合わなければならない問題です。
原子力防災計画には札幌の役割を協議の中で決めていかなければなりません。そのためには、事故があったときだけ手伝えばいいのではなく、日常的に情報を共有し、話し合っていくべきです。どういうことが想定されるのか、最悪の場合はみんなで協力をして、最小限の被害に減災しなければなりません。
にもかかわらず、なぜ札幌は協議の場に参加してはいけないのでしょうか。

LPG発電を都市の近くに

――原発に代わるエネルギーには、どのようにかかわっていきますか。
上田 石狩湾新港でLPGの貯蔵プラント、発電プラントの建設を急いでいただきたい。道央地区に100万キロ
また、大量消費をするところはたいてい自家発電をしていますが、各自が省エネに協力する必要があるのではないでしょうか。いま15%の省電力が叫ばれていますが、徹底すれば各ご家庭でもできますよ。わが家はこの夏、前年より3カ月で24%カットしました。家電製品を省エネ型に変え、電気のON、OFFをこまめに実施しています。やれば可能だということを私は示したいんですよ。
オーストラリアの大使がいらっしゃって「うちには石炭のほかにも天然ガスがあるよ」とおっしゃってました。ロシアも市場経済化されて20年たちますから、商取り引きで昔のようなことは少なくなったと思います。もっともっと関係を深めていけば、相手を裏切ることは自分の不利にもなりますからね。
太陽光もやっていただいたらいいと思いますが、蓄電池などの技術がもう少し発達しないと、安定供給が本物になってきません。風力もそうですよね。送電の問題もあります。発・送電を分離しないと、既存の電力会社がコントロールしてしまうという状況を脱することはできません。そのへんは法改正をした上で、将来を見据えた国民的合意が必要ですね。

コンテンツ特区で、まちづくり

――北海道新幹線の札幌延伸に追い風が吹いているのではないですか。
上田 2011年内に札幌延伸着工を決定しないと、多分「もうやらない」という決断をしたのと同じだと思います。いま以上に状況が好転する要素はないですよ。だから、いまやれなければ、「北海道新幹線は新函館までで終わりだよ」と言われたのと同じです。そう思って私は、国交省や財務省で思いを怒りを込めてぶちまけて、札幌延伸を訴えてきました。「いままで新幹線に投資してきたものが、札幌まで来なければ意味がなくなりますよ」と主張しています。
東北の復興をやりとげるためには、北海道の力を生かすことが必要です。新幹線で北海道と東北がひとつになれば、大きな力になります。東北の新幹線のある市や町の首長さんに署名をお願いして、札幌延伸をやるべきだという意見書をまとめさせていただきました。これを12月1日に各関係機関、大臣にお渡しして、「決断の時だ」と迫ってきました。
――北海道、北陸、九州、未着工区間の3線同時着工が実現の方向に…
上田 なりそうですね。いいかげん決めていただかないと、みんな疲れ切っちゃいますよ。
――札幌市の経済状況は東日本大震災の影響を受けていますか。
上田 基幹産業の観光が影響を受けていますが、回復してきています。震災直後から6月くらいまでは、誰の顔を見ても暗いし、これはどうなってしまうんだろうと心配しましたが、みなさん明るい顔に戻りましたね。
――札幌の産業の今後をどうすべきですか。
上田 北海道全体のことも考え、フード・コンプレックスを推進しようとしていますし、加えてコンテンツ特区の申請もしています。われわれは「創造都市さっぽろ」を提唱しており、企業の大部分を占める中小企業の業務を、ちょっとした工夫、創造性を加味することで広がるようにしようとしています。
また映像文化でも札幌の魅力を国内外にどんどん紹介していただけるよう協力していきたいと考えています。

=ききて/酒井雅広=