「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

札幌の魅力を磨き、道内経済を牽引する掲載号:2016年12月

photo

岩田圭剛 札幌商工会議所会頭

11月1日に札幌商工会議所の臨時議員総会が開かれ、新体制が発足した。新会頭に就いたのは、かねてから待望されていた岩田圭剛岩田地崎建設社長。ニューリーダーは人口減少や早期の新幹線札幌延伸などの課題にどう向き合っていくのか。

北海道はいま、転換期を迎えている

――5期13年務められた高向巖前会頭の後を受けての就任です。

岩田 高向前会頭は新幹線の札幌延伸などで先頭に立ち、素晴らしいリーダーシップを発揮されて大きな実績を残されました。この実績を基礎として愛する札幌、そして北海道の活力のために、また、会員企業のご期待に誠心誠意応えるべく、精いっぱい努力を重ねていきます。

高向前会頭に比べると、私の“排気量”は小さい。高向前会頭がダンプカーなら、私はセダンクラスでしょうか。6人の副会頭と会員企業、職員のみなさんに支えていただき、小回りのきいた活動を展開していきたい。

――会頭職に加え、札幌と北海道の建設業協会の会長も務められています。もちろん岩田地崎建設の社長業もあります。忙しくなりますね。

岩田 みなさんには「私は建設業出身ですから、仕事をどんどん“下請け”に出します」と申し上げました。そうしたら逆に「“下請けイジメ”はしないでください」と返されてしまいましたよ(笑)

――岩田新体制では副会頭のうち4人が留任し、新任は2人となりました。

岩田 今回、4人の副会頭(星野恭亮氏、似鳥昭雄氏、大槻博氏、勝木紀昭氏)に留任していただき、心強い限りです。これまで私も副会頭の1人として一緒に仕事をしてきた方々ですから、頼りにしています。

さらに新しく副会頭に就いた紫藤正行さんと柴田龍さんは能力、識見ともに抜群の2人。紫藤さんはお父さんも副会頭を務められ、ご本人も9期目で商工会議所の活動を隅々まで知っています。総務委員長、政策委員長といった要職も歴任されました。

柴田さんはご存じのように北洋銀行の副頭取を務められ、金融・経済のプロフェッショナルです。企業支援の面で大いに力を発揮していただけるでしょう。新たにエンジン2基を追加搭載したと思っています。

――現在の北海道経済をどう見ていますか。

岩田 足元の景気はインバウンドの増加もあって、緩やかに回復しています。

しかし、中長期的に眺めると、北海道は急速に進む人口減少とそれに伴う労働力のダウン、そして市場の縮小を控えていることは、残念ながら間違いない。将来を見据えた方策を今から講じていく必要があり、まさに転換期を迎えているという認識です。

こうした中、札幌がリーダーシップを発揮し、北海道全体の活力を導くことが、重要であると感じています。そこで36期の3年間のスローガンとして「パワーアップ!札幌~札幌の元気で北海道経済を牽引する~」を掲げました。

4つの視点から事業を展開していきます。

1つ目は「地域活力向上に向けて挑む」としました。成長分野、強みを持つ食や観光だけでなく、ものづくり分野の強化に取り組んでいきます。生産性の向上も重点項目としてあげました。

――生産性向上特別委員会を新設したそうですが、狙いは。

岩田 人口減少が続く中で経済成長を維持するには、生産性の向上が不可欠です。政府の「日本再興戦略2016」の中でIoT、人口知能、ビッグデータといった新たな技術が第4次産業革命とうたわれていますが、こうした技術を中小・小規模事業者が導入する際、商工会議所として支援をできればと考えています。

私のかかわる建設業でも、ICT技術を活用したアイ・コンストラクションという新たな流れが起きています。

――それはどういったものですか。

岩田 今のところ主に土木分野で活用されています。たとえば斜面を削る工事をするとしましょう。ドローンを飛ばして精密な3次元測量をおこない、そのデータを機械にインプットします。すると作業員があれこれしなくても、自動的に作業を進めることができるんです。しかも何㌢、何㍉単位で正確に。

当社でも積極的に取り組んでいます。いま札幌市中央区北1西1の工事を担当していますが、この場所には地下に埋設物があります。そこで埋設物の位置や形状を3次元測量でデータ化することで、より安全にかつ効率的に作業を進めることが可能でした。

当社では来年早々にも、専門チームを立ち上げる予定です。

こうした新たな技術やツールは、それこそ第4次産業革命を引き起こすと言われるくらいですから、今後、いろんな業種で取り入れられていくでしょう。

――36期の基本方針における残り3つのテーマについて教えてください。 

岩田 2つ目は「地域を築く・盛り上げる」です。高向前会頭が心血を注ぎ、新幹線の札幌延伸を引き寄せましたが、これを1日も早く実現させたい。

そして冬季オリンピック・パラリンピックの札幌招致。札幌は大変、人気のあるまちになりましたが、もっと国内外のヒト、モノ、カネを引きつけるため、さらに魅力を磨いていくことが大切だと思います。新幹線の札幌延伸と冬季オリンピック・パラリンピックの実現は起爆剤になるはずです。民間の最大規模の経済団体として、しっかり役割を果たしていきたい。

3つ目の「挑戦する企業を支え、成長に導く」と4つ目の「企業を結ぶ」は、商工会議所の本分でもあります。商工会議所の最大の使命は、地域経済を支える中小企業の努力を支援し、その振興を通じて社会の発展に寄与すること。伴走型のきめこまやかな経営支援をおこなっていきます。

とりわけ人材不足が各業種に広がる中、中小・小規模事業者の人材確保は喫緊の課題だと理解しています。

また、一時は減少傾向にあった会員数ですが、おかげさまで歯止めがかかり、現在は1万9220社。さまざまな業種の企業が集まる団体としてのメリットを生かし、会員間の交流はもちろんのこと、ビジネスチャンスの創出や拡大につなげていきたい。

アジア大会はオリンピックの試金石

――取り組むべき課題は多いですが、特に力を入れたいのは。

岩田 2つあります。1つは新幹線の札幌延伸です。これは経済波及効果の点で極めて重要です。開業時にその効果を全道に行き渡らすためには、2次交通の整備も欠かせません。駅前周辺の再整備が進むでしょうが、都心アクセス道路の整備も引き続き訴えていきます。加えて丘珠空港の機能強化も、いまから戦略的に進めていくべきではないかと考えています。

――丘珠空港の機能強化とは。

岩田 私たちは防災拠点としても必要だと主張しています。滑走路を延長し、もっと大型の飛行機が飛べるようになれば、多くの札幌市民にとって非常に便利になるでしょう。

それから2つ目は、冬季オリンピック・パラリンピックの招致です。実現すれば、まちづくりの点でも大きな効果をもたらします。今の札幌市は44年前の冬季オリンピックを契機に発展を遂げました。2度目のオリンピックは、再び生まれ変わるチャンスになる。期成会と連携を密にしながら、要請活動、市民の機運の醸成に向けた取り組みを活発化していきます。

来年2月に札幌で予定されている冬季アジア大会は、試金石になるかもしれません。多くのIOCの役員がお見えになると聞いています。集客やおもてなしも含め、協力は惜しみません。ぜひ成功させたい。

また来年3月、障害者のノルディックスキーとバイアスロンのワールドカップも開催されます。こちらも協力をしていきたい。

空港民営化は道内アクセス向上にも

――新千歳を含めた道内7空港について、いわゆる民営化の議論が進んでいます。新幹線の札幌延伸と同様に、道内経済にとって大きなインパクトになり得ると思っていますが、どのようにとらえていますか。

岩田 私も札幌にとってチャンスになると考えています。ただ、インバウンドを増やすという切り口で注目されていますが、道内アクセスを高めるという視点も重要でしょう。

――道内企業の中には、空港民営化の受け皿会社への参画を模索する動きもあります。

岩田 ある程度、道内勢が関与できる形になればと道内経済界はみんな思っています。

――就任会見では記者の質問に答える形で、人材流出への危機感を示していました。

岩田 ご存じのように北海道では道外への人材流出がずっと進んでいます。とりわけ札幌は、東京への人材流出が全国ワーストワンなんです。これをなんとかしないといけない。

Uターン、Iターンなどいろんな人材還流パターンがありますが、流出の防止と受け入れの促進、この両面からの取り組みが必要でしょう。大都市の幹部人材を地方の企業に紹介する「日本人材機構」と連携協定を結びましたが、本州の大企業で働く人で北海道に戻りたい、働きたいという人は少なくありません。

また、市内の学生に札幌の企業の魅力を知ってもらうため、インターンシップも有効な手段だと思っています。

――人材については、政府が打ち出した一億総活躍社会が、シニア雇用の促進を後押ししています。

岩田 多くの知識や経験、人脈をお持ちの方が、まだ埋もれていると思います。そういう高齢者が再び働くようになればいいですよね。いまのシニアはみんな元気ですから。

――最後に第3次補正予算については。

岩田 これはいろいろな政治の動きにもよりますが、景気の腰を折らないためにも必要だと考えています。

道内建設業界では秋までに仕事がなくなってしまう、“秋枯れ”の懸念がありましたが、第2次補正が実行され、ひと息をつきました。春先からすぐ仕事にかかれるように公共工事の前倒し、いわゆるゼロ国債も含め、3次補正が実施されるように今後、要請活動をしていきます。

=ききて/野口晋一=