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Interview

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"日本は1つ"の旗のもと国民運動を展開
100年に1度の危機に対応できる政治体制を
掲載号:2009年2月

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渡辺善美 元行革担当大臣

 昨年の12月24日、渡辺喜美元行革担当大臣は民主党が提出した衆院解散を求める決議案に自民党でたった1人賛成した。渡辺氏のこの行動は来るべき政界再編に一石を投じたものとなるだろう。この“造反劇”の2時間後、本人を直撃した。

平成復興銀行で産業再生を図れ

--------麻生政権下で行革は進んでいますか?
渡辺  行革は後退しています。3年後に消費税を上げることは明記されましたが、当然2つの前提があるべきです。1つは景気が回復すること。もう1つは行革を徹 底して行うことです。しかし、残念ながら行革は、例えば私が手がけた独立行政法人改革も後退しています。雇用能力開発機構という、雇用保険料の無駄遣いで 有名になった独法は福田内閣のときに廃止を決めたのですが、今度は別の独法と統合することによって事実上温存することが決まりました。これが麻生内閣の行 革に対する姿勢を典型的に表していると思います。
私が手がけた公務員制度改革も、天下り規制は骨抜きになっています。各省ごとの斡旋はこれから3年間、外部監視委員会の承認によって過渡的・例外的にで きる仕組みだったのですが、外部監視機関は国会の同意を得られずにつくられなくなってしまいました。ということは、「各省斡旋ができなくなる」と考えるべ きなのですが、なんと麻生内閣では総理のお墨付きで「各省斡旋を残す」と政令で決めてしまいました。それだけではなく、“渡り斡旋”を合法化する政令をつ くってしまった。渡り斡旋は今まで密かにやっていたわけですが、これは法的に考えれば、民間人になった人に次の職場の斡旋をするという便宜供与です。まさ しく違法な行為です。このように霞が関の権限を非常事態に乗じて、どんどん膨らませようというとんでもないことが行われていると言わざるを得ません。
--------景気対策も腰が据わっていない。
渡辺  100年に1度の非常時対応としては、不十分と言わざるを得ません。これから起きるのは本物の大不況であり、本物のデフレです。ところが、今出てきてい る政策を見ると、平時モードの各省の企画立案と各省の権限を膨らませた“ホチキス政策”が非常に多い。これでは100年に1度の本物の大不況にとても太刀 打ちできません。デフレのときには、それ用の非常時対応策が必要になります。
日銀はアリバイ工作しかやっていません。こういうときには政府紙幣を発行すべきです。2万円札とか、5万円札とか、10万円札とかですね。政府がそれを使って非常事態対応をやっていくことが求められます。
これから大量の倒産、失業が起きます。なぜならばデフレ下では借金が自動的に膨れあがる性質があるからです。この過剰債務、不良債権が悪さをする結果生 じる大量倒産を、まず回避する仕掛けをつくる必要があります。「倒産隔離政策」です。これは私が今から10年前に「平成復興銀行構想」を提案しました。こ れは産業再生機構とか、中小企業支援協議会とか、RCCの再生機能とかになって一部実現していますが、今後は各都道府県ごとに産業再生委員会と平成復興銀 行をつくって倒産隔離を施しながら、産業再生を行うスキームが必要になります。
また、こういうときには株価がデフレスパイラル懸念でオーバーシュートする可能性があります。おそらく来年、平均株価5000円というのは現実のものになる可能性があるでしょう。
あるいは下手をすればそれを割っていく可能性がないとはいえません。そういうときには日本の経済の防衛のために、「塩漬け金庫株ファンド」というのを政 府がつくって、日本銀行からおカネを出させる、あるいは政府紙幣を使うという形で、何年間か金庫株にしておく必要があります。平成復興銀行もそうですが、 産業再編につながっていくわけでありますから、出口においては自己株買い取り償却のみならず、競争入札で産業再編が行われるということになるわけです。
こういうときに求められるのは国家戦略であって、これがあるのとないのとでは、まるでこれから先の日本のポジションは違ってしまう。危機の段階には1か ら4まであります。第1段階は個別金融機関の危機。この場合には資本注入とか、破綻処理で対応します。第2段階は一国の金融システムの危機。これには強制 資本注入、そして産業サイドの過剰債務のカットで対応します。先ほど申しました産業再生機構みたいなものですね。これを通り越しますと第3段階に入り、基 軸通貨の調整に立ち至ります。当然、新しい通貨体制の模索が始まり、基軸通貨国の経済再建という問題と表裏一体で次の秩序が打ち立てられる。その前に大混 乱が起きるわけです。
  第3段階で問題が解決できないと、第4段階に移行してしまいます。1930年代がそうだったのですが、大不況は第2次世界大戦というマルサス的人口調整の ような大量破壊をもたらすことになります。おカネの面でいけば1946年2月、われわれ日本人が経験したように、ある日突然、銀行口座が封鎖され、強制的 に預金が切り捨てられる。それによって民間債務と国家債務はワンセットで処理をされることになる。これが第4段階です。戦争のかわりにパンデミックのよう なものもマルサス的調整に入るかもしれません。
まさにこういう危機的な状況に日本だけではなく全世界がおかれているわけですから、ここで国家戦略の有る無しは、まさに日本国民が塗炭の苦しみを味わうのか、それともこの苦しみから真っ先に抜け出せるのかという分かれ道になる。

解散総選挙を行わないツケがきた

--------未曾有の大危機が迫る中、麻生内閣は官僚の横暴を許している。
渡辺  霞が関は総理が誰であってもかまわない。自分たちの権限と既得権益が温存できればそれでいい。あるいは拡大できれば、なお結構なことだと考えている。だ から政治家は使い捨て。これをわれわれは「官僚内閣制」と呼んでいるんです。「役人を上手に使いこなすのが大事」などと言っていると、官僚内閣制のドツボ にはまる。官僚は「われわれを使いこなしてください」とよく言うのですが、官僚を使いこなしているように見せながら、実は官僚が政治家を使いこなしてい る。彼らはノウハウを山のように蓄積しています。まさしくこういう緊張関係のないズブズブの関係こそが、麻生内閣の求心力を失わせるきっかけになったと思 います。
解散総選挙をやっていれば、こんなことにはならずに済んだ。解散総選挙をやるためにはマニフェストが必要になります。マニフェストを国民に提示し、国民 にこれが認められれば、これで自民党内や各省をピン留めすることができる。ところが、今やっていることはそういう求心力のある話じゃなくて、遠心力が働い てしまうようなことばっかり。これはひとえに解散総選挙をやっていないツケが来ているんだと思います。
--------すぐ総選挙をやるため総理になったのに、やろうとしない。その間に支持率はどんどん低下している。
渡辺  とっても不幸なことだと思いますね。国会の状況は衆参の多数派がねじれている。ねじれ胡麻餅を こねているような状態ですから、これが延々と続くことになると思う。するとさらに国民の閉塞感は高まっていきますね。国会のつまらない陣取り合戦の中で人 心はさらに倦(う)んでいくことが予想されます。したがって、こういう状況下では社会全体が劣化現象を起こしていく。嫌な犯罪、異常な事件が起きたり、世 の中が急激に右傾化していったり…。歴史の失敗の教訓に学べば、いかにこの閉塞感を打破するのか、政治の復権をはかるのかということが、肝心要だと思う。
--------政治家は今、何をなすべきだと思いますか?
渡辺  100年に1度の政治体制をつくることを心がけるべきだと思います。こういうときは政党の垣根を越え、まさに日本は1つだという旗のもとに結集するべきだと思います。
「国会議員というのは本来、全国民の代表。特定の誰それの代理人ではない」というのが、近代議会制の原点です。ところが今、政党間の党利党略によって、国 民不在の泥仕合が行われています。誰かが国家国民のためというアジェンダを掲げて、この閉塞状況を打破する必要があると思います。

志を共にする人たちと行動する

watanabe_4--------旗を立てる側に回るということですよね。
渡辺今日、国会で(民主党から)解散決議案が出てきましたので、私は自民党内で唯一賛成に回りました。これはまさしく私が党派を超えて、国会議員の原点に立ち戻って、今申し上げたようなことを行動で示したということです。
これから私のやるべきことは、自民党とか、永田町とかという垣根を越えた国民運動を巻き起こすことです。私と危機認識や志を共有する人たちは、全国にい らっしゃると思うんです。首長さんたちや地方議員、あるいは財界人、産業界の人たち、消費者の皆さん、いろんなレベルで、私は国民運動を起こしていきたい と思っています。
--------新党も考えている?
渡辺いろんな選択肢があります。いきなり新党を目指してということではありませんが、有力な選択肢の1つではあると思います。
--------政界再編の中心となって活躍する決意と受け止めてもいいですね。
渡辺政界再編は必至です。必ず起きます。問題は、選挙前にそういう選択肢を提示ができるかどうか。 アジェンダを設定できるかどうか。何をなすべきかと、どういう旗のもとに結集するのがこの国のためにいいのかということだと思います。私はまさにそういう ことも想定しながら行動しているつもりです。
--------解散はいつですか?
渡辺  渡辺 日本のために早ければ、早い方がいい。1カ月あれば、危機管理内閣はできます。ねじれ国会を続けて、ああでもないこうでもないとやっていると、取り返しのつかない事態になると思います。
--------お父さんの渡辺美智雄さんがかつて自民党を飛び出そうとしたときのことを思い出しました。
渡辺あのときは経済は第1回目の金融危機が終わって、2度目の金融危機にはまだ入っていない状態で した。しかし、先の見える私の親父は非常に危機認識を持っていまして、このままではだめだという思いが強かった。今はもう危機のど真ん中に巻き込まれ ちゃっているわけですから、なおさらこれはスピード感を持って、強固な政治体制をつくらないといけない。  これから到来するのは本物の大不況、本物のデフレですから、政治家は“先憂後楽”でなければいけないということです。

=ききて/酒井雅広=