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Interview

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文化芸術振興で未来への遺産を創造する掲載号:2014年1月

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上田文雄 札幌市長

 上田文雄札幌市長は生真面目で一本気なところがある。公契約条例や原発問題に対する姿勢を見ると、それが良くわかる。また、上田市政を貫くキーワードは市民目線。このインタビューでも、この上田カラーが色濃くにじみ出ている。

ワーキングプアをなくしたい

――公契約条例が10月31日、市議会で廃案になりましたが、上田市長は前日、ビールケースの上に立ち、街頭演説で必要性を訴えるなど、最後まで成立に執念を燃やしました。同条例に対する思いを聞かせてください。
上田 最初の選挙のときから、公契約条例制定を主張していました。2期目の公約には挙げていませんが、要綱などで公契約労働従事者の賃金適正化を図れないか検討しました。その結果、やはり条例化したほうが良いとの結論で3期目に仕上げをしようとしたわけです。
委員会で否決され、本会議にかける前に、私はもう少し市民のみなさんに、この問題性を考えてほしいなと考え、街頭でお話をさせていただきました。経営者にとってむちゃくちゃ不利益なことを言っていると、誤解されてはいけないと思ったからです。
本来、札幌市から受注した仕事をして赤字には絶対になりません。札幌市は国基準の賃金と企業の管理費をきちんと積算して支払っています。事業者が、受け取った賃金相当分を労働者に支払ってくれればよいのです。儲けは必ず出るのです。ところが「法が定める最低賃金さえ支払えば問題はない」として、ほとんど最低賃金に張り付いた賃金しか支払わない。目一杯、何年働いても最低賃金。生活保護費にも満たない。あんまりじゃないですか。
――公契約条例は市発注事業を受注した業者に、一定以上の賃金を支払うよう義務づけ、官製ワーキングプアをなくそうというのが趣旨。しかも、賃金に見合った金額で発注するというものです。だが、主にビルメンテナンス業界が、市の仕事をした従業員だけ賃金が高くなり、民間の仕事をした従業員との格差が生じ、不公平になると反対しました。
上田 民間からの受注額が低くて苦しいとおっしゃるのなら、なぜ、そのことを改善しようとしないのでしょうか。市がいくら労賃分を上乗せしても、受注側が経営資源に回すというのでは、意味がありません。しかも、「どのくらい経営が苦しいのですか」とお尋ねしても、「それは個々の会社の問題だから、わからない」とおっしゃる。「経営の懐に手を突っ込むのはいかがなものか」と、昔の純粋資本主義のような議論もありました。しかし、官製ワーキングプアをなくするために行政がなすべき施策を否定するという論拠には、ならないと思います。
入札するときに業者側もいろいろと積算するわけですよ、「それをどうして守ってくれないのですか」と聞くと、「あれは方便だ」と言われました。
――そんなバカな。
i2上田 「どこにカネをつかうか、賃金をどの程度に抑えるかは、経営の裁量の問題だ」と言いたい経営者の気持ちは、わかります。社会的に是認される賃金レベルの企業の経営者なら、そう言うのは当然でしょう。しかし、これだけワーキングプアが問題化している中で、ビルメン業界の多くの企業は最賃にベッタリ張り付いた賃金しか払っていないことが、実態調査でわかっています。最低受注価格を10ポイント上げても、その実態は変わらないのです。業界の方は、これからも「賃金を上げない」と言う方が多数でした。
――安倍晋三首相も、アベノミクスの景気対策として、企業に賃金を上げろと要請しています。
上田 これからも、官製ワーキングプア問題解決のため理解してもらうよう努めなければなりません。ビルメンの業界の方も「悪質な業者は排除してくれ」とおっしゃるわけですから、労働環境の適切性の問題、賃金の妥当性の問題についても、今後、個々の契約の中で十分議論させていただきたいと思います。

自然エネルギーの有効利用を目指す

――原発に対してはどうお考えですか。かつて弁護士時代、ハンストまでして泊原発3号機の建設に反対しましたが…
上田 小泉純一郎元首相が8月以来、主張を大転換し「原発ゼロ」をおっしゃっています。記者会見で「小泉発言をどう思いますか」と聞かれ、「私は30年前から、そう言ってます」と答えました。とくに高レベル放射線物質の最終処分地は、日本国内では絶対に見つからないと思います。そういう状況の中で、原発をどんどん増やしていく選択肢はないはずです。3・11以来、2年ほぼ原発なしでやってきたいまやめないで、いつやめるのですか。
いまは多少エネルギーのコストがかかっているかもしれないが、原発の安全性にかける費用をもってすれば、自然エネルギーを有効に活用できます。いまこそ最大のチャンスだ。世界に冠たる自然エネルギー大国になれると小泉さんは言っています。私も安倍首相に「あなたが決めればできる」と言いたいですね。環境省の調査では、北海道の再生可能エネルギーの潜在量は原発556基相当分だとしています。津軽海峡の海底送電線の容量を数百万
そのためにはもちろん研究開発をしなければなりませんし、もちろん研究開発のお金もかかりますが、原発をつくり、安全管理をし、使用済燃料の再処理をし、高レベル放射性廃棄物を50年間安全に貯蔵し、数万年間にわたって安全な管理処分をするために必要とする天文学的費用と比べれば安いものだと私は思うのです。
札幌市は、低炭素社会と脱原発社会の実現を目指した持続可能なまちづくりを進め、世界に誇れる先進的な環境都市を実現することを戦略ビジョンとして掲げています。2014年春には、今後10年間のエネルギー施策を示す「エネルギー基本計画」を策定する予定です。この基本計画では、2030年までに、原発に依存してきた電力相当分を省エネと、太陽発電などの再生可能エネルギーやコージェネ・燃料電池などの分散型電源の導入でまかなうことを目指しています。現実論者の方にも納得していただけるような数値目標やロードマップを示したいと考えています。

冬季五輪誘致の可否を市民に問う

――札幌は冬季オリンピックを誘致すべきだという意見がありますが…
上田 1972年の冬季オリンピックは、札幌市にとって非常に大きな歴史的遺産です。これまでその遺産を活用し、世界に札幌の名を知らしめてきたところです。2017年に冬季アジア大会をおこないますが、多くのウインタースポーツ関係者は札幌に期待してくれています。この大会を完璧にやりとげて、札幌の優位性を世界にアピールしていきたいと考えています。
2014年度予算で冬季オリンピック誘致についての調査費をつけ、実現の可能性をさぐっていきたいと思います。運営収支、施設整備費、経済波及効果、費用対効果などをきちっと明示し、市民に問いかけていきます。
私は「オリンピックはやる価値がある」と考えています。1972年のオリンピックで札幌市と札幌市民は、IOCから「素晴らしい大会だった」と表彰されています。その自負を胸に、また次のオリンピックも立派にやりとげることができれば、また札幌にとって貴重な遺産となると思います。しかし、市民のみなさんが「そんなに経費がかかるのであれば、別のことに使ったほうがいい」と言うのであれば、そういう判断もあるのだろうと思います。

芸術祭を発想の転換を図る転機に

――ジェット化も含めた丘珠空港の活用については、どのようにお考えですか。
上田 民間空港として活用するために、グリーンベルトをつくるなど、札幌市はたくさんのおカネを投資して、さまざまな整備をしてきました。丘珠空港が立ち枯れしないようにすることは、われわれにとって大事なことです。
丘珠空港が抱えている問題は、プロペラ機であるか、ジェット機であるかにかかわらず、かつてのYS11に比べて騒音が大きいか、少ないかということです。
11月16日の実証飛行で、1500
今後も「空港整備にかかわる基本的な考え方」(1998年の地元合意)を守っていく中で、丘珠空港の利用促進や使われていない発着枠の有効活用に努めていきます。
――「札幌国際芸術祭2014」の意義と内容を教えてください。
上田 札幌市は2006年に「創造都市さっぽろ宣言」をおこないました。市民一人ひとりが「自分が生かされている」と認識し、生き生きと暮らし、生活、文化、産業などのさまざまな分野で創造的な活動を展開し、その魅力を世界に発信していく取り組みを進めています。「国際芸術祭」は、この「創造都市さっぽろ」の象徴的な事業として開催します。
芸術家、アーティストというのは、われわれ普通の人間とは違う視点で、物事をみてくれる人たちです。いい意味でのストレンジャーなのです。先日、ゲストディレクターに就任していただいた坂本龍一さんと話をしましたが、「自分は札幌に来ると視線が上がる。『ここどこかな』と、看板も気になるし、山の位置も気になる。それがストレンジャーです。札幌の人は足下しか見ないでしょう。そういう目線でしか日常を送っていないでしょうから」と言っていました。
札幌市はメディアアーツの分野でユネスコの創造都市ネットワークへの加盟が認められましたが、国際芸術祭を機に、札幌の歴史文化・風土、都市機能、地域経済や産業、暮らし方をアートの視点で見つめ直すことで、都市と自然の共生のあり方を問い、市民自らが未来を展望する機会を創出したいと考えています。あらゆる分野において、発想の転換を促す転機としたいと考えています。
具体的には道立近代美術館や芸術の森美術館で「都市と自然」をテーマにした現代アート展、地下歩行空間などでメディアアート・プロジェクトを開催します。

=ききて/酒井雅広=