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Interview

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政治不信爆発 総選挙で一票一揆掲載号:2009年8月

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福岡 政行 白鴎大学教授

もう逃げも隠れもできない―衆院の任期満了まで残り2カ月を切った。この4年間、総理は代われど総選挙は行われない。国民は1票を投じる機会を"おあずけ"にされイライラ状態が続いている。政治学者の福岡政行白鴎大学法学部教授に、総選挙の行方を聞いた

有権者の反乱が起きた松阪市長選

――福岡さんは著書「政権選択」で、日本の政治は“貧困”“脳死状態”と指摘しています。
福岡 最近、いろいろな場所で講演を行った際、みなさんから聞かれることは、「日本の政治はどうなっ ているんだ」ということです。 日本の国がこのように悪くなった契機は、4年前の9月11日―わたしは日本の“ナイン・イレブン”と言っていますが、あの 日なのかなと考えています。つまり、小泉郵政民営化選挙です。大勝したことにより、自民党に“数のおごり”が生まれた。“数の論理”の名の下、弱者をいじ める小泉・竹中構造改革を推し進めました。全員とはいわないが、政治を甘く見てなめている“小泉チルドレン”も誕生しましたよね。
2年前には、“逆転の夏”といわれた参院選があった。今度は“小沢チルドレン”が一気に増えました。これも見てわかるように、わけのわからないタレント議員が当選した。参院選以降、民主党は、キムタクのドラマのように「チェンジ」「チェンジ」の一念でした。
国民に目を向けて、まじめに一生懸命汗をかくという意識が、自民党にも民主党にも欠けているのです。そういう意味で、貧困、脳死状態と表現しました。
――自民、民主とも、人材不足ということですか。
福岡 平沼赳夫(元経産大臣)さんはよく、「福岡君、自民党は賞味期限が切れたね」という言い方をし ます。生活の厳しさがわからない世襲議員だけでなく、老練の政治家たちまで含めてです。いい意味でも、悪い意味でも、自民党内に田中角栄型のいわゆる“ド ブ板”議員が少なくなりました。
いまや民主党の方が、ドブ板議員は多いかもしれない。小沢一郎代表代行が、旧自民党型の政治を持ち込み、若手議員にたたき込んでいるわけですから。
i2 ――北海道を含め地方の経済・雇用状況は、大変厳しいものがあります。
福岡 京都に講演に行ったとき、ある大学教授が「歴史はひとえに経済史である」と前置きした上で、「経済史はまさに政治史なんだ」と話していました。
日本経済、特に地方や中小企業の疲弊具合いは、本当に深刻です。政治の貧困、脳死状態が、大きな原因といっても過言ではない。
既成政党に対する不満が爆発したのは、今年6月末の横須賀市長選でした。現職候補は自民、公明、民主の推薦をもらって2期目。加えて霞が関のOBで、ま だ60歳。横須賀は小泉純一郎元総理のおひざ元で、小泉さんの息子の進次郎氏も街頭で初めてマイクを握った。現職は基本的になんの落ち度もない候補だった のです。
それが、2回連続市会議員選挙で得票トップだった33歳の若者に負けた。普通ならあり得ない話です。自民党、民主党でもない。とにかく変わらなければい けないという意思の表れだった。苦労も知らない世襲議員が偉そうにしゃべっている姿を見て、みんなお灸をすえてあげたいと思って反発したんです。
実は意外と知られていませんが、横須賀の結果を予期する選挙がありました。今年1月の松阪市長選です。三重県議を1期2年務めていた33歳の新人候補が、自民、公明、民主の推薦を受け3期目を目指した現職と、一騎打ちで戦った。
選挙終盤、渡辺喜美(元行革担当大臣)さんが新人の応援演説を松阪駅前で3時間やりました。その影響もあり逆転勝利したんです。選挙後、渡辺さんが「日本の国は変わるかもしれない」と話していたことを、鮮明に覚えています。

“ワース”を選択するしかない

――目前に迫っている総選挙でも、この両市長選の流れは続きますか。
福岡 地方の中小企業経営者や商工会議所、商工会などの経済団体関係者は、「毎日の生活が苦しくて、生きるのに精いっぱいだ」と口々に言います。この1年、特に昨年秋のリーマンショック以降、「早く一票を投じさせてくれ」と言う声が圧倒的に多い。
ビートたけしさんがテレビ番組で「犬じゃないけど、何度も“おあずけ”させられたら、いいかげんかみつくよ」と話すように、国民は待ちくたびれています。
いまは自民、民主ともスキャンダル・暴露合戦です。以前なら有権者の政治離れが進んだが、いまは「早く投票させてくれ」という雰囲気になっている。「このままじゃ日本の国はだめになる」という強い思いがあるのでしょう。
21年前に流行語大賞になった“一票一揆”という言葉があります。1989年の参院選で、土井たか子(元社会党委員長)のマドンナブームが起き、自民党が大敗して、社会党が第一党に躍り出た。
当時、わたしは、「リクルート事件、消費税導入、農政批判、という3点セットで一票一揆が起きた」と、出演したテレビ番組でコメントしました。有権者が反乱したという意味で、その言葉を使いました。
――次期総選挙でも一票一揆が起きると。
福岡 そうですね。おそらくいまの雰囲気は、あの21年前、平成元年の参院選と同じです。ただ、今回の一揆の原因は、いわゆる格差問題だったり、自民党の体たらくです。ただ、民主党にだって、小沢さんの西松建設の違法献金問題や鳩山由紀夫代表の虚偽記載問題があったりします。
新しい選択肢として、平沼さん、渡辺さん、鳩山邦夫前総務大臣の3人が組んで、第3のグループを立ちあげたら面白いが、おそらく可能性は少ない。次期総 選挙では、自民党や民主党、いくつかの政党の中から選ぶしかない。今後の日本の国をどうするのかという大切な選挙になるが、残念ながら未来を託したい候補 がなかなか見当たらない。よりマシな人を選ぶしかないんです。“ワースト”よりは“ワース”を選べと言わざるを得ない。
現状を分析すると、次期総選挙で民主党は、単独過半数を超える260議席近く獲得して、自民党は150議席に届かないでしょう。民主党政権が誕生する可能性は極めて高い。
自民党が小選挙区で1人も勝てないという“空白県”が生まれることも考えられます。北からあげると、北海道、岩手、新潟、長野などが、その候補にあがり ます。へたをすれば都市部でも、1人ないし2人しか当選しない“準空白県”が出てくるかもしれない。ただ、民主党がいいのではなく、とにかく自民党があま りにひどいので、ダメもとで民主党ということなんです。

どす黒い孤独を感じる麻生太郎

――道内の小選挙区をどのように分析していますか。
福岡 11区の中川昭一(前財政・金融大臣)さんは間違いなく強かった。彼が負けるケースは、西から 太陽が昇るくらいの可能性しかないと思っていたが、酩酊(めいてい)会見以降、さすがにこれでいいのかという雰囲気が出てきた。民主党候補(石川知裕代議 士)とデットヒートを繰り広げています。5区の町村信孝(元官房長官)さんは、自民党の主たる地位を経験してきた党の重鎮です。なんといっても清和会は町 村派ですから。派閥のリーダーになったけれども、大変厳しい戦いを強いられている。
武部勤(元幹事長)さんの選挙区(12区)も、ある意味、落下傘でやってきた民主党候補(松木謙公代議士)に過去2回も追い詰められている。今回も大混戦で、むしろ厳しい戦いを余儀なくされている。
そうなると、北海道で絶対勝てる「◎」、「○」を打てる自民党候補が誰もいないんです。ドラスチックな鋭角的な変化が起きれば、この3人のような大物がバッジを失うことも十分にあり得ると分析しています。
――注目された7月初旬の麻生内閣の改造人事は、補充だけに終わりました。
福岡 ラグビーやサッカーでも、司令塔というか、ボールを出す人が試合をコントロールできなければ、どんなに強くてもゲームにならない。いまの自民党は、完全にコントロールタワーを失っています。
麻生総理の盟友の中川さんが酩酊会見で辞任した。JC(日本青年会議所)時代から30年来付き合ってきた鴻池祥肇(前官房副長官)さんも女性問題でいなくなった。「太郎会」の会長だった鳩山邦夫(前総務大臣)さんに至っては、麻生総理自らクビを切った。
麻生総理の言葉の中に「どす黒いほどの孤独」というものがある。とてつもなく孤独なんだという意味です。元気が良く、あんな明るくて生意気そうな人が、生気を失った顔になってしまった。
そんな時、菅義偉(選対副委員長)さんというしたたかな男が出てきました。今回の党役員人事で、幹事長をやらせるくらいの話にまで発展した。菅さん以外 に安倍晋三元総理が、麻生さんのアドバイザーになった。この2人の話を聞いて、4年前の小泉選挙のように、人気者を立て続けに1人、2人入閣させればメ ディアジャックできると考えた。
だけど、自民党はそんなバカばかりじゃない。東国原英夫宮崎県知事を入閣させないということで最後に動いたのが、森喜朗(元総理)さんですよね。当初、 麻生総理は、舛添要一厚生労働大臣を幹事長か政調会長、東国原知事を東京比例1位で総務大臣に据えるくらいのことを考えていた。
麻生総理の手帳には大安の日だけ大きく“丸”がつけられているそうです。党役員人事・内閣改造後、自らの手で解散して、大安の8月2日、8日、30日の どこかで選挙をやる構想だったのでしょう。4年前の“小泉劇場”の再現を“麻生劇場”でやろうとした浅はかな動きでしたね。もう柳の下にドジョウが2匹、 3匹はいないんです。さすがに自民党の長老たちは気づいて、党役員人事・内閣改造をやめさせたわけです。

ハローワーク知事の東国原英夫

――自民党は東国原知事に出馬を要請しました。
福岡 わたしは彼を“ハローワーク知事”と呼んでいるが、なんとくなく仕事がないから宮崎に行って、 「どげんかせんといかん!」と連呼しまくって当選した。 東国原知事はマンゴーと地鶏のセールスマンとしては成功したが、宮崎の実態は深刻ですよ。高速道 路ができるできないの問題じゃない。「もう知事では何もできない」と高慢な言い方をしますが、そんなのウソです。やりようによって何とでもなります。
1期4年を全うすることなく、宮崎では何もできないというのは、県民に対して失礼です。県議会議員は何人もいても、知事は1人しかいないんだから。自分がなんぼのものかということを自覚してもらいたい。
そんな人にもてあそばれ、振り回されている自民党も自民党です。極めて情けない。追い詰められていることは事実ですが、「ついにここまで来たか」という思いですね。
――仮に民主党が政権与党になった場合、財源問題など「本当に大丈夫なのか」という不安があります。
福岡 民主党は行政のムダを廃して、十数兆円というお金出すという言い方をする。確かに特別会計、一 般会計を見ると、ムダなところはいっぱいある。アニメの殿堂だって絶対いらないと思う。数兆円は出てくるかもしれないが、十何兆円は無理でしょう。にもか かわらず、平然と言ってのけるところに、あまりに大盤振る舞いのいいかげんさ、ずさんさを感じます。
民主党のマニフェストの概略を見ても、消費税の増税はしないなどきれい事が多すぎます。「それは政治の無責任だろう」と指摘したいですね。民主党にどれだけ期待ができるかといえば、いまの自民党が10%だとすれば、20、30%程度ですよ。

=ききて/前田 圭祐(取材日:7月3日)=