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Interview

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“攻めの農政”のフロントランナーは
北海道だ!
掲載号:2016年2月

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森山裕 農林水産大臣

2015年10月にTPP交渉が大筋合意に至り、道内の第1次産業は大きな岐路に立たされている。安倍内閣は「農政新時代」として、“攻めの農業”を掲げる。森山農林水産大臣(衆・鹿児島5区)を直撃した。(取材日=12月17日)

日本農業を元気にする1丁目1番地

――森山大臣の本道農業への印象を教えてください。

森山 北海道はご承知の通り、2013年の農業生産額が1兆705億円で、都道府県の中でズバ抜けて第1位です。日本の重要な食料基地であることは、言うまでもありません。

北海道のコメが本当においしくなって、全国で評価されるようになりました。麦にしても麺類に適した品種、あるいはパンに適した品種もあります。雑豆も強いですよね。

いずれの分野についても、日本の農業の中で、最先端で取り組んでいただいていると認識しています。

――大臣就任直後の11月中下旬、道内を訪れました。

森山 11月20日から22日まで、北海道を視察させていただきました。農水産業の現場視察と関係者との意見交換を通じて、農協や漁協が産地と連携して、生産物の付加価値をつけて販売、あるいは輸出をする。その上で、生産者の所得増加を目指すために、よく頑張っておられます。

帯広を訪れた際、「十勝加藤牧場」を訪ねました。ここでは、非常にいい話を聞かせていただきました。

酪農はいい土づくりから始まり、そこで良質な牧草を育て、品質の高い生乳をつくることができると。なるほどと思いましたね。

差別化を図りながら、環境型の農業をどう構築していくのか。そこに対して真剣に取り組んでおられました。全国のモデルになるような先進的な取り組みで、やはり北海道の農業、水産業が発展することが、日本の農業、水産業の明るい将来につながっていくんだという思いを強くしました。

このことから、私は関係者との懇談で、「北海道の農業、水産業の元気が、日本農業、水産業を元気にする1丁目1番地」と申し上げたところです。農林水産省としても、北海道の農林水産業が飛躍して元気になるように、積極的な後押しをさせていただきます。

――2015年10月に、TPP交渉の大筋合意がなされました。重要5品目(コメ、麦、牛・豚肉、牛乳・乳製品、甘味資源作物)は“聖域”として、13年4月に国会で決議しました。しかし、結果的に関税削減などがおこなわれることになりました。森山大臣はどう受け止めていますか。

森山 私は党の責任者としてTPP閣僚会議に同行しました。国会の決議を後ろ盾にして、強い交渉がおこなわれたのではないかと思っています。

その結果、重要5品目を中心に、国家貿易制度や枠外税率の維持、セーフガードの創設、長期の関税削減期間などを確保できました。

一方で保秘義務のかかった交渉でしたから、現場になお不安の声があることは、私も承知しております。

意欲のある農林漁業者が、確実に再生産でき、さらに将来に希望を持って経営に取り組めるようにしなければなりません。そのため、11月25日に総合的なTPP関連政策大綱をまとめました。

現場の声に寄り添って、政府全体で責任を持ち、万全の国内対策を講じていきます。国会決議にかなっているかどうかは国会で判断いただくことではありますが、政府としては国会決議の趣旨に沿っていると評価をしていただけると思っています。

重要5品目は責任を持って支援する

――重要5品目への経営安定対策を教えてください。

森山 コメはアメリカとオーストラリアに対して、SBS方式の国別枠が設定されます。それは大凶作等によりコメが不足する有事の場合を想定して5年間で毎年原則20万㌧、計100万㌧程度を備蓄するスキームです。その中で、国別枠の輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れ、確実に再生産が可能となるようにしています。

ただ、有事といえども、5年も経過した古米を国民のみなさんに提供していいかとなれば、それは違うように思います。消費者により鮮度の高い備蓄米を提供する観点も踏まえ、その期間を短縮するように見直し、これにより備蓄米の買入数量を拡大します。

麦については、北海道で大規模につくられており、輪作の作物として重要な品目です。国家貿易制度や枠外関税率を維持することで、国産麦では質、量的に満たせない需要分を計画的におぎなえる仕組みを確保できました。

ただ、マークアップ(売買差益)の部分が少しずつ引き下げられます。これまで、それを財源として、麦の経営所得安定対策をおこなってきた面もありました。足りなくなる部分は、政府が責任を持って予算措置を講じていき、引き続き、経営所得安定対策を着実におこなっていきます。

――牛・豚肉等は。

森山 牛・豚の経営安定対策であるマルキン事業を、現在の予算措置ではなく、法律で担保し、赤字分の補填率を8割から9割に引き上げるとともに、豚マルキン事業の国庫負担水準を牛並みに引き上げます(国3:生産者1)。また、肉用子牛の保証基準価格が経営の実情に即していないので、これを見直します。

乳製品は、加工原料乳生産者補給金制度の対象に、生クリーム等の液状乳製品を追加するとともに、補給金単価を一本化します。いろいろな調査が必要ですが、17年度から実施できるようにしたい。これは北海道の酪農にとって、ひとつの前進になるでしょう。

最後に甘味資源作物の原料であるてん菜、またはでんぷん用原料のバレイショは、基幹作物です。

TPP交渉の大筋合意では、国内産の生産支援をおこなう糖価調整制度を維持することができました。しかし、安価な加糖調製品に関税割当枠が設定されたため、輸入が増えるのではという心配があります。

このため、TPP関連政策大綱では糖価調整法の対象になっていない加糖調製品を、新たに糖価調整法に基づく調整金の対象にすることにしました。引き続き、経営安定対策を適切に実施することにより、再生産可能となると考えています。

ホルスタインの肉に大きなチャンス

――安倍総理は自民党結党60年の記念式典で、「攻めの農業を目指す」と話していました。

森山 いま政府は、我が国の農林水産業、農山漁村の潜在能力を最大限に引き出す方策として、攻めの農林水産業を掲げています。強くて豊かな農林水産業と、美しく活力ある農山漁村の実現に向けて、さまざまな改革を推進しています。

現在でもナガイモやホタテなどの輸出を頑張っておられますが、まだまだ伸びしろが十分にあると思っています。
私はTPP交渉でシンガポールなど、いろいろな国を訪問しましたが、やはり「北海道」というブランド力はすごいですよ。北海道とついていれば「安全・安心でいいモノ」というイメージがあります。

それと北海道という土地へのイメージがいい。ワインなど6次産業化ファンドを活用したバリューチェーンを構築していきながら、北海道ブランドの強みをいかんなく発揮してほしいですね。

私はいま、北海道の乳用種・ホルスタインの肉に注目しています。ホルの肉に悲観的な人も多いのですが、そうではないと思っています。日本の肉は生産履歴がはっきりわかります。私は以前、品質向上のための予算編成に携わったことがあります。あのとき、ドリップがでないホルの肉にしなければならないと考え、現場でも努力していただいたことで、市場の評価がよくなりました。

今後、ホルの熟成肉を市場に広めていきたいとの考えもあるようですから、新しい技術にも挑戦していけば、ホルの肉がアメリカ、オーストラリアと競合することにならず、差別化を図れるのではないでしょうか。ホルの肉は大きな可能性を秘め、おもしろいですよ。

――生産現場の強化策については。

森山 北海道は農業分野以外からも、新規参入者が増加の傾向があります。農林水産省としても、就農のための政策をおこなっています。

たとえば、青年就農給付金は、準備型として150万円を2年間にわたり給付します。また、経営開始型として、年最大150万円を5年間給付させていただく制度等もあります。
北海道の新規就農者は、これらを活用しながら、年間600~700人ほどで推移しています。

北海道で農業をやろうと思っている人たちは、全国にたくさんいると思います。そういう制度でしっかり支えていきたい。

また、今回の補正予算では、農業、農村の整備予算を組ませていただきました。強い農業のためには生産現場のコストを下げることが、とても大切です。

最後に北海道のみなさんには、日本の農業や水産業をわれわれが引っ張っていくんだという気持ちで頑張っていただきたい。農業・漁業界にはすばらしいリーダーもいますし、若い人も頑張っておられる。私は北海道の農林水産業の将来は明るいと思っています。

=ききて/前田=